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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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知識が交わる村

専門家たちが村に来てから、数日が経った。

それぞれが、自分の専門分野を中心に村を見て回っている。

最初に変化があったのは、植物の専門家だった。


「この薬草ですが……」


薬草畑に植えられた植物を、一つずつ確認している。


「この土では、少し合わないですね」


「え?」


俺は思わず聞き返した。


「葉の状態を見る限り、育たないわけではありません」


「ただ、もっと適した土があります」


「どこにあるんだ?」


「この村の北側です」


「分かるのか?」


「植物を見れば、ある程度は」


俺はアイを見る。


『土壌の成分を比較すれば、より正確な判断が可能です』


「だそうだ」


「……?」


「気にしなくていい」


『専門家に任せましょう』


「そうだな」


植物の専門家は、別の場所へ薬草を移していく。


数日後。


「こちらの方が、葉の色が良いですね」


「本当だ」


「水分量も少し変えた方がいいでしょう」


『観察結果と一致します』


「アイも同じだって」


「そのアイという魔道具……便利ですね」


「まあな」


この世界の植物に関する知識。

アイによる分析。

そして実際に植物を育ててきた村人たち。

それぞれの知識が重なり始めていた。



一方、建築の専門家はU字溝を見ていた。


「これは素晴らしいですね」


「だろ?」


誠は少し得意げになる。


「製造もしやすい。設置も簡単。蓋をすれば上も使える」


「よく考えられています」


「だよな」


ところが、専門家はU字溝をしばらく眺めた後、首を傾げた。


「ただ……」


「ん?」


「この勾配では、少し流れが悪くなるかもしれません」


「……え?」


「水は流れます。ですが、場所によっては流速が落ち、泥が溜まる可能性があります」


俺はU字溝を見る。


「なるほど……」


『確かに、その可能性があります』


「アイまで認めるのか」


『専門家の指摘は合理的です』


「じゃあ、勾配を変えるか」


「その方が良いでしょう」


専門家は地面に簡単な図を描く。


「こちらを少し高くして、こちらへ向けて……」


「なるほど!」


俺は思わず声を上げた。


「俺たちはU字溝そのものを考えていた。でも、専門家は水がどう流れるかまで見ている」


「そういうことです」


「これは勉強になるな」


専門家も笑う。


「私も、このU字溝は参考になります」


「え?」


「こちらでは、このような発想はあまり見ませんから」


「お互い様ってことか」


「はい」



そして針子たち。

こちらは、村人たちと一緒に服を作っている。


「この服ですが」


一人の針子が村人の服を見る。


「ここを少し変えると、動きやすくなります」


「でも、この布だと切ったら余りが出るぞ」


「なるほど……」


針子が布を広げる。


「では、こちらの形にしましょう。それなら余りが少ない」


「そうですね」


別の村人が口を挟む。


「こっちの布なら、もっと安く作れるぞ」


「それなら……」


針子が考える。


「この形に変えれば、もっと安くできます」


「本当か?」


「はい」


村人たちは顔を見合わせる。


「やってみよう」


「おう!」


そこからは、専門家と村人が一緒になって布を切り始めた。


「この縫い方なら丈夫です」


「でも、ここは時間がかかる。なら、この部分だけ別の縫い方に」


「それなら早いな」


「では、それでいきましょう」


誠は少し離れたところから、その様子を見ていた。


「……面白いな」


『はい』


「専門家が全部正しいわけじゃない」


『その通りです』


「村人にも、実際に作ってきた経験がある」


『専門知識と現場経験が組み合わさっています』


「これが、知識を合わせるってことか」



そして数日後。


誠が広場を歩いていると、タタがやってきた。


「誠殿」


「どうした?」


「少しお話が」


「何だ?」


「専門家の方々ですが……」


「うん?」


「帰らないそうです」


「……え?」


「この村に、もう少し残りたいと」


「本当に?」


「はい」


植物の専門家は、薬草畑を眺めながら言った。


「この土地なら、まだ調べられることがたくさんあります」


「薬草の栽培方法を確立してみたい」


建築の専門家も続く。


「この村の建築技術は興味深い。U字溝もそうですが、レンガとセメントを使った建築を、もう少し試してみたい」


針子たちも頷く。


「この村の布作りも面白いです。まだ改良できるところがたくさんあります」


「それなら……」


誠はタタを見る。


「住む場所が必要だな」


「はい」


「家族を呼びたいという方もいます」


「家族も?」


「はい」


「……」


俺は村を見渡した。

少し前まで、ここは開拓村だった。

生き残ることだけを考えていた。


それが今では、新しい人が来て、仕事が生まれて、専門家まで住みたいと言っている。


「専門家の定住か……」


『人口増加がさらに見込まれます』


「また人が増えるな」


『はい』


「でも……」


悪い気はしなかった。

むしろ嬉しい。


「家を作ろう」


「え?」


「住みたいって言ってくれてるなら、住んでもらえばいい」


タタが笑う。


「そう言うと思っていました」


「それに、専門家が住めば村の知識も増える」


『合理的な判断です』


誠は村を眺めた。

レンガの建物。整備されていく水路。

薬草畑。広がる農地。増えていく人。

そして、新しく作られる家。


「なあ、アイ」


『はい』


「これ……もう開拓村じゃないんじゃないか?」


『現在の人口、建築物、生産量、産業を考慮すると、村としてはかなり発展しています』


「だよな」


『町へ向かう段階に入っていると考えられます』


「……町か」


俺は笑った。

最初は、ただ生き残るためだった。


食料を作った。水路を作った。

道具を作った。保存食を作った。


それがいつの間にか、外へ物を売るようになった。


人が増えた。専門家が来た。


そして今度は、その人たちがここに住みたいと言っている。


「……本当に、変わったな」


『はい』


「俺たちが作った村じゃなくて……」


俺は周囲を見る。


村人たちが働いている。

専門家たちが話し合っている。

子供たちが走り回っている。


「みんなで作ってる場所になったんだな」


『その通りです』


誠は、少しだけ笑った。


開拓村だった場所は――いつの間にか、町へ向かって歩き始めていた。

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