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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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知られざる植物の知識

「誠様ー!」


村の中を歩いていると、タタの声が聞こえてきた。


「ん? どうした? タタ」


タタが、何冊かの本を抱えて走ってくる。


「図鑑類の本が届きましたので、お渡しします!」


「届いたか!」


「はい! こちらに置いておきますので!」


「ありがとう!」


タタは本を置くと、また別の作業へと走っていった。


「相変わらず忙しいな……」


俺は積まれた本を見る。

植物図鑑。動物図鑑。鉱物に関する本。

その他にも、いくつか分厚い本がある。


「さて……アイさんや」


『はい』


「まずは……無難に植物図鑑っぽいのから行くか」


『はい。お願いします』


俺は一冊を手に取った。

表紙を開く。

中には、手書きと思われる植物の絵が並んでいた。


「手書きの絵付きか……」


細かく描かれている。

葉の形。茎。花。実。

さらに、簡単な説明まで書かれている。


「わかりやすいな」


『どうぞ。めくってください』


「はいよ」


ぺら。ぺら。


「……」


ぺら。ぺら。


『もう少し早くめくって構いません』


「流石だな、アイは」


俺は少し速度を上げる。


ぺら。ぺら。ぺら。ぺら。ぺら。


『地球と同じ物、近い物、全く違う物の三パターンを確認しました』


「なるほど」


俺もページを覗き込む。


「確かに米とか、同じだしな」


『はい』


「でも、見たこともない植物も結構あるな」


『興味深いです』


アイの画面に、いくつかの植物が表示される。


『さらに、思ったより細かく分類されている植物も確認しました』


「分類?」


『はい。葉の形状、成長環境、実の特徴などによって細かく分類されています』


「思ったより研究が進んでるのか?」


『恐らく』


俺はページをめくる手を止めた。


「……そうか」


今まで、俺はこの世界について何も知らなかった。


村の周囲にある植物。

村人が知っている食べられる物。

薬草として使われている物。

それくらいしか情報がなかった。


でも――この本には、俺たちが知らなかった情報が大量に詰まっている。


「つまり、俺たちが知らなかっただけで……」


『はい。この世界には、すでに多くの知識が蓄積されている可能性があります』


「そりゃそうだよな」


町には商人がいた。制度もあった。

商品登録の仕組みもあった。

魔法についての知識もある。

電子決済まで存在している。


「この世界を、村の基準だけで考えちゃ駄目だったんだな」


『その通りです』


「もっと早く本を探しておけばよかった」


『今からでも遅くありません』


「だな」


俺は改めて本を見る。


「植物図鑑だけでも、かなり面白そうだ」


『他の図鑑も確認することを推奨します』


「もちろん」


俺は隣の本を手に取った。


「次は……動物図鑑か」


『はい』


「その次は鉱物」


『はい』


「その次は……」


積み上がった本を見る。


「……結構あるな」


『すべて確認することを推奨します』


「これ、読むだけで一日終わるぞ」


『問題ありません』


「問題あるだろ!」


俺は苦笑する。


だが、不思議と嫌ではなかった。

これまでの俺なら、何かを作るために本を読む。必要だから読む。生きるために読む。

でも今は違う。


「知りたいから読む、か……」


『はい』


「これも、余裕ってことなのかな」


『その可能性が高いです』


俺は植物図鑑をもう一度開いた。

知らない植物。知っている植物。

地球とは似ているが、少し違う植物。


そして、この世界にしか存在しない植物。


「……面白いな」


まだ知らないことが、こんなにある。

村を豊かにするための知識だけじゃない。

この世界そのものを知るための知識が、ここにはある。


「アイ」


『はい』


「これから、少しずつ勉強していくか」


『喜んで協力します』


俺は笑って、次のページをめくった。

村の外には、知らない世界があった。

そして今度は――本の中にも、知らない世界が広がっていた。

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