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4 ギルドってなんですか?

 ゆっくり街を歩きつつ、考える。


 やっぱり、自由な生活にはお金が必要だよね。


【お!えらいね!!僕はまた、魔王的な行動でいろいろ手に入れるのかと思っていたよ】


 …それやると、面倒なことになるんだよ。

 討伐隊とか、軍隊とか、《救世主ゆうしゃ》とか…。

 どしどし来ると、寝る時間も休憩時間も減るんだよ…。


 私が欲しいのは、ぐうたr…自由な時間なんだもん。


 んでもって、自給自足な生活もいいけど、やっぱり美味しいものはお店に行かなきゃ。


【…君の料理スキルは絶望的だもんね】


 ……


 それから、とにかくこの世界のことを知らなきゃね。


【むしろ、それが一番じゃない?】


「う~ん、なにしよう」


 考えてみたけど、やることが多すぎて、全く思い浮かばない。


【…仕事じゃない?】


 でも、この世界を知らない私ができる仕事なんて…


 それに、ちまちま働くのは面倒くさい。


 あれ?そういえば…


「魔法って、あるのかな?」


【さあ?】


 む!役に立たない使い魔!


「あ、でも、上位世界に穴をあけて呼び出したってことは、魔法だよね」


【そう言われればそうだね】


 おっと!街中で独り言し過ぎて、変な目で見られている。


 自分の中にいる使い魔と話す人はいないのか?


 まあ、日本でも地球でもいなかったし…


 使い魔の声が自分にしか聞こえないから、余計に変だよね。


 面倒くさいことになっても嫌だし、さっさと街を出ようかな。


 街の出口は…


【そう言えば、異世界トリップとしては、「ギルド」なるものがあるんじゃないの?】


「ぎるど?なにそれ…」


 聞いたことない。

 というか…


「詳しいね…」


 なんで?


【だてに、アニメ見てないからね】


 こいつ…


「で?ぎる…?」


【ギルド!異世界の職業安定所!】


 おお!そんな便利な場所が!?


 なんだか、おもしろそう!!!


【この異世界にあるのかは知らないけど】


 どこの世界にもそんなところはあるんだねー。


 よし!誰かに話を聞いてみよう…


 くるっと振り向くと、通行人にさっと視線を逸らされた。




 とりあえず、場所を変えて?







 やってきました、ギルド!!職業安定所!!


 あの後、場所を変えて、人に聞いたら、すぐに教えてくれた。


 目の前の大きな五階建ての建物に目を向ける。


 お城を除くと、街中で見た建物の中で一番豪華で高い!

 ドアの上には剣と木の棒がクロスされた看板がついていた。

 なんだろう?あの棒…

 扉も重厚な感じで、重そうだ。入り口付近にもたくさん剣や1mくらいの変な棒を持った人がいる。


 しかし、他より高い建物!この屋上は気持ちよさそう…

 うっとりと眺めていると…


「嬢ちゃん、入らねえの?」


 振り向くと、一人の20代後半くらいの男の人が立っていた。

 顔の頬部分に大きな傷がある。

 薄っぺらい鉄?の胸当てと皮っぽい籠手を着けていて、腰に刀を下げている。


 持っている人いっぱいいるし、銃刀法違反はなさそう。

 まあ、私、剣とか使えないけど…

 

「はじめてなので、緊張して…」


 うそだけど…


「おお、そうかそうか!じゃあ、案内してやるよ」


 男の人はにっかと笑う。

 なんて優しい人!と感動するところなんだろうが、関わると面倒な予感しかしない…

 こういう押しつけがまし…面倒見がよさそうな人は、何かと絡んできそうで嫌だ!


「結構」


 きっぱり言うと、男の人は呆気にとられた顔をしていた。

 チャンスとばかりに、さっさとギルドのドアを開けて中に入る。


 中は割とごった返していた。


 うえ!満員電車…!!

 満員電車がいやで早く登校したら、異世界に来て、満員電車のような場所に来る羽目になるなんて…

 やっぱり、ラッキーカラーのものを持ってなかったから…

 でも、幸せなぐうた…自由な生活のためには、お金は必要!

 それに、「冒険者?」(※使い魔に聞いた)おもしろそう!!

 気を取り直して、中に足を踏み入れる。


 大きい建物と思ったのに、これだけ人が入ると、狭くなるのか…。

 奥にカウンターがあって、そこに並ぶのに行列ができているようだった。

 受け付けは、4人。そこに人がいっぱい並んでいる。他の人は壁にたくさん貼られた紙を見ていたり、他の人と話をしていたり…

 上に目をやると、二階までは吹き抜けになっていて、上からいい匂い。

 二階は食堂かな?

 

 入って一瞬私に目を向けてきた人もいたけど、全く気にしない。

 やっぱり、変な服装…。これがこの世界の普通なのかな?

 戦国時代の鎧みたいなのを着ている人、フード付きの長いびろびろっとしたコートを着ている人…

 色は地味なものばっかだけど、民族衣装みたいなのを着ている人もいるし…

 変な木の棒を持っている人もいる。だから、あの棒なんだ…?


 これ…並ぶの?

 なんだか、すでに嫌になってきた…

 …帰るか?

 もう、魔王的なやり方でもいいんじゃない?

 そんなことを考えていると…


「こっちは依頼受付。新規入会は一番左」


 後ろから声をかけられて、振り返るとさっきのお兄さんが立っていた。

 この人、背が大きいな。

 私の視線ににかっと笑う。

 見ると、一番左は人がまったくいない。並ばなくてもよさそう。


【お!お兄さん!!あなたはたった今世界を救ったよ】


 この使い魔めっ!一言余計だ!!


