第6話:ブートキャンプが始まったんだが?
地獄のレオンブートキャンプが始まった。
「……まずは走り込みから。
敷地内を10周。始め」
……公爵さまの敷地ね、めっちゃ広いんだわ。
無理です!
「……次、素振り100回」
10回で限界でした。
「……次、体幹。スクワット100回」
あっ。30回いけた!
「……これを、そうだな。
少なくとも、一ヶ月は続けるように」
「死ぬて!!」
「……死なん」
あの、即答やめてもろて。
半泣きでスタートして、数日。
敷地マラソンは、5周出来るようになった。
素振りは、筋肉痛で無理。
スクワットも、やっぱり30回。
「……成長してるんだか、してないんだか分からんなぁ…」
「……油断せず、構えろ」
筋肉痛でプルプルする中、今日も律儀に立ち会ってくれている。
「……ぬぬ」
「……少し良くなったか」
えっ、マジ!?
─カンッ!
「……油断するな」
「……ぐぬ」
汗をぬぐって、ナイフを握る。
「……次」
俺とレオンの間に、見知った影が割り込んでくる。
「陽翔ぉーーー!!
やだ!今日もこんなに汚れて……!
母さんが、すーぐ綺麗にしてあげるからね!!」
「『家事EX』!」
ぱぁん
ピカァ……
「アーーー!!」
俺が光に包まれる。
すると、なんということでしょう……!
あんなに痛かった筋肉が、痛くなくなっているのです!
「……あれ?
筋肉痛ってさ、筋肉を育てるために必要なんじゃね?」
「……そうだな」
レオンが頷く。
「じゃあ今の、完全に無駄になってない?」
「……そうだな」
もう一度、頷かれた。
ちょっと待てェーーーい!
「……まぁいい、続けるぞ」
良くない、良くないよね!?
投げやりか?投げやりなんだな?
「……っと!」
俺が油断していたところに、レオンの木剣が迫る。
「っ──ぶねぇ!」
間一髪のところで、木剣をいなす。
──あれ、出来た。
今の、初めてちゃんと“見えた”気がする。
「……そろそろ、いいだろう」
レオンが、俺を見る。
「次は、“相手が動く”状況の訓練だ」
つまり……実戦。
「害獣駆除だ」
──ついに来た。
いやいや、待て。
まだ心の準備が──
「明日だ」
早いわ!!
──翌日。
「ほんとに来た……」
ギルドの裏に広がる森。
昨日までの、公爵邸でやってた“訓練”とは違う。
森の湿った空気に、思わず喉が鳴る。
「……行くぞ」
レオンに促され、俺は受付で貰った依頼書を確認する。
──スライム駆除。
……いや、うん。
初心者向けって書いてあるし、大丈夫だよな?
……ほんとに大丈夫、だよな?
ナイフを握る手に、じわりと汗が滲む。
──これが、“実戦の空気”か。
って言いたかっただけです。
……ガサッ。
「っ!?」
反射的にナイフを構える。
来たか……!
スライムか!?
それとも──
草むらから飛び出してきたのは。
──ただの、ウサギだった。
「……は?」
ぴょん、と軽やかに跳ねて、去っていく。
……いや、待て。
今の、めちゃくちゃビビったんだが。
ちょっと恥ずかしいやつーーー!
チラッとレオンを見る。
「……それは食える」
いや、そっち!?
……ガサッ。
「ふふ、ウサギめ……!
もう騙されんぞ……!!」
ドヤ顔で振り返ると、そこにいたのは──
ヌメヌメした球体だった。
……あれ?
これ……ウサギじゃないな?
──あー。ね。これね……
あれですわ。
──いや違うわ。
「ス、スライムぅーーー!」
続く




