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男扱いされてる女子、俺の前では可愛い女の子  作者: ときたま@黒聖女様


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「なあ、聞いた。昨日、西宮告白されたらしいよ」

「はっ!? マッジでーーー!? あの西宮が告白っ!? 誰にっ!?」

「ちょ、声が大きいって」


 体育の授業前のこと。

 体操服に着替えているとすぐ近くからそんな声が聞こえてきた。

 え、西宮が告白された?

 つい着替えの手が止まる。つい話し声が聞こえてきた方を向いてしまう。と同時に多数の男子がそっちに押し寄せてきた。


「に、西宮が告白ってマジ!?」


 みんな今の話を聞いていたんだろう。西宮が告白された話題を口々にしている。意外性からか。それとも、何か。別の理由があるのか。とにかく、西宮が告白された件が気になって仕方がないみたいだ。

 かくいう俺もそうだ。着替えの手がぜんぜん動かない。半裸のままだ。無性に体の芯からそわそわとしてしまう。落ち着きが悪い。


「詳しく教えてくれよ」


 誰かが言った。ナイスだ。俺も知りたい。


「昨日の放課後、体育館裏で告白されたらしいよ。バレー部の友達が目撃したんだって」


 ということは、相手は昨日、家庭科室まで一緒に荷物を運んだ男子だろう。てっきり、西宮に手伝ったお礼でも渡すのかと思ってた。けど、ぜんぜん違っていたらしい。

 ていうか、あの人、西宮のこと男みたいだとか言ってなかったっけ? 平然と重い物を運ばせてなかったけ? 好きならそんなことしなくない?


「で……それで、西宮の返事は……?」

「断わったらしいよ」

「な、な~んだ」

「ま、まあ、そうだよなあ。西宮に彼氏なんて出来るはずねえよ」

「だ、だよなあ。男みたいな西宮に彼氏なんて似合わねえし」

「よかったよかった」


 なんか、男子達の様子がちょっと変だ。西宮のことを男扱いしているくせにどこか安心しているように見える。俺の気のせいだろうか。俺がほっとしてるからそう見えてるだけだろうか。

 なんにせよ、西宮は告白を断わったらしい。よかったよかった。これで、心置きなく着替えられるってもんだ。袖を通して、体操服を着る。そこで、ふと思う。よかったもそうだけど、何で俺は安心してるんだ。


「断わった時に西宮が言ってたらしいんだけど、西宮に好きな人がいるらしいよ」


 教室の中が一瞬、静まり返った。それから、すぐにざわめき出す。


「西宮が好きな人って……好きになられても迷惑じゃね?」

「分かる〜告白されても付き合ったり出来ないわ。女の子っぽくないし」

「いや、でも、西宮って案外、顔は可愛いくね」

「顔は可愛い、よな。スタイルは悪いけど、顔だけは可愛い」

「だからって、付き合おうと思うか?」

「いやあ、無理じゃね。どう頑張っても西宮とは友達の域を出れねえ」

「まあ、西宮からどうしてもって言われたらなあ。考えはするかも」


 西宮と付き合う付き合わないの肯定派と否定派が意見を交わす。西宮に好きだと伝えられてもいないのによくもまあここまで言えるものだ。アホらし。

 さっさと着替えを済ませた俺は教室を出た。体育館を目指す。


 ほんと、よくあそこまで言えたもんだ。西宮から好きだって言われたら嬉しくなるじゃん。顔は可愛いし、仕草も言動もいちいち可愛いし。それだけじゃなくて、一緒にいると楽しいし。よく笑ってくれるからこっちまで幸せな気分になるし。何より、一緒にいると安心するんだよな。

 ほら、西宮なんて好きになるところしかないし、付き合えるなら付き合う以外の選択肢がないだろ。好きになるところしか――あ。


 足が止まった。


 俺って西宮のことが好きなんだ。


 すごいことに気が付いた。


 俺、西宮のことが好きなんだ。え……えー。そうなんだ。俺ってそうだったんだ。いや、西宮のことはずっと好きだった。けど、その好きってのは友達としてってのもので、恋愛的な意味じゃないと思ってた。そもそも、恋愛的な意味ってなんだよ。恋愛経験がないから分からん。好きって何!?


 難しい。頭を抱えても一向に分からない。

 でも、心臓の音がさっきからずっと大きい。背中からは変な汗が出てきた。顔も熱い。頭の中は西宮でいっぱいになっている。笑ってる西宮。泣いてる西宮。恥ずかしそうにしてる西宮。食べてる西宮。遊んでる西宮。寝てる西宮。西宮。西宮。西宮。西宮。今まで見てきた西宮が鮮明に浮かんでくる。

 そのどれもが俺に深く根付いてる。こんなにも。


 好きだからこんなにも西宮のことが浮かんでくるのかな。




 西宮のことが好きだと自覚してから気になることが一つ。それは、西宮が誰を好きなのか、ということ。気になり過ぎて西宮のことをこうして授業中も目で追ってしまっている。

 ちゃんと先生の話を聞いてて偉いな。考える時はペンを顎に当てるんだ。可愛いなあ。あ、何か気付いたらしい。ノートに書き込んでる。よかったな。

 これはダメだ。西宮のことしか見れないようになってる。あ、西宮がこっち見た。目が合った。笑った。先生にバレないように手を振ってる。可愛いなあ。振り返しとこ。


 手を振り返せば西宮はまた前を向いて先生の話に集中している。

 うーん。西宮は誰が好きなんだろう。


 授業が終わってからも俺は西宮を目で追ってしまっている。西宮はよく男子と話す。クラスの大半の男子とかわるがわる話す。西宮は人気だからよく声を掛けられるのだ。

 だから、これといった特定の相手が分からない。


 ほんと、西宮が好きな人って誰なんだろう。

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