「…どうも」

 

 少し会釈して、左の列に向かう。

 こっちは空いてるな。

 お兄さんがついてくる。


 …この人、なぜ付いてくるんだ?

 もういいよ!親切にどうも!!


 お姉さんに声をかけようとして、一時停止する。

 あ、犬耳…


 お姉さんは犬の耳をしている。


【おお!萌えるよね】


 なんだ?萌えって?


「あの…登録したいんだけど」


 そう言うと、お姉さんはこんにちはとにっこりとほほ笑む。

 そして、ふと目線が上に行き…


「あら?ネイドさん。この子と知り合いなの?」


 私の後ろの男に声をかける。


「おう!さっきそこで、困ってるみたいだったからな」


「相変わらずね」


 お姉さんは、仕方ないわねえと微笑ましげに笑う。

 いや!本当に余計なお世話ですよ。


「ボク、よかったわね?このお兄さん、ちょっといかついけど、いい人なのよ」


【ボク!?男の子に間違われているよ!!】


「おいおい!!この子女の子だろ!?」


「え!!?うそ!!ごめんなさい!」


 お姉さんがすごい勢いで謝ってきた。

 別に気にしていないけど…

 髪だって短いし…私服でいたら、日本でも間違われるくらいだったよ。


【昔は伸ばしてたよね?】


 だって、洗うの面倒くさい…


「ほら!間違えるから、怒ってるじゃねーか!」


 怒ってないし!


【君の表情が乏しすぎて、怒ってるようにしか見えないんだよ】


 だから楽しければ笑えって言ったのに…、と使い魔がぶつぶつ言ってる。

 うるさいうるさい!

 笑えない人間に言うな!!


「そんな事より、登録できる?」


 私がそう言うと、2人は呆気にとられた顔をしていた。

 お姉さんが、そ、そんなこと?と呟いている。


 どうでもいいから、早くお金が稼げる仕事をしたい!

 お腹空いてきた!!


 寝るところは…もう決まっているけど、食べ物は欲しい。

 …お!もしダメなら、食い逃げと言う手もあったか…

 いや、この世界は先払いっぽかった。途中の飲食店は外から見ると、全部先にお金を払っていた。

 となると、ちょこっと魔法で…いや、この世界の魔法レベルがわからない。

 まあ、下位世界なんで、そんなに上のレベルではないだろうけど…


 あ!魔法、使えるのか試してなかった!

 いろいろ、失敗だな。まあ、いいや!


「じゃあ、登録をしましょう」


 お姉さんが気を取り直して、私に向き合った。


「ようこそ、冒険者の世界へ。


 これよりあなたは、ギルドに所属する冒険者として、新たな世界に旅立つことになります。


 命を懸ける冒険の数々、富も、名声も、手に入れられるかはあなた次第。


 ただし、時として大切なものを失うこともあります。

 

 それは、手にした富かもしれません。名声、仲間、家族、もしくは…命さえも…


 何もかもを失ってしまうかもしれません」




「それでも、あなたはこの世界へ足を踏み入れますか?」




 これ、決められた質問っぽいな。


「うん」


 頷くと、お姉さんは一枚の用紙を取り出す。

 

「この紙に必要事項を書いてくれるかしら」


 受け取って、目を通す。

 …うん!読めない!


 私が読めるのは、地球の言語だけだよ。

 言葉はなぜか通じるけど…


「読めないので、代筆してもらえない?」


 あ!言ってから、日本みたいに識字率が高い可能性を考えてなかったことに気付いた。

 そう思ったけど、お姉さんはにこやかに了解してくれた。

 ほっとした。

 となると、識字率はそんなに高くないのかな?


「名前は?」


「ベル…あ、違う。ミュウ」


 危な!間違えそうだった!


「ミュウね。年齢は?」


「…16才」


【お!ちゃっかり大幅なサバ読み】


 うるさい!!実年齢は明らかにおかしいでしょ!!


「16っと。出身は?」


「…二ホン」


【え~!!】


 ムシムシ!


「聞いたことない国ね。二ホンっと。職業は?」


 職業?なに?職業って…!

 学生??魔王???さすがにそれはまずいよね?

 どっちを答えても、マズイ予感しかしないけど??


「剣を持ってないから剣士じゃないわよね?杖も持ってないし…魔法使いでもないのかしら?」


 !!そういうことね!あの棒は杖!?

 

 …杖ってなに?おじいちゃんとかが持ってるやつ?


【魔法使いの剣みたいなものだよ】


 なるほど!あれを振り回して戦うこともあるってことね?

 じゃあ、なくてもいいよ!接近戦はせずに、魔法でぶっ飛ばせばいいもん。


【ん?なんか違うよ。あれは…】


「…魔法使いです」


「あら?そうなの?杖は??」


 杖!?やっぱり杖がないと、魔法使いじゃないの!?

 この世界では、杖がないと、魔法が使えないのかもしれない。

 となると、早めに手に入れないと…


「…今は持ってない」


「そうなの?宿に置いてきたの?でもこの後、練習場で魔法を見せてもらうのよ?」


 く!崖っぷち…!!


「レンタルでもいいなら、あるけど、あまり魔石の質が良くないから自分の力を100%出せないわよ?それでもいいかしら?」


 おお!天の助け!!


【ぶっ!!魔王が天の助けとか…!!!】


 使い魔が噴出した。うん…。私もおかしいなと思ったよ。


「レンタルでいいので、貸してください」


 さて、この世界の魔法はどんなレベルかなぁ?

 

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