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男扱いされてる女子、俺の前では可愛い女の子  作者: ときたま@黒聖女様


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「……え、俺と付き合おうって何……?」


 ちょうど西宮がこっちを振り返っていたところで口からなんか出た。どーすんの、これ。いきなり、付き合おうとか言われても西宮も困るだろ。目を丸くして固まってるし。ほんと、何言い出してんだ俺は。


「ご、ごめん。いきなり言われても困るよな……なかったことに――」


 でも、どうしてか今。ものすごく西宮を好きだって気持ちが溢れてきてしまったんだ。


「――は、しないから、ちゃんと言うよ。俺、西宮のことが好き。好きなんだ」


 この気持ちを変に誤魔化すことはしたくない。もしも、西宮に断られて友達でいられなくなったりするのは嫌だ。けど、それ以上に伝えたい衝動が勝っている。


「噂でさ、西宮には好きな人がいるって聞いたから西宮に好きな人がいるのは知ってる。それが、俺じゃなかったらこの告白は西宮に迷惑をかけるだけのもんだ。謝る。けど、もし。もしも。西宮の好きな人ってのが俺だったなら……俺は西宮と付き合いたい。いや、付き合ってください」


 告白なんて初めてでどう言えばいいのが正解なのか分からない。こんな、雰囲気もムードも何もない場所で告白なんて、バカだよ俺は。本当はもっと言いたいこととか考えてからの方がよかったはずなのにな。

 さっきからずっと西宮は黙ったまま動く気配がないし……怖くて熱い。体の芯から燃えているみたいだ。


「……どう?」


 恐る恐る聞いてみる。すると、西宮は口を閉じて三日月を描くと目を細めた。笑顔を浮かべたんだ。


「ボクの好きな人は東野くんだよ。だから、ボクでよかったら付き合ってください」

「……っ、はあーーー……よかった」


 安心からかどっと全身から力が抜けていく。嬉しい。嬉しさのあまり、体が震えてきた。情けない。


「えと、じゃあ。今この瞬間から俺達は付き合ってるってことで」

「うん! じゃあ、急がないとだし体育館に戻ろっか!」

「そ、そうだな」


 体育館を目指して廊下を早歩きで歩いていく西宮。

 なんか、やけにあっさりしてる気がするけど……告白の後ってこんなもんなのか。もっとこう、気恥ずかしくなってぎくしゃくしたりするもんだとばかり思ってたけど、それはラノベの読み過ぎか。現実はこんなもんなんだな。


 急いで西宮の後を追う。そうだ。先生に言うようの三原の言い訳を考えないといけないんだった。ダメだ。西宮と付き合えた喜びが大きくて、何も浮かんでこない。


「三原がサボるための言い訳だけどさ、突き指はたいしたことなかったけど様子見で休んでるみたいな感じでいいかな」


 西宮の隣に追い付いてパッと頭に浮かんだ案を出してみる。西宮は前を向いたまま答えた。


「うん! いいと思う!」

「じゃ、先生には俺からそう言っとくよ。見てくるように頼まれたのは俺だし」

「うん! その方がいいね!」

「休憩時間って十分なんだっけ?」

「うん!」

「どれくらい経ったかな。遅れてないといいけど。俺と西宮、次、試合出るし」

「たぶん、大丈夫だよ!」

「ていうか、西宮三試合連続だろ。疲れたりしてないか?」

「うん! むしろ、今はアドレナリンが出て力が溢れてくるよ! さっきは全力を出せなかったから、次の試合はチームに貢献するんだ!」

「ほへー西宮は凄いなあ〜。けど、無理はしないようにな」

「うん!」


 西宮は大きく首を縦に振って頷いた。

 うーん、何だろう。さっきから、西宮とぜんぜん目が合わない。西宮はずっと前を向いたままだし、いつもはそんなことないんだけど。それに、一回一回やたらと声が大きいのも変だ。


「西宮、ほんとに無理したらダメだぞ。西宮が無理なら代わりに出るよって人がチームにいるだろうからさ」


 西宮がいるチームの人数が俺がいるチームよりも一人少なくて、西宮が三試合連続で出ることになっている。理由は高身長で活躍しそうだから、というものだ。

 それを、任せて、と西宮は引き受けた。けども、先生はちゃんと西宮に任せきるんじゃなくて、西宮が疲れたら交代交代で出るように、と声を掛けていた。

 だから、西宮の代わりはいくらでもいるんだ。


「ううん! 本当に大丈夫なんだ! 水分は取るけどね!」

「そりゃ、当たり前だ……ってのは、おいといて。なんか、西宮の様子、変じゃない?」

「え、そ、そうかな!」

「だって、さっきからずっと声が大きいし……なんていうか、いつもの西宮じゃないような」

「しょ、しょうがないじゃん! 好きだった東野くんから告白されて嬉しいんだもん! 付き合えて、すっごく嬉しいんだもん!」

「……え、声が大きかったのって嬉しくなってたからなの? じゃあ、なんでずっと前を向いたままなんだ?」

「それは、嬉しいけど、誰かと付き合うとか初めてでどうしたらいいか分からないし、恥ずかしさみたいなものがあって顔を見れなかったから!」


 大きな声で暴露してくれた西宮に俺までなんだか気恥ずかしくなってくる。こういうのって言わせない方がよかったんだろうな。


「全部言わせてごめん……でも、っっはは。そう言ってくれて嬉しいや」

「逆に東野くんは随分と余裕そうだね!」

「いや、ぜんぜん余裕なんてない。さっきからずっと心臓の音がうるさいままだし」

「ほんとかなあ!」


 疑り深い目を向けてくれたおかげでようやく西宮の顔を見ることが出来た。西宮の頬が赤く染まっていて。それが、照れてるからだったら嬉しいなと思った。


「確認してみる?」


 心臓の音を確かめてもらうには聞かせるか触ってもらうしかない。西宮に俺だって余裕じゃないと分かってもらえるならどっちでもよくて、俺は両手を広げて受け入れるポーズを取った。


