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男扱いされてる女子、俺の前では可愛い女の子  作者: ときたま@黒聖女様


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 昼休み中のこと。

 とにかく今日は暑くて持ってきていたお茶を午前中に飲み切ってしまった俺は自販機へと来ていた。お金を入れて桃味がする水を購入。

 その場でペットボトルの蓋を開けて一口飲んで水分を補給し、教室へと戻るために歩を進めた。


 その途中で西宮を見つけた。西宮は腕に大きなダンボールを抱えている。


「西宮。代わりに運ぶよ」


 横から西宮に声を掛けたところであることに気が付いた。西宮の隣にもう一人、ダンボールを抱えている男子がいる。顔は見たことがない。同じクラスじゃなさそうだ。


「大丈夫だよ。軽いから」


 西宮は平気そうな顔で断ってくる。中身は見えないから分からないけど、物はそんなに入ってないのかもしれない。


「それに、東野くんとは関係ないクラスのことだから気にしないで。あ、東野くんの気持ちはとっても嬉しいんだよ!」


 どうやら、違うクラスのことなのに手伝っているようだ。俺には本当に関係のないこと。だから、西宮は俺に手伝わせないように断ってる、という理由もあるのだろう。


「そーそー。西宮にはそんな気遣い無用だって。誰だか知らないけど、西宮のこと知ってるなら知ってるだろ。西宮が男みたいだって。これくらい、西宮なら余裕だよな」

「う、うん」

「いやー、西宮が職員室前を偶然通ってくれてほんと運がよかったわ。同じ部活の女の子には運ばせたくなかったからな。かといって、一人で運ぶのはなかなか大変だったろうし」


 いや、お前は手伝ってもらってるくせに西宮には必要ないって馬鹿か。西宮のほっそい腕に無茶させてるんじゃねえよ。と言いたいところをグッと堪えて西宮が運んでいるダンボールの上に持っていたペットボトルを横に寝かせるようにして置く。


「え、な、何!?」


 戸惑っている西宮は無視して、西宮が持っているダンボールの下に腕を通した。それから、ダンボールの端に指をかけて俺の方へと引っ張る。困惑して力が抜けていたのかすんなりと西宮からダンボールを奪い取ることに成功。

 腕にはずっしりと重みが乗った。持てないことはない。けど、どう考えても軽いか重いかで言えば重たい。女の子がずっと持ってるってのはかなり負担になりそうだ。


「で、どこまで運ぶんだ?」


 ぽかんと口を開けていた男子に聞く。


「か、家庭科室だけど」


 ということは、家庭科の部活で使う何かがこの中に入っているんだろう。食材か。それとも道具か。何でもいいけど、顧問の先生も一人で運ぶのは大変だから部活の生徒を呼び出したんだろうな。


「お前、何してんの?」

「何って俺だって女の子の西宮に運ばせたくないからこうしてるだけだけど。そんなことより、早く行こーぜ。置いてくぞ」


 家庭科室がどこにあるのかは知っている。滅多に使われることはないとはいえ、去年の間に調理実習やらで行ったことがある。ここからだとちょっと遠い。

 一人で先々歩き始めると急いで男子が追い掛けてきた。その後に西宮も追い付いてくる。


「あ、ありがとう」

「いいってことよ。俺がしたいだけだし……っと」


 ダンボールに乗せたペットボトルのバランスが悪い。落ちないように俺の方に傾けて運んでるとはいえ、邪魔だな。

 そう思っていれば西宮が手を伸ばしてペットボトルを持っていった。


「これは、ボクが代わりに持っとくね」

「サンキュー。助かる」

「後でちゃんと返すから心配しないで」

「そんな心配、西宮相手にするはずないじゃん。ていうか、西宮になら水くらい取られてもいいし」

「の、飲めないから取らないよ」

「え、西宮って水だけだと飲めない感じ? 俺も味がついてる方が好きなんだ〜」


 俺が買った桃味がする水なら飲むのは好きだ。けど、水だけを買おうとは思わない。水は飲むけど、わざわざ買ってまで飲もうとはならないんだ。


「の、飲めるよ。そんなに飲まないけど、水が飲めない人なんていないんだし」

「じゃあ、苦手って感じか」

「苦手でもないよ」

「その水、ちゃんと桃の味が濃くて美味しいから一口飲んでみる?」

「な、何でそうなるの!?」

「いや、ほとんどジュースみたいだからどうかなと思って」


 普通に美味しいし、あんまり嫌いそうな人はいないからオススメしてみただけなんだけど西宮が異様に驚いている。水を勧められただけでこんな反応する、って違和感を感じるほど驚いている。よっぽど嫌だったのかもしれない。


