町を作るために
「じゃあ、アイ」
俺はこれから作られる町の図を眺めながら考える。
「レンガやU字溝とか、必要な物は作り続けていた方がいいよな?」
『はい』
アイは即答した。
『町の整備が始まれば、大量の建築資材が必要になります』
「だよなぁ」
家を建てる。道を作る。排水を整備する。
市場を作る。倉庫も必要になる。
考えてみれば、これから必要になる物はかなり多い。
「今までは、必要になったら作るって感じだったけど……」
『今後は、必要になる前に在庫を確保することを推奨します』
「なるほど」
俺はレンガが積まれている場所を見る。
まだかなりの量がある。
だが、町を作るとなれば、これだけでは足りないだろう。
「U字溝もそうだな」
『はい』
「セメントも」
『はい』
「木材も必要になる」
『はい』
「鉄もいる」
『はい』
「……作る物が多いな」
『町の建設には、それだけ多くの資材が必要になります』
「だよなぁ」
俺は少し考える。
「なら……大量生産と行きますか」
『はい』
「急に大量には作れないからな」
『その通りです。今から少しずつ生産量を増やしていけば、町の整備が始まる頃にはある程度の在庫を確保できます』
「よし」
俺は立ち上がる。
「じゃあ、頼みに行くか」
◇
まず向かったのは、レンガを作っている場所だった。
「おーい!」
「誠殿か」
「ちょっと頼みがある」
「何だ?」
俺は周囲のレンガを見る。
「これから、レンガをもっと作ってほしい」
「もっと?」
「かなりの量が必要になる」
「何に使うんだ?」
「家を増やす」
「家?」
「それだけじゃない」
俺は町の構想を簡単に説明する。
「市場も作る。倉庫も必要になる。工房も増える。道路も整備する」
職人は目を丸くした。
「……それだけ作るのか?」
「作る」
「こりゃ、レンガがいくらあっても足りんな」
「だから今から作っておきたい」
職人は笑った。
「分かった。任せてくれ」
◇
次はU字溝を作っている場所。
「これも、もっと必要になる」
「やっぱりか」
職人が苦笑する。
「町を作るなら、排水も増えるからな」
「そういうこと」
「分かった。型を増やす」
「頼む」
『同じ型を複数用意することで生産量を増やせます』
「だってさ」
「なるほどな」
職人はすぐに別の型を作り始めた。
◇
さらにセメント。
砂。砂利。石灰。木材。鉄。
必要な材料を一つずつ確認していく。
「……」
俺は途中で立ち止まった。
「なんか、工場の発注をしてる気分だな」
『実際に生産計画を立てています』
「そう言われると納得するな」
今までは、必要な物をその場で作っていた。
今は違う。
これから何が必要になるのかを予測して、先に作る。
「村の段階から、少しずつ変わってきたな」
『はい』
「生産計画まで必要になるとはな」
『人口と生産量が増えれば、当然必要になります』
「なるほど」
俺は村を見渡す。人が増えた。仕事が増えた。
作る物も増えた。そして――これから町を作る。
「よし」
俺は気合いを入れ直す。
「まずは材料を作るところからだな」
『はい』
町は、いきなり完成するわけではない。
一つのレンガ。一本のU字溝。
一袋のセメント。一本の木材。
一つ一つを積み重ねていく。
それらが、やがて――家になり。
道になり。市場になり。町になっていく。
「じゃあ、みんな頼むぞ!」
「おう!」
村のあちこちで、再び作業が始まった。
町を作るための準備が、静かに始まった。




