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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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初めてのセメント建築

「これが……セメント?」


俺は、出来上がった材料を手に取って眺める。


『はい。必要な材料を適切な割合で混合したものです』


「これに適正な量の水を混ぜて……」


俺はアイの指示を確認しながら、水を少しずつ加えていく。


「混ぜる」


ざくっ、ざくっ。


砂や石灰が、少しずつ水と馴染んでいく。


「こんなもんか?」


『はい。均等になるよう、もう少し混ぜてください』


「了解」


さらに混ぜる。


最初はただの砂のようだったものが、少しずつ粘り気を持っていく。


「へぇ……」


俺は指先で少し触れてみた。


「これが固まるのか?」


『はい』


「今はまだ柔らかいけど?」


『時間経過によって硬化します』


「面白いな」


俺は少量を木箱に入れて、平らにならした。


「じゃあ、これで試験だな」



翌日。


「……固まってる」


昨日まで柔らかかったものが、硬くなっている。


村人たちも次々と集まってきた。


「本当に石みたいになってるぞ」


「水を混ぜただけなのか?」


「これで何が出来るんだ?」


俺は固まったセメントを手に取る。


「これをレンガの間に使うんだ」


「レンガの間?」


「そう。今まではレンガを積み重ねるだけだったけど、これを間に入れることで、レンガ同士をしっかり固定できる」


村人たちは、固まったセメントを何度も触っている。


「……なるほど。これなら建物も丈夫になりそうだな」


『その通りです』


アイの声が入る。


『ただし、実際の建築では基礎や構造も重要になります』


「まあ、最初から大きな建物を作る必要はないだろ」


俺は完成したセメントを見ながら考える。


「まずは、小さい建物で試してみるか」


「そうだな」


「最初は倉庫……」


俺は村を見渡す。


「いや。倉庫はデカすぎるな」


村人も頷く。


「いきなり大きな建物を作るのは大変だ。なら……」


俺は少し考える。


「馬小屋辺りでいいんじゃないか?」


「馬小屋?」


「四角くて、それほど複雑じゃない。材料も倉庫ほど必要ない」


「確かに」



「じゃあ、最初の建築は馬小屋でいこう」


「おう!」


村人たちが動き始める。


レンガを運ぶ者。セメントを運ぶ者。

基礎を作る者。道具を準備する者。


「しかし……」


俺は少し離れたところから眺める。


「まさか馬小屋が、この村初のレンガ建築になるとはな」


『実験施設として適しています』


「だよな」


大きすぎない。形も単純。

失敗しても被害が少ない。


そして、実際に使う建物だから、完成後の評価もできる。


「よし。まずはここからだな」


村人たちが基礎を整え、レンガを並べ始める。

その間にセメントを入れる。


「こうやって……」


「レンガを置いて……」


「またセメントを入れる」


少しずつ壁が高くなっていく。


「おお……」


「建物になってきたな」


俺は思わず笑った。

今までの村の建物とは違う。

木ではない。藁でもない。

土を固めただけでもない。

レンガとセメントで作られる、新しい建物。


『誠様』


「ん?」


『これは村の建築技術における大きな転換点です』


「……そうだな」


最初は、冬を越すための小屋だった。


今は、何年も使うことを前提にした建物を作ろうとしている。


「村も、変わってきたな」


『はい』


「よし」


俺はレンガを一つ手に取った。


「最初の一軒、ちゃんと作ろうぜ」


村人たちの声が響く。


レンガを積む音。セメントを混ぜる音。

道具を動かす音。


その一つ一つが――村が「町」へ向かう、新しい音になっていた。

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