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毒親から逃げて異世界転生したのに母まで来たんだが?  作者: 灯吉郎


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2/7

第2話:王宮行きなんだが?

──翌朝。


目が覚めた瞬間、俺は一瞬だけ「昨日のは夢じゃないのか?」と錯覚した。



……いや、違う。



天井が高くて綺麗だ。


無駄に装飾が豪華だ。



そして……布団がフカフカだった。



「……マジで、夢じゃないのかよ……」



もそりと起き上がり、ぼそっと呟いたところで、ドアがノックされた。



「失礼いたします。お目覚めでしょうか」



メイドさんだ。

昨日の人とは別だが、やっぱり丁寧すぎる。



「……何故、我が目覚めを知っている……。

あ。ごめんなさい。ウソです。

お目覚めです!」



自分でもよく分からない返事をしながらベッドから降りると、すぐに着替えが差し出された。



いかにも“ちゃんとした服”だ。


柔らかくてサラサラ、ちょっとテカテカで。


……何故か、サイズもピッタリだった。



「レオン様より、本日は王宮へ向かうため、こちらをお召しくださいと申しつかっております」



「……王宮……」



昨日の言葉が、じわっと蘇る。



(これは死亡フラグか……?)



一瞬、布団ダイブしたくなったが、そうもいかないらしい。



「陽翔……!

ほーら、もう。ぼーっとしてないで、さっさと着替えなさい!」



メイドさんの後ろから、聞き慣れすぎた声。



「……母さん」



すでに身支度を整えた母が、後ろに立っていた。



ファンタジー世界なのに、なんか普通に馴染んでるのが無性に腹立つ。



「ちゃんとしたところに行くんだから、身だしなみはきちんとしなさいよ」



「いやそれは分かるけど、順応が早すぎない!?」



異世界二日目でこれってどういうことだ。



「こういうのはね、慣れよ」



「いや、そんな簡単に慣れたくねぇんだわ」



着替えながらいつものやり取りをしていると、再びノック。



「……準備はできたか」



レオンだ。



「……はい」



──ええい、死なば諸共だ!



観念して頷くと、レオンが一度だけ俺たちを見て、軽く息を吐いた。



「……では行く。馬車を用意してある」



(馬車……)



いよいよ、って感じがしてきた。



逃げ場は、……もうない。



「……はぁ〜」



小さくため息をついて、俺は一歩踏み出した。




公爵邸の外に出た瞬間、冷たい空気が頬を撫でた。



見上げた先には、石造りの街並みと──見慣れない空。



「ちょっと待って、月がふたつあるじゃん」


「……ツキとは?

……空の星のことであれば、あれは衛星だな」


「……月ですら無かった……」


御者さんに促されて、馬車に乗り込む──


「えっ、たか……!

四駆の車高レベルじゃね?」


「なんか、あれね……!

これ、シンデレラとかに出てくるみたいな馬車ね……!

お母さん、こういうの憧れてたのよ〜!」


「……知らんわ!!

母さんの、そんな乙女な一面なんて……!!

知りたくもなかった!!」


「……閉めるぞ」


俺たちがギャーギャーしてるのに慣れたらしい、レオンが表情も変えずにスルーしてくる。


……いや、冷たい目よりマシか?



馬車の扉が閉まるのと同時に、馬がいなないた。


ガタリ、と車体が揺れ──ゆっくりと、馬車が動き出す。



「うおっ……!」



思わず声が漏れる。



アスファルトでは有り得ない振動が、硬めの座席から伝わる。


小石に車輪が乗るたびに、尻がガタガタする。


窓の外を、海外にありそうな石畳の道と、映画みたいな服を着た人影が流れていく。


見慣れない服装、見慣れない建物──



(……マジで異世界なんだな、ここ……)




部屋にいたときより、ずっとリアルだ。



「まぁ〜!ヨーロッパみたいね。

一度ね、新婚旅行でパリに行ったことがあるのよー!あの時は、父さんも私も若くて……」


「あ。すいません。

酔いそうなんで、窓開けていいですか」


ガタリ、と開けた窓から吹き込んできた風が、母さんの戯言を吹き飛ばして──くれたらいいな、と思った。



しばらくして、馬車の揺れがゆっくりと収まっていく。



やがて、カタンと音を立てて止まった。



「……着いたぞ」


レオンの声と同時に、扉が開かれる。



外に出た瞬間──


思わず、息を呑んだ。



「……は?

