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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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広がる荷台車

改変した種を試験用の畑に蒔き終えた頃だった。


「誠殿ーー!」


広場の方から、大きな声が聞こえてきた。


「ん?」


誠が振り向くと、数人の村人が嬉しそうに手を振っている。


「ちょっと来てくれ!」


「見せたいもんがある!」


「何だ?」


誠はアイと共に広場へ向かった。



広場へ着いた誠は、思わず足を止めた。


「……え?」


そこには三台の手引き荷台車が並んでいた。


しかも――。


「全部、板ばね付き……?」


誠は一台一台を見回す。

荷台の構造は少し違う。荷台を広くしたもの。丸太を運びやすくしたもの。

高さを低くして積み降ろししやすくしたもの。


だが共通しているのは、鉄製の足回りと板ばねだった。


「え? もう作ったの?」


村人たちは得意そうに笑う。


「見よう見まねだけどな!」


「誠殿が町へ行ってる間に作ってみた!」


「鉄も村で打てるようになったし!」


「何度か失敗したけど、何とか形になったぞ!」


誠は驚きながら荷車を押してみる。


スッ――。


「……軽い」


以前の木だけの荷車とは比べ物にならない。


「荷運びが楽すぎる!」


「木材も前より倍近く積める!」


「坂道でも荷崩れしねぇ!」


村人たちは口々に自慢し始めた。



その様子を見ていたタタが、目を輝かせる。


「素晴らしい!」


荷車の下へ潜り込み、板ばねをじっくり観察する。


「技術とは、こうやって広まるのです!」


感心しながら何度も頷いている。


「しかも!」


タタは誠を見た。


「誠様が町まで引いていた荷台車より、この板ばねの出来が良くなっています!」


「え?」


「鍛冶を担当した方がおられるのでしょう? 鉄の打ち方が安定しています!」


村人の一人が照れくさそうに頭をかく。


「あれから何度も打ち直したんだ。まだまだだけど、少しは良くなっただろ?」


タタは満足そうに大きく頷く。


「はい! 格段に良くなっています!本職が見ても十分評価できる出来栄えです!」


誠は思わず笑ってしまう。


「あの一言、結構効いてたんだな」



タタは胸を張る。


「しかも安心してください!荷台車は既に登録済みです!皆さんは正当な利用者ですので、安心して製作・使用してください!」


村人たちはほっと胸をなで下ろした。


「登録って便利なんだな」


「盗まれる心配が減るってわけか」


「ありがたい制度だ」



一人の若者が荷車を叩きながら言う。


「これなら森の木材も一度に運べる」


別の男も続ける。


「炭も倍積めるぞ!」


女性たちも笑顔になる。


「収穫した野菜も何往復もしなくて済むね!」


「器も割れにくくなったよ!」


「保存壺もまとめて運べる!」


荷車一台が変わっただけで、村中の物流が大きく変わっていた。


炭も、木材も、収穫物も。


すべてが、より少ない労力で運べるようになっている。



誠は少し離れた場所から、その光景を眺めた。

笑いながら荷車を押す村人たち。

自分たちで工夫し、さらに改良まで加えている。


誠は小さく笑う。


「……俺が作ったんじゃない。もう、村のみんなの技術なんだな」


『技術の定着を確認しました。発明ではなく、文化として根付き始めています』


「……そうか」


誠は新しい荷車を見つめた。

最初の一台は、自分が作った。

けれど、その先を育てたのは村人たちだ。

それが何より嬉しかった。

荷台車は今日も静かに村の中を走っていく。


それはもう、一人の発明ではなく――この村の日常になっていた。

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