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コメント欄が見えるんですが

入学式が始まっていた。


巨大な講堂には、何百人もの新入生が並んでいる。


天井には魔力灯が浮かび、壁には巨大な魔法陣。

まるで映画の世界だった。


けれど

ルナリア・ノクス

の意識は、それどころではない。


視界の端に、ずっと文字が流れている。


【ガチ異世界転生じゃん】

【夢?】

【これ配信?】

【コメント読める?】


(いやいやいやいや……)


ルナリアは必死に平静を装う。


でも完全にパニックだった。


前世で見慣れた配信コメント欄。


それが今、空中に半透明で浮かんでいる。


しかも誰にも見えていない。


「どうしたの?」


隣の赤毛の少女が小声で聞いてくる。


彼女の名前は

ミリア・フェルン 。

ルナリアの寮のルームメイトらしい。


「な、なんでもない……」


【声かわいい】

【無理してる感じある】

【大丈夫かな】


コメントに心臓が跳ねる。


まるで見透かされているみたいだった。


その時。


講堂の中央に、白銀のローブを纏った女性が現れる。


「新入生諸君。ようこそ、

アストレア魔法学院

へ」


学院長だった。


彼女が杖を掲げると、巨大な魔法陣が空中に展開される。


歓声が上がった。


「これより適性測定を行う」


新入生たちが順番に前へ出て、魔法を発動していく。


炎。

氷。

雷。


派手な魔法が飛び交うたび、会場が沸いた。


そして。


「次。ルナリア・ノクス」


空気が少し変わる。


「音声魔法の子だ」

「珍しいな」

「弱いやつじゃん」


ひそひそ声。


前世の記憶が胸を締めつける。


期待されない視線。

値踏みする空気。


ルナリアは震える手で杖を握った。


(失敗したらどうしよう)


(また笑われる)


(怖い)


コメント欄が流れる。


【がんばれ】

【深呼吸】

【ルナちゃんならいける】

【見てるよ】


その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


ルナリアは静かに息を吸う。


そして、自然と口を開く。


「――響け。《エコー・ライト》」


その瞬間。


声が光になった。


淡い銀色の波紋が講堂全体へ広がっていく。


天井の魔力灯が一斉に輝き、生徒たちの髪がふわりと揺れた。


空気が震える。


誰も聞いたことのない、美しい魔法だった。


静寂。


そして次の瞬間、講堂がどよめいた。


「なに今の……」

「音声魔法であんな出力……?」

「ありえない」


学院長すら目を見開いている。


ルナリア自身も呆然としていた。


(え……こんな威力出した覚えないんだけど!?)


するとコメント欄が高速で流れ始める。


【鳥肌立った】

【演出神】

【スパチャ:金貨500枚】

【同接3万人突破】


同時に。


ルナリアの身体の奥に、熱が流れ込んだ。


魔力だった。


「……え?」


力が、増えている。


視聴者が増えた瞬間に。


その時、学院長がゆっくり口を開く。


「……面白い」


その視線は、まるで未知の生物を見るようだった。


そしてルナリアはまだ知らない。


この世界で、“感情を増幅する魔法”が禁忌とされていることを。

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