……でっか」



目の前にあったのは、見上げても見上げきれないほどの巨大な建物だった。


「……うーん、そういや、ソシャゲのトップ画面にこんな城あったような……」


俺が首を傾げていると、テンション高い声が聞こえた。


「まぁ〜!立派ねぇ!

写真撮りたいわ〜!」


「スマホねぇだろ!!」


俺がすかさず突っ込むと、母さんが「そういえば」って顔した。


「そうだったわ。

……あのとき、慌ててたから……

家に、置いてきちゃったのね……」


あのとき。


俺の胸に、ちくりと罪悪感が湧き上がる。



(……いや、今それ考えるとこじゃないだろ……)



「……行くぞ」


俺の感傷を知る由もなく、レオンに促された。



(……なんかもう、帰りたい……)



登城する前から疲れて、レオンの後ろをトボトボとついて行った。




「レオン様、お待ちしておりました」


レオンを見かけた門番が、すぐに道を開けた。


(マジで顔パスだ……!

さすがチュートリアル騎士、顔が広い!)



中に入ると、空気が一変した。


静かで、広くて、やたらと天井が高い。



油断すると、「あーーー!!」

とか、「やっほーーー!!」

とか叫びたくなるようなホールだった。



(ここ騒いだら怒られるやつ。

……ここは観光地じゃなくて、死亡フラグがあるとこだからな?

落ち着け俺……!)


深呼吸を繰り返していると、のほほんとした母さんの声が響いた。



「まぁ〜!すごいわねぇ……!」


「母さん、もっと声小さくして!!」


「やぁね、母さんそんなうるさくないわよ!」


「……!わ、分かったから……!」



ホールを進むと、その先の重厚な扉が開かれる。


赤い絨毯の先に……玉座に座る影が見えた。



(……あ、これ王様だ。

ガチのやつじゃん、すげぇ……!)



ある程度進んだところでレオンに促されて、頭を下げる。



(やっべ、「こうべをたれよ」とか、「このゴールドをもってゆけ」とか言わないかな……)



場違いな妄想にプルプルしていると、王様から声がかけられた。



「よく来たな。……話は聞いている」



(……どんな話聞いてるんだろ……)


(「道に、見たことない黒い髪の人間が落ちてたんで拾って帰ったら、頭のヤバそうな親子でした」……とか?)



(絶対ロクな話じゃない)



今度は冷や汗を垂らしながら、頭を下げたまま、じっとする。ちょっと疲れてきた。



「異界より来た者、と聞いている」



(あ、異世界、じゃなくて、「異界」ってネーミングなんだ。へー!)



「まぁ、やだわー!

異界だなんて、そんな。大げさねぇ」



母さんんんんんん……!!


横目で見ると、母さんはすでに面を上げていた。


レオンが報告する。



「……発見時、不可解な言動が見られました」



ごめんなさい、現在進行形で不可解です。ごめんなさい……!



「……そこの若者も、そちらのご婦人も……ただ者ではないようだな」


母さんも……!?


ただの母親なんだが!?



──いや、だいぶクセは強いが……!



「おぬし達の能力を測らせてもらう。

──水晶を持て」



おっ!


これは、チュートリアルの能力判定イベント!

キタコレ……!!




「……じゃあ、まず俺から……」



ドキドキしながら、水晶に触った。


──うっすら光った。



「……まあ、そこそこだな」



水晶を持ってきてくれた神官ぽい人に、めっちゃ雑な視線を向けられた。



──あれ?


俺、異世界系チートないの?


能力値、デフォ?


マ???



「じゃあ、次は私ね」



母さんが、水晶に触れる。


その瞬間──


眩い光が弾けた。


そしてじわりと、空間そのものが“整っていく”ような感覚。


重苦しかった空気が、一瞬で澄み渡った。



「うおっ……!? まぶし……!!」



(いやいや、待て……!!


なんでだよ!!)



『家事:EX


・空間を整える

・対象を“適切な状態”にする』



「まぁ、なに、これ?

私、ゲーム全然分からないのに……」



「これは凄い……!!」


「聖女様に、勝るとも劣らないのでは……」


母さんが発動したらしいスキルに、城内がザワザワしだした。



「……なるほど」


王様まで、なんか訳知り顔で目を細めて頷いてる。


(いや、家事スキルで、なんでこここまで清々しくなるんだよ!!)



(人間空気清浄機かーーー!!)



……ところで、俺のステータスは?



スキルの詳細クレ!!




続く

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