魔法選びと召使い
2つしか魔法を覚えられないなんて………。
「しかたないだろう。あまり私の力を混ぜすぎると、君の魂まで変質してしまうんだ。割り切ってくれ」
「魂が変質って!?え?ほんとに戻れるんですよね!?」
「大丈夫だ。今のところはね」
「今のところって……。まぁ、いいや。とりあえずは大丈夫なんですよね?」
「あぁ、問題ない」
そう言うと、お姉さんは立ち上がった。
「いつまでも君の疑問に付き合ってちゃ話が進まない。魔法というのは運命で繋がった魔導書と出会うところから始まる。まぁ、安心してくれ」
―――パァン
お姉さんが手を叩くと部屋の風景が変わった。先程までは客室のような部屋だったのに、いきなり周囲は本で囲まれている。
「ここなら、まず間違いなく君に合った本があるだろう。合わない本は読むことができない。頑張って理想に近いものを探しておいで」
お姉さんは再び近くにあった椅子を引き寄せ座った。
「ここで本でも読んで待ってるよ」
まぁ、とりあえずは手当たり次第に探していくしかないのだろう。
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あれからどれだけの時間が過ぎたことだろうか。
「ざっと8時間といったところかな」
相変わらずナチュラルに心を読んでくるお姉さんは置いておいて。この8時間、部屋中の本をひっくり返して漁って、見つかった読める本はたったの5冊。読めない本と言われてもよく分からなかったが、流石はファンタジー。文字が躍りだしたのだ。
「思ったよりは多く見つけられたみたいだね。その中から選ぶってことでいいかい?」
「まぁ、ほとんど見ても合うのはこれだけしかなかったので。」
俺は大事に抱えた魔導書を机に置いた。
「それぞれどういう魔法なんですか?日本語じゃないのでいまいち分からなくて」
「ほう、よかったね。最後まで読んで呪文を諳んじてしまうと勝手に一枠消費して覚えてしまう」
はぁ……。またかぁ。
「大事なことは先に説明してくださいよっ!」
「それはすまない。聞かれなかったものでつい、ね。確かに表紙こそ読めないだろうがページを捲れば内容は頭に浮かんできただろう?よく読まなかったものだ」
よかった。限られた枠をよりよいものとしようとしたおかげみたいだ。まぁ、大丈夫だったから許すとしよう。
「さて、ではそれぞれの魔導書に記された魔法の名前と効果を教えていこう。」
「お願いしますッ!」
あ〜。すごいワクワクしてきたっ!俺、ファンタジーしてるっ!ここでチート魔法引いて異世界無双の展開キタコレ!
「じゃあ左から順にこの魔導書から説明していこう」
お姉さんがまず手に取ったのは紫色の表紙の魔導書。少し怖い雰囲気の魔導書だ。
「この魔導書で覚えられる魔法の名前はゼルプスト・アウフ・プフェルング。日本語にすると自己犠牲だ。効果は他者のダメージをもらい受けるというもの」
「う〜ん、イマイチかなぁ〜」
お姉さんはまた次の魔導書を手に取った。
「次に、この魔導書はホーリーライト。聖なるなんて入っちゃいふがなんの効果もないただの光る玉を生み出すものだ。」
「まぁ、使えなくもないのかな?攻撃できるやつがい〜な〜」
お姉さんは視線を右に動かし、眉をひそめた。
「あとの3つは使えないね。禁書、禁書、強力すぎる魔法だ」
「え?強力な魔法ならいいんじゃないですか?俺、それがいいです!」
「私の力を混ぜすぎると魂が歪むと話しただろう?こんな魔法を使うというのなら、私から魔力を借りる必要がある。その度に私の力は君に流れ込み、使いすぎればもとに戻れなくなる。」
「はぁ、分かりました。なら必然的に二択なんですね。」
運命とか言ってたのに、合わないやつばっかりじゃないか。
「仕方ないよ。君の魂は君のものだが体は私が作ったものだ。魔力なんかは筋力と同じでその体ごとに決まっているものだからね。そもそも5冊だけというのが少なすぎるんだよ。異世界ではこんな書斎で魔導書を漁れるのなんて、それこそ貴族くらいのものさ」
そんな事言われたってどうしようもない。魔法への適性は高くなかったと諦めるしかないかぁ……。
「はぁ………。」
「そう落ち込むこともないさ。どんな力も使いよう次第だ。それに自己犠牲はレアリティの高い魔法だよ。重宝することになるだろう。」
「まぁ、特別ならいいか……。もうじゃあ覚えていっていいんですか?」
お姉さんは首を縦に小さく振った。
「もちろん。覚えるのは難しくないが少しばかり時間がかかる。がんばってくれ」
「分かりました!」
少しぱっとしない魔法達ではあるが、地球じゃできないことであるのも確かだ。やる気出てきたぁ!
「魔法を覚える方法は魔導書に書かれてある理論、解釈の理解と呪文の暗記だ。さそっく始めてくれ。と、言いたいところだが時間もかなり経ってしまった。一度食事にしよう」
―――パァン
お姉さんが再び手を叩くと部屋は最初の客室ではなくリビングへと変わっていた。
テーブルには、既に色とりどりの料理が並んでいる。そのどれもができたてのようで僅かな湯気が残っている。
「お待ちしておりました。ご主人様、客人殿。」
「うわぁっ!」
突然、聞こえてきた真後ろからの声に驚いて振り返って見ると、表情の薄い綺麗な女性が立っていた。
「どうぞ、お召し上がりやがりください」
女性のことは気になったが、取り敢えずは促されるままに席についた。




