第1話 異世界バニー騎士姫がやってきた(5)
翌朝。
雀の鳴き声で目が覚めた。
俺はぼんやり天井を見上げる。
「……あ」
思い出した。
バニー騎士姫。
怪物。
意味不明な力。
全部夢じゃなかった。
俺は慌てて身を起こす。
布団を見る。
銀髪の少女は、まだ眠っていた。
朝日がカーテンの隙間から差し込み、白い肌を淡く照らしている。
寝顔は本当に無防備だった。
というか、かわいすぎる。
「……くっそ」
思わず顔を覆う。
昨夜は大変だった。
気絶した美少女を自室へ運び込み、そのまま一晩。
普通に考えて状況がヤバい。
しかも相手はあの格好だ。
正直。かなり危なかった。
理性との戦いだった。
「いやいやいや……」
俺は首を振る。
何もしてない。
本当にしてない。
危なかっただけだ。
その時。
「……ん」
少女の睫毛が震えた。
ゆっくり目が開く。
紅い瞳がぼんやりと天井を映し――。
数秒後。俺と目が合った。
「…………」
「お、おはよう」
「ひっ」
悲鳴だった。
少女は飛び起き、そのまま布団を抱えて後退する。
「な、ななな……!?」
ガタガタ震えている。
涙目だ。
「ここどこだ!? なぜ私は寝台に!? 貴様なぜそんな近くにいる!?」
「いや俺の部屋だから!」
「やはりかぁっ!!」
絶望みたいな声を上げた。
ひどい。
「ま、待て! 落ち着け!」
「お、落ち着けるか!!」
少女は布団を胸元まで引き上げる。
完全防御態勢。
「わ、私は気絶していたはず……!」
「そうだけど」
「ふ、ふらちなことをされたのでは……!」
泣きそうだった。
紅い瞳が潤んでいる。
「してない!!」
俺は即座に否定した。
「本当に何もしてないから!」
「ほ、本当か……?」
「むしろ必死で我慢したわ!」
「え」
しまった。
口が滑った。
少女が固まる。
「……我慢?」
「あ」
沈黙。
数秒後。
少女の顔が一気に赤くなる。
「な、ななな……!」
「いや違う! 違わないけど違う!」
「最低だぁっ!!」
枕が飛んできた。
顔面直撃。
「痛っ!?」
「変態! 欲望濃縮体! 世界の厄災!」
「言い方!!」
ひどすぎる。
だが少女はまだ涙目でこちらを睨んでいた。
耳まで真っ赤だった。
俺はため息を吐く。
「だから何もしてないって」
「……本当に?」
「誓う」
少女はじっとこちらを見つめた。
やがて小さく息を吐く。
「……少しだけ信用する」
「その“少しだけ”便利だなお前」
すると少女は、むっとした顔で言った。
「当然だ。貴様は危険人物なのだから」
「そんな扱い!?」




