除霊
「任せて任せて、ウチは顔だけは広いのよ〜」荷物を片付けに旦那さんと休日来た姉が除霊のできる祈祷師も連れてきた。
「もう、ウチにはそんなの居ません!止めてよね〜もう!」母は怒ってるが、姉は自分の部屋入るなり顔をしかめた。
「確かに大人の女の匂いするわ!旦那がこんな匂いさせて帰ったら、許さないわよ!」と言いながら荷物を車に積み込む。
姉は錦糸町駅の反対側繁華街の方で魚の卸売り店へ嫁いだ。
昔からの幼馴染だ。ミニバスケで他校のライバル同士だったのが中高で同じバスケット部になり、ずっとケンカ友達だったのがいつの間にか付き合ってた。
彼氏がお店を本格的継ぐ事になって身を固めたのだ。
お父さんが朝の仕入れで市場でターレーに轢かれたのだ。市場には歩道も車道もないしターレーは絶対止まれないスピードで走ってる。危ないのだ。
「嫁いでから全然顔出さないんだから!」母は怒ってるが、駅前の魚政と言えば連日アメ横みたいに買い物客があふれてる。タコブツとマグロのブツが山のように積まれている。安いのだ。
「お母さんだって、買い物してたらあの忙しさじゃ無理だって分かるでしょ?今日、ほんとに奇跡的に休み取れたのよ。
琴子の彼氏の顔も見たかったし。」荷物を旦那さんと運び出してる笠原がニコッとお姉ちゃんに会釈する。
「ちょっ、待って!私達はそんなんじゃ無いから!
あくまで…???」考えてみれば、立場が分からない。
「気にすんなよ。何でも良いじゃん?」笠原がニヤッと通り過ぎながら笑う。
本当に社長の入れ知恵を感じる。
彼はあんなに恋愛とか積極的な人じゃなかったはず!
遅れてきた祈祷師が部屋に入りなり、何も言ってないのにクローゼットの前に立った。
「確かに呪いでは無いですね〜むしろ愛着や独占欲を感じます。死霊より生霊はしつこいんですよ。
祓ってもまた戻ってくる可能性もあります。
とにかく依代を遠ざけて下さい。」祓い棒で祈りを唱えて除霊していった。
姉は忙しいようで、アッという間に軽トラに残りの段ボールやキャリーケースにドレッサーを積んで帰って行った。
「もう、昔から落ち着きのない子だけど早かったわね〜」と母が少し寂しそうだ。
近くに住んでるのだが、すっかり魚屋の女将見習いなので滅多に顔を出さない。
「幸せそうだったし良かったじゃん。買い物行けば、いつでも店頭に居るんだし。」琴子が母をなぐさめる。
漠然とこの店を継ぐのは自分かな〜と思ってる。
法学部入ったのは、学校でクラスメイトや先生にまでバカにされたからだ。弁護士なりたいとかそんな気持ちもなかった。
それなら切子やってる方が楽しい。でも向いてるか?と聞かれると自信ないのだ。
伝統を受け継ぐなんて…ガラじゃないのだ。




