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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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薬草の増やし方

「うーむ……枯れてはいないよな?」


俺は植木鉢に植えた薬草を一つずつ確認していく。


葉の色も悪くない。茎も倒れていない。


「今のところ大丈夫そうだな」


『はい。順調に成長しているように見えます』


「それなら良かった」


俺は植木鉢を眺めながら、ふと思った。


「あの図鑑には、これらがどうやって増えるかまで書いてあったのか?」


『いいえ。すべての植物について記載されているわけではありません』


「なるほど」


『まず、この傷を治すために使われている薬草ですが、こちらは根から増えるようです』


「根からか」


俺は薬草の根元を見る。


「なら、少し落ち着いてから、もう少し大きめの鉢に移すか」


『はい。根の成長に合わせて植え替えることを推奨します』


「それで株を分けられるなら、数も増やせそうだな」


『可能性があります』


「この腹痛の時に使う薬草は?」


『こちらは種から増える植物です』


「なら、花が咲くってことだから……」


俺は葉や茎を眺める。


「今は様子見か」


『はい。開花と結実を確認する必要があります』


「なるほど」


俺は隣の植木鉢を見る。


「こっちは?」


『不明です』


「不明?」


『図鑑にも繁殖方法についての詳しい記載がありません』


「そうか……」


俺は薬草をじっと観察する。


「なら、よく観察するしかないな」


『はい。その方が良いと思われます』


「まあ、普通に考えれば種や根からだよな?」


『基本的には、その考え方で問題ありません。ただし、元の世界の常識に捉われすぎない方が良いでしょう』


「まあ、確かにな……」


この世界には、地球と同じ植物もある。

似た植物もある。

そして、地球には存在しない植物もある。

魔法だって存在している。


「地球と同じように考えて、間違ってたら困るもんな」


『はい』


「なら、分からないものは分からないまま、観察する」


『その方針を推奨します』


「よし」


俺は記録用の紙を取り出した。


「じゃあ、これも書いておくか。植物名。採取場所。植えた日。現在の状態。繁殖方法。分からないものは、分からないと書く」


『非常に良い記録方法です』


「こういうの、ちゃんと残しておいた方がいいよな」


『はい。今後、同じ植物を育てる際の重要な資料になります』


俺は一つずつ記録していく。

今までは、村人から聞いた知識を頼りにしていた。だが、これからは自分たちでも知識を積み重ねていく。


「図鑑に書いてあることを読むだけじゃなくて……」


俺は植木鉢を見る。


「俺たち自身の図鑑を作っていく感じだな」


『その通りです』


「それなら、分からない植物があっても面白いな」


『はい』


「どうやって増えるのか。どんな環境が好きなのか。どんな使い方ができるのか。一つずつ調べていけばいい」


『その方針が適切です』


俺は笑った。


「急いで答えを出す必要もないしな」


村には、もう少しだけ時間がある。

食料もある。水もある。

冬までまだ時間もある。


だからこそ――


「観察する余裕があるってことだな」


『はい』


「昔なら、薬草を育てるなんて考えてる余裕もなかった」


『現在は、それが可能になっています』


俺は植木鉢を眺める。

小さな薬草が、風に揺れていた。


「……また一つ、余裕が増えたな」


『そのようです』


これから、この薬草がどう育つのか。

そして、どう増えるのか。

それを確かめることも、今の村にとっては新しい仕事になっていた。

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