第1話 異世界バニー騎士姫がやってきた(2)
剣が閃いた。
「っ――!?」
反射だった。
俺はとっさに後ろに飛ぶ。
銀色の刃が鼻先を掠めた。
「……は?」
理解が追いつかない。
「ま、待て!!」
「動くな!」
バニー騎士姫は再び踏み込んでくる。
速い。
俺は慌ててコンビニ袋を投げ捨て、バッグを盾みたいに構えた。
次の瞬間。
ズバァッ!!
「うわぁっ!?」
バッグが真っ二つになった。
中身が散らばる。
冷や汗が噴き出す。
本物だ。
本物の剣だった。
ヤバい。
本当に死ぬ。
彼女の紅い瞳も揺れていた。
迷いがある。
でも剣は止まらない。
「……っ!」
彼女は唇を噛み、さらに一歩踏み込む。
白銀の刃が振り下ろされる。
止まって!
心の中で叫ぶ。
そして思わず目を閉じる。
死ぬ。
こんな意味不明な田舎道で、コスプレ美少女に斬り殺される。
人生の締めくくりとして最悪すぎる。
だが――。
「……え?」
痛みが来ない。
恐る恐る目を開ける。
剣先が、目の前で止まっていた。
目の前。
あと数センチ。
届きそうなのに、届かない。
「な……」
彼女が絶句している。
ギギギ、と力を込める。
だが剣は進まない。
まるで透明な壁に阻まれているみたいだった。
「なんだ、これは……?」
彼女の声が震える。
一度距離を取り、再び剣を構え直した。
「はぁっ!!」
鋭い一閃。
何もない空間で火花が散った。
「っ!?」
目が見開かれる。
さらに連撃。
二撃、三撃、四撃。
白銀の剣が高速で振るわれる。
だが全部、俺に届く寸前で止められた。
見えない何かに弾かれている。
俺の周囲に、透明な壁でもあるみたいに。
「そんな……」
彼女は青ざめていた。
「通れ……! 通れぇっ!!」
さらに踏み込もうとした。
「はぁああっ!!」
次の瞬間。
ボゴォン!!
「ふぎゃっ!?」
変な声とともに、少女が吹っ飛んだ。
ドサァッ!!
仰向けに倒れる。
「いっっったぁ……!」
涙目でうずくまる。
なんだ今の。
俺も意味が分からない。
彼女は、ふらふらしながら立ち上がろうとした。
「くっ……まだ……!」
その瞬間。
もう動かないで。
そう、念じた。
「――っ!?」
少女の体がビタッと止まる。
「え?」
そのまま再び地面へ押し付けられた。
「きゃっ!?」
ぺたん、と手足をついた格好になる。
まるで上から巨大な力で押さえ込まれているみたいに。
「な、なんだこれはっ!?」
少女が必死にもがく。
だが動けない。
「う、動かん……!」
俺も混乱していた。
「貴様、何をした!?」
「知らねぇよ!」
本当に知らない。
でも。
試しにもう一度念じる。
起きろ。
すると押さえつける力が消えた。
「わっ!?」
少女が慌てて立ち上がる。
今度は距離を取って剣を構えた。
紅い瞳が警戒で揺れている。
「精神支配系統……? いや、ありえない……」
ぶつぶつ呟いていた。
俺は俺で頭を抱えたい。
なんなんだこれ。




