表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/120

薬草という新しい産業

持ってきた植木鉢には、全て薬草の植え替えが終わった。

根を傷めないように土ごと移したので、今のところ枯れる様子もない。


「よし。これで全部だな」


『はい。あとは環境を整え、定期的に観察してください』


「分かった」


俺は植木鉢を並べた場所を眺める。


「さて。村へ戻るか」



村へ戻る途中、ミィナが植木鉢を眺めながら言った。


「誠」


「ん?」


「村で薬草が採れるとなれば、楽になるな」


「そうだな」


わざわざ山まで探しに行かなくてもいい。

必要な時に村で採れるようになれば、それだけでもかなり便利だ。


「まあ、上手く育って増えるといいな」


「そうだな」


そんな話をしていると――


「はぁ……はぁ……」


後ろから誰かが走ってくる。


「誠殿! ミィナ殿!」


「どうした? タタ」


息を切らしたタタが追いついてきた。


「いえいえ。また変わったことをしていると小耳に入ったもので……」


タタは並んでいる植木鉢を見る。


「薬草ですか?」


「そうだ」


「村で育ててみようかと思ってな」


「なるほど……」


タタは植木鉢を一つ持ち上げ、じっくりと観察する。


「ここは自然豊かな場所ですから、手軽に薬草が手に入る……ということですね」


「そういうこと」


「なるほど」


タタは少し考え込む。


「これは、かなり面白いと思います」


「ん?」


「薬草というのは、町が大きくなるほど手に入りにくくなるのです」


「ん? 他じゃ手に入らないのか?」


「手に入らないわけではありません」


タタは首を横に振る。


「大規模な街になりますと、薬草が生えている場所まで行くのに時間がかかります」


「なるほど」


「そのため、郊外まで採りに行く必要があります」


「それを誰かがやるのか?」


「はい」


タタは当然のように答える。


「冒険者などの仕事ですね」


「……冒険者がいるのか!?」


思わず声が大きくなる。


「はい」


『新たな職種です』


アイまで反応した。


「やっぱり、そういうのいるんだな」


『はい。ゲームなどで見られる職業に近い存在と考えられます』


「やはりゲームのような世界……」


「はい?」


「いや、なんでもない」


タタは不思議そうな顔をしたが、すぐに薬草へ視線を戻した。


「薬草を採取して町へ持ち帰る冒険者もいます」


「じゃあ、需要はあるんだな」


「もちろんです」


タタは即答した。


「傷薬、胃腸薬、熱冷ましなど、薬草を必要とする人は多いですから」


「なるほど……」


俺は植木鉢を見る。


「じゃあ、ここで栽培できれば?」


「安定的な収入源となります」


タタの目が輝いた。


「しかも、この村は薬草の生育環境に適しています」


「本当に?」


「はい」


「だったら、食料とは別の収入源になるな」


『収入源の多様化は、村の経済安定に有効です』


「だよな」


これまで村の収入源と言えば、干し肉や干物、味噌、醤油。

それに陶器や紙、荷台車の改造などだった。


そこへ――薬草が加わる。


「でも、いきなり大量生産はしない方がいいな」


『同意します』


「まずはちゃんと育つか確認する。その後、増やせるか試す。品質も確認する」


『さらに、薬草ごとの栽培条件を記録することを推奨します』


「なるほど」


タタも頷く。


「それなら、こちらでも販売先や需要を調べておきます」


「頼めるか?」


「もちろんです!」


「仕事が早いな……」


『タタ様は非常に有能です』


「それは認める」


タタは、さっそく薬草の種類や植木鉢の数を確認し始めた。


「この種類なら需要が高そうです」


「こっちは?」


「こちらは薬師がよく使いますね」


「薬師?」


「はい。薬を調合する者です」


「……薬師までいるのか」


『世界の情報がさらに増えました』


「本当に知らないことばかりだな」


俺は苦笑する。

少し前まで、俺たちは村の中で生きるだけで精一杯だった。


今では商隊が来て、町と取引をし、知らない職業や制度まで知るようになった。


そして今度は――


「薬草まで商売になるのか」


『はい』


「面白いな」


俺は並んだ植木鉢を見る。まだ小さな薬草。

これが育ち、増えて、商品になる。

そして村の新しい収入源になる。


「……また村が一歩進んだな」


『はい』


タタは薬草を眺めながら、嬉しそうに笑っていた。


「これは、しっかり育てましょう!」


「おう」


ミィナも頷く。


「じゃあ、俺たちも世話をするか」


「そうだな」


小さな植木鉢から始まった薬草栽培。

それは後に、この村の新しい産業へと成長していくことになる。


だが今はまだ――ただの小さな薬草畑だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