第5話:戦い方を教わるんだが?
「……で、戦うって具体的に何すれば?」
武器屋でナイフを買って、ルンルンの俺だったが……そもそも、リアルでナイフを振り回した経験などなかった。
「……帰ったら教える」
マジで助かります、レオンさん!
最初に出会ったのが、チュートリアルの騎士でほんとに良かった。
***
「打ってこい」
公爵邸の庭。
レオンが木剣を持って来た。
「いや無理無理!
まって、俺、剣とか持ったことないんだって!」
「大丈夫だ。人は簡単には死なん」
「いきなり生き死にの話になった!?」
「さぁ、来い」
──どうやら、問答無用らしい。
「ええい──やってやんよ!」
どりゃぁ!という謎の掛け声とともに、ナイフを抜く──思ったより重い!!
手からすっぽ抜けて、カツンと転がった。
「……すぐに拾え」
「はいっ!!」
……あれ、結構厳しい?
「……次」
せぇーーい!!
ナイフに体ごともってかれて、見事に転んだ。
「踏み込みが甘い」
レオンが軽く木剣を振ってきた。
それを俺は、華麗に避け──ようとしたら、普通に軌道の上だった。
レオンが相手じゃなかったら、今ので死んでたな……
「いいか。勝つためじゃない。生き残るために動け」
生き残るために──
その言葉が、俺の心に刺さった。
「……でもさ」
俺は、ふと思った。
「その前に、逃げた方がよくない?」
──あ。
レオンの目を見た感じ、答え間違えたっぽい。
「……あー。えーと、“生き残るための隙を作れ”的な……?」
恐る恐る答える。
レオンは、しばらく黙っていた。
「……間違ってはいない」
そう言って、ゆっくりと木剣を構え直す。
「だが──」
一歩、踏み込む。
「それは“逃げられる実力があれば”の話だ」
「ちょっ──まっ!」
カン!
慌てて構えたナイフが弾かれ、どこかへ飛んでいった。
「……ちゃんと見ろ」
見失った俺のナイフを、レオンが拾い、無造作に俺へ差し出す。
「明日からは、基礎体力のトレーニングだ」
……これ、レオンブートキャンプ確定では?
──そのとき。
「陽翔ーーー?」
……は?
いや、そんなわけない。
母さんは教会に保護されてるはずだ。
……幻聴か?
「陽翔ぉーー?」
……近くない?
ゆっくり振り返る。
そこにいた。
「いっ、嫌だぁーーー!!」
来ないで欲しかった。
まだ、静かな生活を堪能していない。
──ああ、神様……!
俺が、ブートキャンプ嫌だって言ったからですか。
これは、天罰ですか?
「やだ、陽翔!そんな危ないもの持って!
──しかも、服も汚れてるじゃない!」
……やめろ。
今、いい流れだったのに。
「母さんね、なんか“スキル”使えるようになったのよ!」
嫌な予感しかしない。
「『家事EX』!」
ぱぁん、と軽い音がした。
そして俺が、眩い光に包まれる。
「ほら見て、陽翔の服もこんなにキレイになるのよ!!」
……ピカピカになっていた。
俺ごと。
なめし革の鞘も、ナイフも──
全部、ピッカピカになった。
「……便利だな」
うん、そうだね!!
まだ短い間だったけど──
ナイフについてた細かい傷まで、全部無くなった。
……なんか、ちょっとだけ寂しい。
「ほら陽翔、ちゃんとしなさい。
襟がズレてるわよ」
「はい……」
……なんで俺、怒られてるんだ?
「……慣れておけ」
え?
「お前の周りでは、こういうことが起きる」
……マジか。
レオン、なんか見えてんの?
続く




