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「ひーがしのくん。ちょっとお話いい?」
「南條か。どうした?」
休み時間中、いつものように席に座ってラノベを読んでいれば南條から声を掛けられた。南條はやけにニヤニヤしている。何を考えているんだろう。ちょっと不気味だ。
「今日の放課後、暇? それとも、西宮さんと約束してる?」
「あのな。なんでそこで西宮が出てくるんだよ」
「東野くんと西宮さんって毎日、一緒に帰ってるんじゃないの? 朝は一緒に来てるでしょ」
「帰る時はバラバラだよ。一緒になる時もあればならない時もある。別に朝だって約束してる訳じゃないしな」
「え、じゃあ、約束してないのに一緒になるの? それって、超仲良しじゃん。息が合うんだね」
「息が合うかどうかは別として……仲は良いな。って、なんの話なんだ?」
「あ、そうそう。放課後、暇? 暇だよね?」
「予定はないけど、決め付けられるのは嫌だな」
「勉強しよ」
「聞けよ」
南條はぜんぜん俺の話を聞かない。
「勉強……ああ。もうすぐ期末だから?」
「そう」
気が付けば六月も下旬に入っている。七月の頭には期末テストがある。そのための勉強ということだろう。
「でも、俺。人に教えられるほど勉強が得意って訳じゃないんだよな」
成績は中の中。クラス内順位も各教科によって真ん中より上だったり下だったりとバラバラ。唯一、得意なのは文系に関するもの。普段から、ラノベを読むし物語を読むのは好きだからだ。
「大丈夫。東野くんに教えてもらおうなんて考えてないから」
「気になる言い方だなあ……で、役立たずの俺と勉強なんてして南條のためになるの?」
「なるなる。東野くんはいてくれるだけでいいからね」
「どういう意味?」
「北上くんに勉強教えてもらいたいんだけど、二人だと北上くんが嫌がるでしょ。体育祭以降、話してないからさ」
「北上の肩を持つ理由じゃないけど、別に南條のことを嫌ってるとかそういうんじゃないぞ」
北上は女の子と話すのがあんまり得意じゃないだけなんだ。緊張するよな。よく分かる。俺だって久し振りに南條と話してて緊張してるもん。
「分かってるよ〜だから、こうして東野くんに持ち掛けてる訳だし」
「ふーん。ていうか、なんで北上?」
「え、知らないの? 北上くん、めっちゃ頭いいんだよ。ほとんどのテストでクラス一番だし」
「え、マジ!?」
「うん。去年からずっとそうなんだから」
他人のテストの点数なんて気にしたことがなかったからぜんぜん知らなかった。成績優秀だって噂にもなってないし。陰で努力してるんだろうな。
「スゲー……あ、だから、俺には北上と二人の空間を作らないために声を掛けてるってことか」
「そういうこと。話が早くて助かるよ」
「雑用ですらないな……別にいいけど」
「ほんとっ。ありがとう」
「それにしても、北上がそんなに成績が良いだなんてな……意外だわ。南條はどうなんだ?」
「私? すこぶる苦手だよ。テスト前に何も勉強してなかったら赤点取ると思う」
平然な顔でとんでもないことを言い出す南條。
「うわ。何。その信じらんねーって顔は」
「いや、意外だったから。てっきり、南條みたいなのは勉強出来るもんだと」
「私みたいなのって私にどういうイメージ抱いてたの?」
「この本に出てくるヒロインみたいに容姿がいい奴は勉強も運動も家事も全部完璧だと思ってた」
「私がそんな完璧超人なはずがないじゃん。家事とか大の苦手だし。夢見過ぎだよ」
「あくまでも、理想と現実は違うってことね。すまんかった。勝手に変な決め付けをしてて」
「いいってことよ。誤解されるのはよくあることだしね」
南條みたいに可愛い女の子は勉強も運動も何でも得意であってほしい。自分は違うくせに本人のことを知りもしないで理想を抱いてる。そんな、俺みたいなのが他にもいたんだろうか。
「じゃ、放課後。図書室集合ね」
「あいよ。北上にはもう言ってるんだよな?」
「今から聞いてくる」
「まだなんにも決まってないのかよ……」
よく一緒にいる男子二人と楽しく話している北上の元へと南條が声を掛けに向かう。声を掛けられた瞬間、北上の表情が一瞬、固まった。けど、会話は出来ているようだ。あ、今勉強教えてって言われたな。北上がびっくりしてる。でも、いいんだ。頷いてるし。
「オッケーだって〜」
手を振りながら南條が教えてくる。分かった、という意味を込めて手を振って答えた。さてと。ラノベの続きでも読むとしますか。
「何がオッケーなの?」
本を開いた瞬間、頭上から声がした。見上げればすぐそこに西宮がいて、ドキッとする。西宮のことが好きだと自覚してからというもの、西宮と話そうとするだけでそわそわして、落ち着きがなくなりそうになる。
けども、それをグッと堪えて俺は平静を装う。
「放課後、北上に勉強教えてもらうことが決まったんだ」
「あ、もうすぐ期末だもんね。東野くんは勉強してる?」
「まだしてないな。直近にならないとやる気でなくて」
「ボクと一緒だね。キッカケがないと勉強しようってなかなか思えないんだよね」
「じゃあ、西宮も参加する?」
「いいの?」
「ダメな理由がないよ」
俺が西宮と過ごしたいってだけだし。そんなこと口が裂けても言えないけどな。
「そういうことならボクも参加するー。一緒にがんばろーね」
「頑張ろ」
笑い掛けてくる西宮に顔が熱くなる。おまけに、胸まで痛くなってきた。
西宮ってこんなにも可愛かったっけ。




