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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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竹が運ぶ水、紙漉き場完成

朝から俺は、ひたすら竹と向き合っていた。

一本切っては、適度な長さに切る。

節を抜き、内部をきれいに掃除する。


また一本。また一本。その繰り返しだ。


「……最初は面倒だと思ったけど」


一本の竹を覗き込みながら苦笑する。


「慣れれば、なんてことないな」


『作業効率は向上しています』


「最近そればっかりだな」


『事実です』



しばらくすると、村人たちが集まってきた。


「誠殿、何か手伝うか?」


「こっちの畑は一段落したぞ」


「俺たちも空いたぞ!」


俺は笑って頷いた。


「じゃあ、この竹を運んでくれ」


「任せろ!」


今では誰かが新しいことを始めると、自然と人が集まる。


鍛冶場もそうだった。

窯も、水路もそうだった。

この紙漉き場も、きっと同じだ。



竹管を一本ずつ繋ぎ合わせ、水路から紙漉き場へ向かって組み立てていく。

高さを合わせ、傾きを確認する。


「もう少し右!」


「そこを少し上げてくれ!」


村人たちと声を掛け合いながら、慎重に位置を調整する。


『勾配は良好です』


「これなら流れるか」


最後の一本を繋ぎ終え、俺は深く息を吐いた。


「よし……水を流してみよう」


堰を少し開く。

さらさら、と音を立てながら水が竹の中を流れ始めた。

村人たちは固唾を呑んで見守る。


そして――竹管の先から、勢いよく水が流れ落ちた。


「おおっ!ちゃんと来たぞ!」


「漏れてねぇ!」


俺は思わず笑う。


「うん。我ながら上手くいったかな」


『問題ありません』


アイも静かに太鼓判を押した。



それから数日。

建物も少しずつ形になっていく。

柱を立て、屋根を掛け、床を踏み固める。


紙を乾かす棚。大きなタライを置く場所。

道具を並べる棚。


どれも豪華ではない。


だが、作業するには十分な造りだった。


「完成だな」


『はい。初期紙漉き場として十分な性能です』


村人たちも満足そうに建物を眺める。


「また一つ増えたな。最近は建物ばかり増えてる気がする」


「でも全部ちゃんと使ってるからな」


誰かが笑い、皆もつられて笑った。



建物が完成すると、今度は細かな道具作りに取りかかる。


木枠。竹で編んだ漉き簀。大きなタライ。

紙を押さえる板。乾燥用の棚。


「思ったより道具が多いな」


『紙作りは工程ごとの道具が重要です』


「なるほど」


一つずつ完成させ、所定の位置へ並べていく。

ようやく紙を作る準備が整った。



俺は完成した紙漉き場を見渡した。


「さて……」


アイへ視線を向ける。


「工程を確認しながら、やってみるか」


『了解しました』


アイの画面に、紙漉きの工程が順番に表示される。


藁を煮る。繊維をほぐす。紙料を漉く。そして乾かす。どれも初めての作業だ。


一部は、手伝って貰って途中まで作業が終わっている。


だが、不思議と不安はなかった。

今までそうして、一つずつ村を変えてきたのだから。


新しい一枚の紙は、もうすぐこの村で生まれようとしていた。



俺は木枠をゆっくりと持ち上げた。


「……アイ、こうか?」


漉いたばかりの繊維は、水をたっぷり含んでいる。

少し傾けただけで、厚い所と薄い所がはっきり分かってしまう。


『なるべく平らに、均一にしてください』


「言うのは簡単だけど……」


俺は木枠を揺らしながら苦笑する。


「難しいな。ムラになってるのが分かる」


何度やっても、端に繊維が寄ってしまう。

その様子を見ていた村人が、笑いながら近づいてきた。


「あーあー、見ちゃいられないなぁ」


「誠殿、代わってみ!」


「……はい」


俺は素直に木枠を渡した。

村人は慣れた手つきで木枠を軽く揺らし、余分な水を切っていく。


「どうだ? こんな感じか?」


アイがすぐに答えた。


『はい。先程より格段に良いです』


「え、そんなに違うのか?」


『はい。繊維の厚みが均一になっています』


村人は照れくさそうに頭をかいた。


「毎日泥をならしてるからな。平らにするのは得意なんだ」


「……なるほど」


畑を均す技術が、こんな所で役に立つとは思わなかった。


『そのまま何回か繰り返してください』


「こうか?」


同じように木枠を揺らしてみる。

今度は繊維がゆっくりと広がり、先ほどよりきれいに並んでいく。


『良い感じです』


アイの声に少しだけ自信が湧いた。


『そのまま乾燥棚へ重ね、同じ工程を繰り返してください』


「了解!」


俺は笑いながら頷く。


「任せろ!」


村人たちも次々と木枠を手に取り、紙漉きを始める。

最初はぎこちなかった作業も、人数が増えるにつれて少しずつ形になっていった。


一枚。また一枚。


まだ薄く頼りない紙だが、その一枚一枚が、この村の知識を残す土台になろうとしていた。

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