知らない知識を探す本
アイに言われた通り、ヨモギによく似た草を採ってきた。
鍋に水を張り、葉を入れて煮出す。
しばらくすると、独特の青い香りが立ち込めてきた。
「……これでいいのか?」
『はい。十分に煮出してください』
「分かった」
煮出した液に布を浸たし、しっかり染み込ませてから取り出し、軽く絞る。
そして――
「よし」
筋肉痛の腕に巻いてみる。
「うーむ……」
しばらく腕を動かしてみる。
「効いてるか、よく分からんな」
『効果には個人差があります』
「まあ、いいか」
『ただし、皮膚に異常が出た場合は直ちに外してください』
「今さらかよ!」
『重要事項ですので』
「……変な違和感はないから、今のところ平気かな」
俺は腕を眺める。
「しかし、こんな身近な草が使えるとはな」
『植物には様々な利用方法があります』
「そうだよな……」
そこで、アイが少し間を置いた。
『誠様。推奨提案がございます』
「何だ?」
『タタ様に、この世界に植物図鑑などの書籍が存在するか確認してください』
「植物図鑑……」
俺は少し考える。
「なるほどな」
今までは、村人から聞いた話や、アイの知識を頼りにしてきた。
「まとまった本があれば、調べやすくなるか?」
『はい。今までは、村人から得た情報が中心でした。しかし、今回訪れた町や商隊の存在から、この世界には想定以上に発展している分野があることが判明しています』
「確かにな」
俺は腕をさする。
「この村の最初の状態が、この世界の基本だと思ってたけど……」
『その認識を修正する必要があります』
「もしかしたら、本くらい普通にあるかもしれないな」
『その可能性は高いと推測します』
「よし。聞いてみるか」
◇
「タタさん」
「何でしょうか?」
タタは作業の手を止めて振り返った。
「植物図鑑とか、そういう書籍ってあるかな?」
「植物図鑑ですか?」
「はい」
タタは少し考える。
「あー。有りますよ?」
「……あるのか!」
思わず声が大きくなった。
「なら、植物図鑑とか、動物図鑑とか……」
俺は次々と思いつく。
「他にも、そういう感じで色々まとめられている本が欲しい!」
「なるほど!」
タタの目が輝く。
「分かりました!私が見繕って、数冊手配しておきます!」
「本当か!?」
「もちろんです!」
「ありがとう! 助かる!」
タタは早速、何やら手配の準備を始めた。
「……仕事が早いな」
◇
タタが離れていくのを見ながら、俺はアイへ話しかける。
「アイ」
『はい』
「これで更に情報が手に入るな」
『ですね』
アイの画面が小さく光る。
『楽しみです』
「だよな」
今まで俺たちは、知っていることだけで村を発展させてきた。
だが――外の世界には、まだ知らない知識が大量にある。
植物。動物。鉱物。農業。建築。魔法。
そして、この世界独自の技術。
「本が届いたら、色々分かるかもしれないな」
『はい。知識の収集範囲を大幅に拡張できます』
「……なんか、図書館が欲しくなってきたな」
『非常に合理的な発想です』
「いや、そこまで本気で言ったわけじゃ……」
『記録しておきます』
「するな!」
俺は苦笑した。
だが、心の中では少し楽しみになっていた。
今まで見てきた世界は、俺たちが知っているほんの一部だった。
そして――これから手に入る本が、その「知らなかった世界」を少しずつ見せてくれる。
俺は、届く本を楽しみに待つことにした。