「そ、そんな無防備なこと言ったらダメだよ!」

「え、無防備?」

「もっと自分の身の危険を考えないと! 分かった!?」

「あ、はい」


 どういう訳か怒られた。そんなに変なこと言ったつもりはないんだけど。




 体育館に戻って、三試合目を終えて最後の戦いが始まった。三試合目も特に活躍のなかった俺。コートの端で一応は一生懸命やったつもりなんだけど、チームに貢献したかと言えばまったくだ。まあ、そんなもんだろうと思う。

 三試合目の結果は西宮チームの勝利。二試合目がこっちの勝ちだったらしいから、現状一勝二敗となっている。


 別に、勝ち負けに拘っている訳じゃないけど、もう勝ち越すことは絶対に無理だ。それならば、せめて、この試合は勝って引き分けにもってこれたらいい幕引きだろう。俺に出来ることは勝負の行方を黙って見守るだけだけど。


 そんな最終試合の結果は見事、チームメイトが頑張ってくれたおかげでこっちの勝利となった。これで、お互いのチームが二勝二敗。引き分けだ。

 これは、バレーに青春を捧げている同士が戦う人生大一番の結果が全てのような勝負じゃない。クラスで遊ぶレクリエーション。こういう結果が一番平和なんだと思う。証拠に今は敵味方関係なく、みんなが口々に感想を述べ合って盛り上がっている。


 俺はというと一緒に盛り上がれるような相手もいなくて一人で過ごしていた。


「いや〜三試合目の西宮、エグかったな」

「二試合目は迷惑かけちゃったから。挽回出来てよかったよ」

「スパイク強烈過ぎんだろ。打つタイミングも完璧だったし」

「いいアシストがあったおかげだよ〜」

「まあ、それは確かにだな。全てはいいアシストからって言うし」

「や、調子乗んなし。決めたの西宮だろ」


 西宮は男子に囲まれながら中心で笑っている。三試合目の西宮は凄かった。出るのは最後だからと力を使い切ろうとしていたのかとにかく動き回る。拾って上げて、スパイクを決める。まるで、バレーの選出のような働きだった。間違いなく、一番貢献していたと思う。

 だからこそ、男子達もあんなに興奮しているんだろうし。


 ああいうのを見て、三原達は西宮のことが気に食わないんだろうな。男子に囲まれる、なんて西宮に人気がないと起こらない光景だ。いかにも、三原達みたいに西宮に嫉妬している連中からすれば面白くない状況に違いない。


 彼氏として、ああいうのを見て何も思わないことはない。西宮に距離が近いやつがいるとちょっと離れてくんないかなー、とか思うし。ただ、ついさっき付き合ったばかりの分際で彼氏だからと出しゃばるのも違う気がする。

 それに、西宮の交友関係は知っている。女子よりも男子の方が圧倒的に多いと。そんな西宮に男子と関わらないように言うのはいくら付き合ってる身でも自由を奪い過ぎだと思う。そういうことはしたくないし、するつもりもない。


「間違いなく、今日一番活躍してたのは西宮だな」

「そんなことないよ。クラスみんなが頑張ったから勝ち負けのない結果に終わったんだと思うし。ボクはその中の一人でしかないよ」

「うわー。カッコつけてますわ」

「そんなつもりじゃないんだけどな」

「ほんと、西宮って男だよな。キザ」


 また西宮が男扱いされてる。男っぽさを演出したがっていたさっきまでの西宮なら、狙い通りだと喜んだのかな。でも、今はもう違うはずだ。

 こういう時こそ、俺の出番だよな――。


「はーい。そういうのもう、男女差別だと思いまーす」

「そうだよ。別に女子がバレー上手だっていいし。スパイクを決めたって運動が得意なら普通でしょ」

「まあ、カッコよかったってのは認めるけどね」

「でも、西宮さんは女子なんだから」


 俺が出る幕もなく、数人の女子が口々に言い始めた。みんな、西宮と同じチームだった女子だ。男子達は気まずそうにしている。


「……そうだよな。別に、女子が得点王だからって男じゃないな」


 みんながみんな、西宮に対してどう思っているかは誰も知らないことだ。けど、西宮のことをちゃんと女の子だと見ている存在は確かに増えている。俺だってそれは絶対に変わらない。三原達が西宮に何かしようとも。西宮が男っぽさを目指しても。絶対に。


 そんな風に言ってもらえたことが嬉しいのか。それとも、少し照れくさいのか。西宮はぎこちない笑顔を浮かべていた。

 そんな西宮を眺めていれば目が合った。

 小さく手を振ってきた西宮に同じようにして応じる。


 清々しい気分だ。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

今回にて付き合い始めた二人ですが、話はもう少し続きますのでどんな感じで過ごしていくのか追い掛けて頂ければ幸いです。



……ストック減ってきてますが、頻度高め更新頑張ります。

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― 新着の感想 ―
 手探りの付き合いだけど、お互い変に意地張らないで素直に付き合いだしたのがちょっと嬉しいです。
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