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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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山の薬草

『早速、山の方へ行って、植物の観察をしましょう』


「そうだな」


俺は昨日手に入れた植物図鑑を思い出す。


「本と実物を比べてみたいしな」


『はい』


「それに、図鑑と言っても全部が載ってるとは限らないだろ」


『その可能性は高いです』


「中には、漢方みたいな使い方が書いてある植物もあったしな」


『はい。有益な植物について、さらに調査する価値があります』


「よし」


俺は籠を背負う。


「鉈も持っていくか」


『推奨します』


「じゃあ、行くか」



山へ入ると、昨日までとは景色の見え方が違った。


今までは、ただの山だった。

食べられる木の実がある。薪になる木がある。

動物がいる。

それくらいにしか考えていなかった。


だが今は違う。


「この葉……図鑑に似たのがあったな。こっちは薬草か?この実は食べられるのか?」


目につく植物一つ一つが気になる。


『誠様』


「ん?」


『周辺を確認します』


アイの画面がしばらく点滅する。


『……発見しました』


「何を?」


『胃腸薬として利用できる可能性のある植物です』


「おお!」


俺は周囲を見渡す。


「これか?」


足元に生えている植物を指差す。


『はい』


「図鑑に載ってる?」


『類似した植物の記載があります』


「へぇ……」


俺はしゃがみ込んで観察する。

葉の形。茎。根元。図鑑の絵と見比べてみる。


「確かに似てるな」


『この植物は根を乾燥させ、粉末にして服用する方法が記載されています』


「ほう」


俺は根元を見る。


「じゃあ、掘ってみるか」


鉈を使って周囲の土を掘り、根を確認する。


「……これか」


『はい』


「しかし……」


辺りを見回す。


「量はなさそうだな」


そこら中に生えているわけではない。

ところどころに、ぽつぽつと生えているだけだ。


『貴重な植物と推測できます』


「なるほど」


俺は採った根を籠へ入れる。


「じゃあ、乱獲はしない方がいいな」


『推奨します』


「薬になるからって全部採ったら、すぐ無くなりそうだ」


『はい』


「種を採って増やせるか試してみるか?」


『非常に有効な方法です』


「薬草も栽培できれば、村で使えるようになる」


『さらに安定供給が可能になります』


俺はもう一度、周囲を見渡した。


「今までなら、こんなの見つけても気にしなかっただろうな」


『植物に関する知識を得たことで、価値を認識できるようになりました』


「知識があるだけで、見えるものが変わるってことか」


『その通りです』



その後も山を歩きながら、いくつかの植物を採取した。


食用になりそうなもの。

染料になりそうなもの。

薬として使える可能性があるもの。

図鑑に載っているものもあれば、載っていないものもある。


「……面白いな」


籠の中身を眺める。


「今までただの草だったものが、全部違って見える」


『知識とは、物の価値を見つけるための手段でもあります』


「なるほどな」


村へ戻ったら、採取した植物を整理しよう。

そして、栽培できるものは栽培する。

薬として使えるものは、無理に大量採取せず、まず性質を調べる。


「また仕事が増えたな」


『はい』


「でも……」


俺は山を振り返った。


「今まで知らなかったものが見つかるのは、結構楽しいな」


『その感想は、今後の探索において有益です』


「アイ、そういう時だけ妙に現実的だな」


『事実を述べているだけです』


「はいはい」


俺は笑いながら、籠を背負い直した。

村を豊かにするために山へ来た。

だが今日分かったのは、それだけではない。

この山には、まだ俺たちの知らないものが数え切れないほど眠っている。


そして――図鑑に載っていない植物こそ、この世界を知るための大きな手掛かりになるのかもしれなかった。



村へ戻ると、俺は採ってきた野草を一つずつ確認した。


「まずは洗うか」


土を落とし、種類ごとに分けていく。

同じ種類のものをまとめ、紐で束ねる。

そして、風通しの良い窓際へ吊るした。


「干し方はこれでいいかな?」


『問題ございません』


「よし」


並んだ野草を眺める。


「こうやって乾燥させれば、保存もしやすくなるな」


『はい。植物によって適切な乾燥方法は異なりますので、今後は記録していくことを推奨します』


「記録か……」


俺は少し考える。


「それなら、採取した場所とか、使い方も書いておいた方がいいな」


『非常に有効です』


「植物図鑑を作るみたいになってきたな」


『村独自の植物資料になる可能性があります』


「それ、結構いいな」


採取した植物。見つけた場所。特徴。

利用方法。乾燥させた時の変化。


分かる範囲で記録しておけば、次に山へ行った時にも役立つ。



「それと……」


俺は窓際の野草を眺める。


「今度は植木鉢を作ってもらうか」


『植木鉢ですか?』


「そう。山まで行って、薬草を採ってくるだけじゃなくて、持って帰って育てられないかなと思って」


『非常に良い案です』


「それなら、山で見つけた植物を少しずつ村で育てられる」


『安定供給にも繋がります』


「よし」


俺はさっそく、レンガを作っている職人のところへ向かった。


「ちょっと頼みたいんだけど」


「何だ?」


「植木鉢を作ってほしい」


「植木鉢?」


「植物を植えて育てるための鉢だ」


俺は簡単な形を紙に描く。


「丸でもいいんだけど……」


少し考える。


「丸は作るのが面倒そうだから、四角でいい」


「確かに、四角なら型も作りやすいな」


「だろ?」


「底には水が抜けるように、小さめの丸穴を開けてくれ」


「なるほど」


職人は図を眺める。


「大きさは?」


「大、中、小の三種類」


「それぞれ何個くらいだ?」


「まずは数個ずつでいい」


「分かった」


「よろしく頼む」


「任せろ」


職人はさっそく型を作り始めた。


「こういう物まで作るようになるとはな」


俺は苦笑する。


『植物を栽培するための道具も、生産基盤の一つです』


「確かに」


今までは食料になる作物を育てることばかり考えていた。

でも、薬草や染料になる植物まで育てられるようになれば、村で利用できる物がもっと増える。


「しかも、山に行かなくても使えるようになる」


『はい』


「それなら、やる価値はあるな」



数日後。


「出来たぞ!」


職人が完成した植木鉢を持ってきた。

四角い鉢が並んでいる。


大、中、小。


底には、小さな穴が開いている。


「おお、いいじゃん」


「これなら土も入れやすいぞ」


「ありがとう」


俺は一つ持ち上げて確認する。


「よし。これを持って山まで行ってみるか」


『手引き荷台車の使用を推奨します』


「ああ。鉢だけじゃなく、土も持っていかないとな」


『採取した植物の周辺の土を一部持ち帰ることも推奨します』


「なるほど。その方が環境を変えにくいか」


『はい』


俺は完成した植木鉢を並べていく。


「次は、採るんじゃなくて……育てるか」


村の暮らしは、また少し変わろうとしていた。

今まで山は、薪や食料を取りに行く場所だった。


これからは――新しい植物を探し、持ち帰り、村で育てる場所にもなっていく。


「次に山へ行くのが楽しみになってきたな」


『私も興味があります』


「じゃあ、準備しておくか」


俺は手引き荷台車を眺めた。


「今度は、植木鉢を積んで山へ行こう」


『はい』


まだ知らない植物を求めて。

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