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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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遊びもまた、産業になる

次の日。

俺は昨日作ったリバーシを抱え、村を回っていた。


「はい、これ一つ」


「これは何だ?」


「遊びだよ」


「遊び?」


俺は盤を置き、白と黒の駒を並べる。


「簡単だから、やってみれば分かる」


ルールを説明する。

自分の色で相手の駒を挟めば、ひっくり返せる。

最後に、自分の色が多い方が勝ち。


「……これだけ?」


「これだけ」


村人たちは顔を見合わせる。


「簡単だな。じゃあ、やってみるか」



最初に飛びついたのは、やっぱり子どもたちだった。


「ここに置く!」


「違う! そこじゃない!」


「こうやって挟むんだろ!」


「うわ、白が黒になった!」


覚えるのが早い。

一度説明しただけで、もう勝手に遊び始めている。


「子どもってすげぇな……」


『学習速度が非常に高いです』


「俺より早いんだけど」


しばらくすると、その子どもたちが今度は親のところへ走っていく。


「父ちゃん! これ面白いぞ!」


「こうやって挟むんだ!」


「母ちゃんもやろう!」


「ちょっと貸してみな」


そこからは早かった。


子ども同士。親子。大人同士。


いつの間にか、あちこちの家でリバーシの盤を囲む姿が見られるようになった。


「……いい流れだな」


『はい。娯楽が自然に定着しています』



その様子を見ていたタタが、突然動いた。


「これは……」


「登録ですね」


「はい!」


即答だった。


「新しい遊戯として登録します!」


「またか」


タタは楽しそうに羊皮紙へ書き込んでいく。


「それと、誠殿」


「ん?」


「製作をお願いします」


「……俺?」


「はい」


「他の人に頼めばいいのに」


タタは不思議そうな顔をする。


「これなら誠殿にも作れますね」


「一体、俺の存在って……」


『これくらいなら出来るだろうとの判断であります』


「またそれのパターンかよ……」


俺がため息をついていると、タタが続ける。


「ですが、誠殿が最初に作ることには意味があります」


「意味?」


「はい」


「新商品というものは、最初から大量に作られるわけではありません」


「まず現物が必要です。そして、それを見た人が実際に使い、売れると分かる。そこで初めて、他の者たちも安心して生産を始めます」


俺は少し考えた。


「つまり……最初の見本を作るってことか」


「その通りです!」


「なるほどな」


『合理的な判断です』


アイも納得している。


『登録制度があっても、需要が確認されなければ生産者は動きません』


「確かに。いきなり作って売れなかったら、材料も手間も無駄になる。でも、実際に村で流行ってる物なら――」


「作れば売れる可能性が高い」


「そういうことか」


タタが満面の笑みを浮かべる。


「さらに生産者が増えれば、登録料や使用料も発生します」


「……なるほど。最初の一歩が大事なんだな」


『はい』



俺は完成したリバーシの盤を一枚手に取った。


「なら、俺が作るしかないな」


タタが頷く。


「お願いします!」


「分かったよ」


こうして俺はまた、木材と向き合うことになった。


農具。荷台車。紙。


そして今度は――遊び。


村を豊かにするものは、食料や道具だけじゃない。


人が笑い、集まり、時間を楽しめるものもまた、村の暮らしを豊かにしていく。


そして、その「遊び」さえも――


いつか、この村の新しい産業になるのかもしれなかった。



それから俺は、数日かけてリバーシを作り続けた。


木板を切る。磨く。盤に線を引く。

駒を作る。白と黒に分ける。

ひたすら、その繰り返し。


「……よし」


完成したリバーシを並べる。


「かなり作ったぞ」


だが、隣で数を確認していたタタは首を横に振った。


「まだ少ないですね」


「え?」


「もっとお願いします」


「いやいや、こんなに必要なのか?」


目の前には、かなりの数のリバーシが積まれている。

村全体に配るどころか、余るくらい作ったつもりだった。


「まだ必要です」


「何に使うんだ?」


「それは後のお楽しみです」


「……怪しい」


俺はアイへ視線を向ける。


『恐らく、何か考えがあるものと推測します』


「だよなぁ」


タタは相変わらず楽しそうにしている。


「まあいいか」


俺は肩をすくめた。


「これくらいしか俺、作れないし」


『誠様、それは少々悲しい発言です』


「うるさい」



さらに数日。

ようやくタタから、追加の製作指示が止まった。


「やっと終わった……」


俺が腕を回していると――

遠くから、何やら騒がしい音が聞こえてきた。


「……ん?」


村の入り口を見る。土煙が上がっている。


「何だ?」


村人たちも次々と作業の手を止め、入口へ集まっていく。

やがて、その姿が見えてきた。


「……荷馬車?」


一台。二台。三台。次々と続いてくる。


「……嘘だろ」


数える。


「一、二、三……」


「十五台!?」


大量の荷馬車が、村へ向かって進んでくる。


その荷台には、布。鉄材。調味料。衣類。

工具。食料。


見たことのない商品まで積まれている。


「なんだ、この量……」


村人たちも騒ぎ始めた。


「商隊か?」


「こんな大きなの、見たことねぇぞ!」


「何をしに来たんだ?」


俺も呆然と眺めていた。

だが、さらに気になるものがあった。


「……ん?」


荷馬車の周囲を歩く人々。

人間だけじゃない。


耳の長い者。背の低い者。大柄な者。

肌の色が違う者。

見たことのない種族までいる。


「……二十人近く?」


『複数の種族を確認しました』


「この村に?」


『はい』


俺は思わずタタを見る。


「……まさか」


タタは満面の笑みを浮かべていた。


「お待ちしておりました!」


「これ……タタが呼んだのか?」


「もちろんです!」


「何のために?」


タタは、積み上げられたリバーシを指差した。


「誠殿!ここからが、本当の商売ですよ」


俺は荷馬車十五台を見上げる。

どうやら、俺が作っていたリバーシは――

村の中で遊ぶためだけの物ではなかったらしい。

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