12
「よーし。今日も頑張ろう」
「おー」
今日も今日とて西宮と二人三脚の練習をする。
初めて練習をしようとした日は移動する練習すら出来ずにグダグダだったものの、数をこなす内になんとか形になってきた。
まだ西宮に触れるのは緊張が残る。
けども、そんなことを言って負けたりするのはしたくない。と割り切って西宮と切磋琢磨して頑張っている。
「あのー」
いざ、足をタオルで結ぼうと西宮がしゃがむと同時に後ろから声を掛けられた。振り返ると南條がいた。それと、もう一人。二人三脚で南條のペアになった……確か、北上だ。俺の名前が書かれた横にそう書いてあった。の、北上がいた。
「どうしたんだ?」
「二人が二人三脚の練習してるの見掛けてさ。私達も一緒に練習しようってことになって。ね?」
「う、うん」
「混ぜてもらってもいいかな?」
俺と西宮は顔を見合わせた。西宮の表情から嫌がっている素振りは感じられない。俺としても嫌ではない。関わったことは今までないけど、一緒に練習することで新しい発見もあるかもしれないからだ。
俺が頷くとしゃがんでいた西宮が立って南條に手を差し出した。
「もちろんだよ。一緒に練習しよう」
「ありがとっ。よろしくね!」
ということで四人で練習することになった。とはいえ、ペアが変わったりする訳じゃないから基本は何も変化がない。俺は西宮と。南條は北上と。
タオルで足を結んだ俺と西宮はグラウンドの向こうまで走っては元いた場所まで戻る。お互いに腰に腕を回したり、掛け声を揃えたりしているお陰でかなり早くなってきた。息が合ってきた証拠だろう。
「わ、わわ。思ってたよりも難しいね、これ。北上くん、もっと体くっつけて」
「そ、そんなこと言われたって」
南條と北上はグダグダだ。出す足は揃ってないし掛け声もない。歩いているだけだというのに今にも転びそうになっている。数日前の自分達を見ているような気分だ。
「二人三脚って簡単そうに見えて難しいんだね。去年見て楽しそうだったからやってみようと思ったのに」
「南條さん初めてなの?」
「経験ないよ。こんなことならもっと早くから練習すればよかった〜ね、北上くん」
「あ、そっ、だね」
「北上くんも二人三脚の経験はない感じ?」
「うん、僕もない」
「そうなんだ。ボクは中学の時に一回だけあるよ。因みに、東野くんも今回が初めてなんだって」
西宮が俺のことも話した。しかも、どういう訳か得意気に。何でだ。二人だって特に俺のことを知りたいとは思ってないはずだぞ。
「へー詳しいんだね」
「ボク達はパートーナーだから」
案の定、どうでもよさそうな南條にまたもや得意気になって答える西宮。だから、何でドヤるんだ?
「コツとか教えてよ」
「いいよ。ボクと東野くんで編み出したオススメのやり方があるんだけど」
西宮が南條に構っているので暇になった。こういう時、どうしたらいいんだろうか。北上とも別に仲が良い訳じゃないし。ていうか、北上もたぶんあんまり話すのが得意じゃなさそうだし。
「北上くんもこっち来てコツ聞こうよ」
「わ、分かった」
西宮から二人三脚のコツを教えてもらおうと北上も向かう。が、南條には近付き過ぎない位置で足を止めた。やっぱり、練習の時も南條を相手にやりづらそうにしていたし、俺と同じタイプなんだろう。女の子と二人三脚って緊張するよな、マジで。親近感覚えるわ。
「俺、ちょっと飲み物買ってくるけど、誰か何かいる?」
聞いてみたところ誰もいらないとのことだった。俺は飲み物を買うために校内にある自販機へと移動する。炭酸が飲みたい気分だったのでブドウ味の炭酸ジュースを購入。開けた時のぷしゅっという音が心地良い。一口飲むと口の中に広がるしゅわしゅわと冷たさでなんだか生き返った気がした。
ぷはーっと気持ちよくなっていると北上がやって来た。
「あれ、北上も買いに来たの?」
「やっぱり、喉が渇いちゃって」
「とか言って、本当はあの空間に耐えれなくなったんじゃないのか?」