「無理にって言ってる訳じゃないから気にしないでくれな」


 無理やり飲んでほしいだなんて思ってない。良かれと思ってやったことでも、相手には迷惑だったなんてよくあることだ。


「ほ、本当に飲んでもいい、の?」

「無理してないならどうぞどうぞ」


 おそるおそるペットボトルの蓋を開ける西宮。顔はやけに強張っていて緊張でもしているみたいだ。

 水を飲むだけなのに、変なの。

 そう思いながら見ていれば西宮は体を九十度に方向に向けた。俺に背を向けた状態のまま、西宮の顔が上を向く。飲んでる最中だろう。

 やがて、ペットボトルに蓋をした西宮がこっちを向き直った。


「た、確かに美味しいね。これはもう、水じゃなくてジュース」

「だろー……って、あれ。なんか、西宮赤くなってない? 大丈夫?」


 心なしか、さっきよりも西宮の頬が薄っすらと赤くなっているような気がする。


「な、なってないよ」

「もしかして、重たい物を運んだから疲れたんじゃないか。今日も暑いし」

「そ、そうかもしれないね。あー暑い」


 手で風を作って自分を仰ぐ西宮。


「水、いくらでも飲んでいいから無理しないようにな」

「あ、ありがとう」

「ていうか、先に教室に戻って休んでたら」

「それは、出来ないよ。東野くんにボクがやるはずだったことを代わってもらってるんだもん」


 本来なら、西宮のやることでもないだろうに真面目だなあ。


「西宮ならそう言うよな。分かってた。なるべく、急いで終わらせよう。あ、でも。本当に危ない時はちゃんと自分を優先してくれよ。西宮に病気とかなってほしくないし」

「だ、大丈夫。東野くんが思ってるよりもすこぶる健康でそんな心配してもらうのが申し訳ないくらい元気だから。うん」


 早口で言い切った西宮。この様子なら本当に問題なさそうだ。とはいえ、いつまでも重たい荷物を持っていられるほど、俺の腕は強くない。どっちにしろ早めに終わらせよう。

 西宮と話しながら早歩きで家庭科室に到着した。

 家庭科室の扉は閉まっていたが一緒に運んでいた男子が鍵を持っていて、開けた。中に入って一番近くにあった机にダンボールを乗せる。


「ふぅ。これで、完了だな。後はそっちでやってくれよ」

「分かってるよ。名前も知らないけど、助かった」

「どういたしまして。じゃ、戻ろっか」


 家庭科室に用はなく、西宮に声を掛ける。


「うん。それじゃあね」

「あ、西宮」

「ん、どうしたの?」


 家庭科室を出ようとしたところで西宮が呼び止められた。一緒に戻ろうとしていたから俺も足を止めて西宮を待つ。


「あー……今日の放課後さ、時間ある?」

「あるけど」

「じゃあさ、話したいことがあるっていうか」

「今じゃダメなの?」

「今は――」


 俺の方をチラッと見てくる。俺には聞かれたくない内容なのかもしれない。


「と、とにかく。放課後、体育館裏に来てくんねーかな」

「分かったー。それじゃ、また放課後にね。戻ろ」


 約束をした西宮から言われて今度こそ家庭科室を出た。


「わざわざ放課後にってどんな用事だろう」

「もしかするとあれじゃないか。荷物運びを手伝った礼に部活で作った物でもくれるんじゃないか」

「だったら、東野くんも呼ばないとダメだよね。ボクが手伝ったのなんてほんのちょっとだもん。ほとんど東野くんが運んだようなものだし」

「俺はいいよ。関わりないし。西宮の前でカッコつけたかっただけだから」


 西宮が気にしなくて済むようにあくまでも自分のためだったとふざけておく。実際、荷物はかなり重たかったし西宮と代われて俺は満足してるんだ。


「……東野くんはいつもカッコいい、よ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「ほ、本気だから。本気でそう思ってるから!」


 目を真っ直ぐ見てくる西宮。鬼気迫るような迫力でどれだけ本気なのか考えただけで目を逸らしたくなる。


「お、おお……あ、ありがと」


 冗談で口にしたことにこうも本気で返されるとこっちが恥ずかしくなるってもんだ。自分のことをカッコいいだなんて思ったことがないからこそ、誰かから。それも、女の子から言われることに耐性がないし。あー、体が熱くなってきた。


「あ……お、お水返さないとだね」

「も、もういいの?」

「う、うん。ありがとう」


 水が返ってきた。西宮が恥ずかしくなることを言ったせいで口の中が乾燥している。飲もう。喉が渇いてしょうがない。ああ。生き返る。


「あ……ああ、ああああああ〜……」


 ただ水を飲んでるだけなのに西宮が変な声を出しながらこっちを見てくる。あんまり見たくないのか目を手で隠して。そのくせ、指に隙間を作って視線は俺を捉えているみたいだ。

 俺、そんなことされるようなことしてるのかな。

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