知識を持つ者
『誠様。一つ提案がございます』
「提案?」
『はい』
アイの画面が光る。
『タタ様に、専門的な知識を持つ者をこの村へ呼べないか確認することを推奨します』
「専門的な知識を持つ者?」
『はい。例えば植物に詳しい者や、建築に詳しい者などです』
「植物博士とか?」
『そのような存在です』
「なるほどな……」
俺は薬草の植木鉢を見る。
今は図鑑を読み、村人から話を聞き、アイと一緒に調べている。
それでも、分からないことは多い。
「専門家から直接話を聞ければ、時間の短縮になるか」
『はい』
「こっちの知識と、この世界の知識を合わせれば?」
『ゼロから始めるより、数歩先から始めることが可能になります』
「確かにな」
俺たちが持っているのは、地球側の知識。
この世界には、この世界で積み重ねられてきた知識がある。
それを組み合わせれば――
「今までより早く進められるかもしれないな」
『その通りです』
「よし。聞いてみるか」
◇
「タタさん」
「何でしょうか?」
「専門的な知識を持っている人って、この辺りにいるかな?」
「専門的な知識を持つ者ですか?」
「そう。何の専門でもいいんだけど」
タタは少し考える。
「そうですね……ここでしたら、植物に詳しい者。建築に詳しい者。それと、針子もいるとかなり変わるかもしれません」
「針子?」
『衣服を作る専門職と考えられます』
「なるほど」
服を作る技術者か。
確かに、村でも服は作っている。
だが、専門家が来れば、もっと効率よく作れるかもしれない。
「植物、建築、針子……他にもいる?」
「探せばいると思います」
タタは少し考えた。
「ただ、専門家をここまで呼ぶとなると……」
「何か問題がある?」
「距離と費用ですね」
「ああ……」
「それに、こちらへ来てもらう理由も必要になります」
「なるほど」
タタは少し笑う。
「ですが、誠殿の村には興味を持つ者もいると思いますよ」
「そうなのか?」
「はい。最近、こちらから送られてくる報告が面白いものばかりですから」
「……報告?」
「はい」
「誰が報告してるんだ?」
タタは少しだけ目を逸らす。
「それは……まあ、色々と」
「……」
『誠様』
「ん?」
『恐らくタタ様は、かなり頻繁に村の情報を送っているものと思われます』
「やっぱりか」
タタは何も言わず笑っている。
「まあいいか」
今となっては、村を知ってもらうこと自体は悪くない。
「じゃあ、専門家を呼べるか聞いてみてくれるか?」
「分かりました」
タタが頷く。
「植物に詳しい者。建築に詳しい者。針子。この辺りを中心に探してみます」
「ありがとう」
「いえいえ」
タタはすぐに準備を始める。
「また仕事が増えたな」
『はい』
「でも……」
俺は薬草の植木鉢を見る。
「知ってる人に聞いた方が早いもんな」
『その通りです』
今までは、俺とアイと村人たちで少しずつ知識を増やしてきた。
それはそれで大切なことだった。
だが、世界にはすでに長い年月をかけて知識を積み重ねてきた人たちがいる。
ならば――その知識を借りればいい。
「俺たちだけで全部やる必要はないんだな」
『はい』
「知っている人に聞く。出来る人に任せる。それで村全体が成長する」
『非常に合理的です』
「合理的、ねぇ」
俺は苦笑した。
でも、確かにその通りだった。
これからの村は、誠一人の知識だけで発展する場所ではない。
外の世界から知識を招き入れ、この村にある知識と組み合わせていく。
その第一歩が――専門家を呼ぶことだった。




