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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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一夜明けて、村へ帰ろう

広めの部屋。

そして、広いベッドが一つ。

誠は部屋へ入った瞬間、固まっていた。


「……落ち着け、俺」


ここまで来る間、何日もミィナと二人旅だったじゃないか。


野営だって何度もした。


なのに……


「部屋になった途端、なんでこんなに意識するんだよ……」


誠は頭を抱えた。


「俺、床で寝るから」


荷物を下ろしながら言うと、ミィナが首をかしげる。


「なんで?」


「いや、その……」


「変なの」


ミィナは笑いながらベッドへ腰を下ろした。


「でも、こんな立派なベッドは久しぶりだなぁ」


ぽふっと横になる。


「ふかふかだ……」


そう言った次の瞬間だった。


「……すぅ」


「……」


「……ガー」


「寝るの早っ!」


誠は思わず小声で突っ込んだ。

数秒で寝息を立てるミィナを見ながら、苦笑する。


「俺だけ意識してるみたいじゃないか……」


天井を見上げても、なかなか眠れない。

野営では何も気にならなかった。

なのに屋根と壁があるだけで、急に落ち着かなくなる。


その時だった。


ブーン。


アイが震え、画面を見る。


『……ぷっ』


「笑うな」


『誠様』


『珍しく冷静さを欠いております』


「放っとけ」


『ミィナ様は完全に熟睡しています』


「それは見れば分かる」


『誠様が何もしないと信頼している証拠かもしれません』


「……そうか」


少し安心した、その直後。


『もしくは』


「まだあるのか」


『腕力では誠様の方が負けると判断している可能性があります』


「……」


「そっちかよ!」


『可能性は否定できません』


「否定してくれ!」


アイは何も答えなかった。



翌朝。


「……眠い」


結局ほとんど眠れなかった。

対してミィナは大きく伸びをしている。


「よく寝たー!おーい。起きろ」


「んー……朝か」


誠が顔を洗う準備をしていると、ミィナが不思議そうに見つめてきた。


「なあ」


「ん?」


「お前……まさか男が好きなのか?」


「ぶっ!」


誠は盛大に吹き出した。


「何でそうなるんだ!」


「……いや、何でもない」


ミィナはくすっと笑って部屋を出て行った。


「絶対面白がってるだろ……」



宿の朝食は、焼きたてのパンと野菜の入った塩味のスープだった。


「いただきます」


一口飲んで、誠は首をかしげる。


「……質素だな」


ミィナも頷く。


「そうだな。村の味に慣れちゃうと、ちょっと物足りない。塩だけって感じだ」


誠は苦笑した。


「味噌汁が恋しくなるな」


その時。


「おはようございます!」


元気な声とともにタタが現れた。


「誠様!ずいぶん、おやつれですね!」


「そんなにお二人、頑張ってたんですか!」


ブゥー。


『寝不足です』


「言うな」


タタは首をかしげるだけだった。



市場では、昨日注文していた品を受け取って回る。


布。服。塩。香辛料。細かな生活用品。


「こんなに買うの久しぶりだな!」


ミィナは上機嫌だった。


「村のみんな喜ぶぞ!」


「そうだな」


どこの店でも荷台車へ次々と荷物が積まれていく。

その横ではタタが、また荷台車を眺めていた。


「うーん……やっぱり面白い構造ですねぇ。帰ったら、もう一度じっくり見せてください!」


「いくらでも」



帰り道は順調だった。

改良した荷台車のおかげで、大量の荷物を積んでも揺れは少ない。


三日後――。


「おーい!戻ったぞー!」


村へ着くと、人々が一斉に集まってきた。


「おお!帰ってきた!」


「ずいぶん積んできたな!」


「そんなに売れたのか?」


誠は笑う。


「まあな!さあ、みんなに配るぞ!」


村人たちから歓声が上がった。



荷物を運び終えた夜。

誠は小屋でアイに尋ねる。


「アイ。あの町まで行ってみて、どうだった?」


『はい。情報を更新しました。想定より文明水準が高く、制度も整備されています』


「俺もそう思った。あの町との差が激しすぎる」


『はい。ミィナ様のお話では、現在の村は開拓村として移住した集団です。しかし、開拓支援は極めて限定的でした』


「確かにな。送り出しただけ……って感じだった」


『完全な推測ですが。開拓民には税の減免や土地所有権など、何らかの優遇措置が存在する可能性があります』


「なるほど……それはタタなら知ってるかもしれないな」


『質問を推奨します』


誠は立ち上がり、小屋の外へ出る。


すると――。


「うおっ!」


タタの驚く声が聞こえた。


「なんですか、この農具は!こっちは水車!この器も!村全部が宝の山じゃないですか!」


誠は苦笑する。


「……今は聞けそうにないな」


『はい。興奮状態です』


誠は空を見上げ、小さく笑った。


「まあ、明日でいいか」


新たな仲間を迎えた村。

その新しい一日は、もう始まろうとしていた。

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