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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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魔法か、スキルか

夕暮れ。

村の広場で一息ついていた誠は、ふと思い立った。


「……待てよ。アイ」


『はい』


「俺たちさ。そもそも”魔法”って何なのか、ちゃんと調べた方がいいんじゃないか?」


少し間を置いて、アイが答える。


『強く推奨します。現時点で確認されているのは生活魔法程度です。魔法と技術が組み合わされば、大きな発展が期待できます』


「だよな。じゃあ、何から調べる?」


『まずは、生活魔法以外に何が存在するのか確認しましょう』


「聞き込みか」


誠は立ち上がった。



畑で作業をしていた村人へ声をかける。


「なあ。生活魔法以外に使えることってあるか?」


村人は首をかしげた。


「変わったこと聞くなぁ。俺は遠くの声がよく聞こえるぞ」


「遠くの声?」


「山向こうで木を切ってる音くらいなら聞こえる」


「なるほど」


誠は頷く。

別の村人にも聞いてみる。


「俺は遠くまでよく見える」


「獣探しには便利だ」


誠は思わず言った。


「それって、見ようと思えば何でも見えるのか?」


村人は不思議そうな顔をした。


「?」


「獣以外に何を見るんだ?」


「……」


誠は苦笑した。価値観が違う。

そもそも覗こうという発想がないらしい。



次々と聞いて回る。


「俺は夜目が利く」


「私は怪我の治りが少し早い」


「魚が釣れやすいかな」


「雨が近いと分かる」


能力は様々だった。


しかし――。


ブーン。


アイが振動する。


『誠様。まだ人数は少ないですが傾向が見えてきました』


「俺も同じこと考えてた」


誠は腕を組む。


「これ……魔法というより、スキルじゃないか?」


『はい。私たちの世界のゲームでいう「固有能力」に近いと推測します』


「でも、この世界じゃ」


『すべて魔法と呼ばれているようです』


「何でだろうな」


『推測ですが。能力分類や学術研究が未発達なのかもしれません』


「なるほど」


誠は納得したように頷いた。


「魔法って一括りにしてるだけか」


『可能性は高いです』



「ところで」


誠が尋ねる。


「何か面白そうなのはあったか?」


アイは少し考えたあと答えた。


『一つだけ。気になる能力があります』


「何だ?」


『“改変”』


「改変?確かに一人居たな?」


『本人へ尋ねても「何となく出来る」としか答えませんでした』


「説明できないのか」


『はい。ですが。非常に興味深い能力です』


誠は腕を組んだ。


「で?どうする?」


アイは静かに答えた。


『実験しましょう』


「実験?」


『はい』


「何を使う?」


『豆です』


「……豆?」


『豆の種を持って、その能力者のもとへ行きましょう』


「豆で何が分かる?」


アイは少しだけ間を置いた。


『それは、実際に見た方が早いです』


誠は首をかしげながら、保存庫へ向かった。


「……ますます分からなくなってきたな」


未知だった”魔法”。

その正体に、少しずつ近づこうとしていた。



「誠殿か。また何かあったのか?」


改変の能力を持つ村人が、不思議そうな顔でこちらを見る。


「ちょっと試したいことがあってさ」


誠はアイに目を向けた。


ブーン。


『誠様。豆の種を一粒渡してください。そして、「一分後に芽が伸びる」という具体的なイメージを、種へ与えてもらってください』


「なるほど」


誠は豆を一粒手渡した。


「これを持ってくれ。それで、一分後に芽が出て育つところを、できるだけ強く思い浮かべてみてくれ」


村人は首をかしげる。


「はぁ?そんな豆があるわけ……」


「まあまあ。試すだけだから」


「……まあ、いいが」


村人は目を閉じ、しばらく黙っていた。

やがて目を開ける。


「……やってみたぞ」


ブーン。


『では、その種を地面へ蒔き、水を与えてください』


誠は頷き、小さな穴を掘る。

豆を埋め、水をかけた。

すると――


「おい……!」


土が、もぞりと動いた。

次の瞬間。


ぐんっ!


芽が飛び出した。


「うわっ!」


さらに、蔓が勢いよく空へ伸びていく。


ぐん、ぐん、ぐん!


あっという間に人の背丈ほどまで成長した。


「なっ!?何じゃこりゃ!?」


誠も村人も、目を見開いたまま固まる。

しかし。


「……あれ?」


誠が蔓を見回す。


「実が……ない」


葉は青々と茂っている。蔓も立派だ。

だが、花も豆も付いていない。


「本当に成長しただけか……」


ブーン。


『予想通りです。成長速度のみが加速しています。しかし花が省略されたと推測』


「なるほどな……」


誠は蔓を触りながら呟いた。


「便利だけど、万能じゃないってことか?」


その瞬間、誠の頭に一つの考えが浮かぶ。


「……待てよ。これ、一回じゃ結論は出せないな。何パターンか試そう!」


村人も興味津々で頷く。


「今度は何をするんだ?条件を変えてみる。水の量。時間。イメージの仕方。色々試せば何か分かるかもしれない」


ブーン。


アイが軽く震えた。


『誠様。珍しくグッジョブです』


「珍しくは余計だ」


『ですが、実験とは条件を一つずつ変えることです。ようやく科学らしくなってきました』


誠は苦笑しながら、勢いよく伸びた蔓を見上げた。


「よし。魔法なのか、スキルなのか。まずは、この”改変”を徹底的に調べよう」


未知の能力は、少しずつその正体を見せ始めていた。

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