「な、何で分かったの!?」
事実だったようで北上が驚いている。俺はニヤッと唇を緩めた。
「俺が北上の立場ならそうだからな」
「東野くんも女の子と話すのは緊張するんだ」
「ちっちっち。女子だけじゃない。人と話すのがあんまり得意じゃない」
「そんな風に見えないけど、そうなんだ」
「顔に出してないだけだ。今だって、こうして話してるけど、何を話そうか頭では必死に考えてる」
「あ、な、何かごめんね」
「謝る必要はない。北上が悪い訳じゃないから。むしろ、俺のことを知った上で話してくれる気でいてくれたら嬉しい。無理強いはしないけどな」
無理に北上と仲良くしたい訳じゃないし、北上にも無理をさせてまで話してほしい訳じゃない。ここで会話が途切れたって俺は気にしない。そこら辺、強いのだ。
「そう言ってもらえると助かるよ。僕も口数が多い方じゃないから」
「そうか。じゃあ、ぼちぼち話す感じでいくか」
「そうだね」
ここで、お互い無言になった。北上は自販機で水を買って飲んでいる。蛇口を捻れば水なんていくらでも出てくるってのにわざわざ買って飲むのって何でなんだろう。
「東野くんって西宮さんと仲が良いの?」
突然の質問。
「急だな」
「人と話すのがあんまり得意じゃないはずなのに、二人三脚のペアを決める時に立候補してたでしょ。普通、僕みたいなタイプは立候補とかしないから西宮さんだけは特別なのかなって」
「あーそういう。そうだな。西宮とは友達だから仲は良い、んだと思う」
西宮しか友達がいない俺にははっきりと答えるのは難しい。異性の友達なんて初めてだし、距離感だって上手く測れない。仲が良いと言ったって喧嘩とかしたことないからだけなのかもしれないし。
それに、西宮が俺のことをどう思ってるかも分からない。嫌われてはないはずだけど、西宮にとって俺はたくさんいる友達の中の一人に過ぎないんだから。
「ていうか、そうであってはほしいけどな。外から見てどうだった?」
「仲良さそうに見えたよ。最近、教室でもよく話してるし。だから、東野くんが羨ましい」
「羨ましい? 北上も西宮と友達になりたいの?」
「ううん、そういうことじゃなくて。友達となら二人三脚も緊張しなくて済みそうだから。それに、相手が西宮さんだし。西宮さんになら気を遣わなくてもいいでしょ」
「北上もそういう感じか」
「そういう感じって?」
「西宮のこと、男子扱いしてるってこと」
「東野くんもそうなんじゃないの?」
まるで、それが当たり前だとでも言いたい様に言われた。これが、西宮の現状。たいして仲良くもないクラスメイトでさえも西宮のことを男子扱いしている。
「俺は違うな。西宮のこと女の子としか見てないから二人三脚だってスゲー緊張するし」
「そ、そうなんだ」
疑うような目を北上から向けられる。それでも、俺は胸を張って堂々とした。周りと言ってることが違ってたって俺はそうなんだ。そんな目を向けられたところで俺の気持ちは変わらない。
「僕はそろそろ戻るけど、東野くんは?」
「俺も戻る」
二人で西宮と南條がいる場所まで歩く。けど、俺と北上の間には会話はない。さっきのことで何となく話しづらくなってしまったからだ。
きっと、北上は南條との二人三脚に乗り気じゃないんだろう。だから、男子扱いされてる西宮となら気を遣わずに出来るから気分がマシだと思って俺を羨んだ。北上の言いたいことは分かる。
けど、俺は北上に話を合わせたりはしない。友達の西宮が聞いて嫌な気持ちになるような会話なんてしたくないからだ。
結局、北上とは一言も話さないまま西宮と南條の元まで戻ってきたんだが――
「絶対そっちの方がいいと思うんだけど。西宮さん的にも。試してみようよ」
「よ、よくないよ」
西宮と南條が言い争いをしていた。
え、こっちもなんか険悪な雰囲気!?
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