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推し恋2  作者: たま


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12/14

生霊

父が昼ご飯の間、店番に出る。

笠原は荷物が出た後は、もう勉強に集中してるみたいだ。部屋の空気も良くなった気がする。

色とりどりの江戸切子が並んでる様は綺麗だ。実家がこういう伝統品扱うのは嬉しい。

でも、それを自分が受け継ぐとなると自信も責任も持てない。

店には海外の客が数人いる。皆、写真を撮りまくってる。店的には自由にやってもらってる。

そこに淀んだ憂鬱な感じの女性が入ってきた。日本人だ。珍しい。

「いらっしゃいませ〜」と声掛けした琴子をヒタッと見つめてきた。

…何だかガラス玉みたいに感情のない目だ。恐い。

自分から目線逸らして無視してたが、下から異様な角度で琴子を覗き込んできた。

近づくと仄かにあのライダースジャケットの匂いがする!

直感的分かった!笠原にライダースあげた人だ!

とうとう生霊本人が現れたのだ!

「ねえ、ココでしょ?ココに居るんでしょ?私の可愛い仔犬。黒い子犬?」琴子も最初出会った時、笠原に黒い犬のイメージがあった。

そして実際に出来たキャラも黒髪に浅黒い肌の犬耳が生えて尻尾もあるキャラクターになった。

最強ツンデレで、戦士と女神の邪魔ばかりするが

根底には優しさが、強い人間愛を感じるキャラになってる。

「この建物が見えたのよ!やっと暗闇から彼の寝息のする外へ出れると思ったのに!

なんでタバコ臭い男の家の壁に掛けられてるのよ?」まばたきもしないでガラス玉みたいな目で琴子に迫ってくる。

「なんの話ですか?訳が分からない!客じゃないなら帰ってください!

ココは江戸切子を売ってる店です!」キッと琴子がにらむとヘラっと笑い出した。

「まあまあ、この娘も親の教育が行き届いてないのね。目上への口の聞き方を知らないなんて!

客商売も向いてないわよ、それじゃあ。」と上から目線をふかす。

「…だまれ!ババア!客じゃないなら帰れよ!

他のお客さんの邪魔なんだよ!シッシッ」と言ってレジ後のほうきで本当にはらう。

ここは江戸の下町なのだ。昔からガラも口も悪い…

その街で育った琴子は、日頃は東京人の面の皮をカブってるが、チャキチャキの江戸っ子なのだ。

「オイッ、どうした?」父が階段を駆け下りて店に顔を出す。

「頭のおかしいババアが入ってきたんだよ!

早く警察呼んで!」ほうきを構えたまま琴子が父に叫ぶ。

「よし!分かった!待ってろ!」と携帯で連絡する。

母は、「オイッ、店で何してくれんだよ!

高い服着てても、頭おかしきゃウチは追い出すよ!

出てけ!出てけ!」母も下町育ちなのだ。

外人客は、日本人がこんな風に怒鳴るのが珍しいのか撮影してる。

イタリア人らしかったみたいで野次を飛ばしだす。

「…なんなの?この店は?客を何だと思ってるの!」と言いながら少し正気に戻っている。

会社なら自分がここまで脅せば、皆背筋伸ばして命令通りに動く。

が、もう定年間際。警察の威光は喜美子の背中から消えているのだ。

いつも巡回してくれてる交番の警官が来てくれた。

喜美子は、「私は警察職員よ!この店が客への態度がなってないから注意してるのよ!」と叫んだが「はいはい、頭のおかしいおばあちゃんだね。妄想は良いから。交番来てね〜」と両脇を抱えて連れ出してくれた。

父に経緯を話す。

「そんな…本当にその餞別渡した団地のおばあちゃんなのか?」父は信じられないと言う顔をする。

「すみません…僕のせいです。」笠原くんも降りてきてつまみ出される喜美子を確認したようだ。

「夢でこの店を見たとか言ってたよ。ホントかな?」琴子が心配する。

「うん、母に聞いてみるよ。でも、言っちゃダメだと言ってたのは母の方だから。」と携帯で話しだした。

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