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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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未知の味、新たな仲間

市場には、いつの間にか長蛇の列ができていた。


「一本くれ!」


「こっちは二本!」


「さっきの黒いタレのやつ!」


「いや、茶色い方も食べてみたい!」


次々と注文が飛ぶ。


「はいよ!」


ミィナは慣れた手つきで代金を受け取り、串を渡していく。


「次のお客さーん!」


串焼き屋の親父は汗だくになりながら炭火の前に立っていた。


「焼きが追いつかねぇ!もっと肉持ってこい!」


その横では、誠がひたすら串を打ち、味噌や醤油を塗って仕込みを続ける。


「親父さん、こっち焼き上がる!」


「よし! どんどん並べろ!」


香ばしい匂いが市場中に広がり、人は減るどころか増える一方だった。



数時間後。


「……終わった」


最後の一本が売れた。


「完売だ!全部売れたぞ!」


親父は腹を抱えて笑う。


「はっはっはっ!今日は人生一番の売り上げだ!若いの!その調味料を売ってくれ!」


誠も笑う。


「もちろん!実は全然売れなくて困ってたんだ。」


親父は豪快に笑った。


「くくく!これで俺も勝ち組だ!はっはっは!」


その時だった。


「うおおおおーーーっ!!」


市場の向こうから、大声が響いた。


「……ん?」


誠が振り向く。

全力でこちらへ走ってくる男がいた。


「あれは……」


ミィナも目を細める。


「さっきの案内所の人じゃない?」


男は息を切らしながら飛び込んできた。


「はぁ……はぁ……やっぱり!やっぱり、あんた達だったか!」


「何だ?」


誠が首を傾げる。

男は肩で息をしながら続けた。


「組合員が昼に珍しい串焼きを買ってきたんだ!食べた瞬間、全員が驚いた!詳しく聞けば、見たこともない調味料を使っていると言う!それで、もしやと思って飛んできた!」


誠は苦笑する。


「何か問題でも?」


男は勢いよく指を突き付けた。


「大問題だ!この未知の食材!登録しておらんだろう!」


「……え?」


誠は目を丸くした。


「食材も登録できるのか?」


男も驚く。


「もちろんだ!」


その横で、串焼き屋の親父の顔色が真っ青になる。


「ま、まさか……未登録品だったのか!?俺、勝手に売っちまったぞ!罰金か!? 営業停止か!?」


男は大きく手を振った。


「安心しろ!未登録品なら問題ない!勝手に他人の登録品を使った訳ではない!」


親父はその場に座り込んだ。


「よ、良かったぁ……寿命が縮んだ……」



男は誠へ向き直る。


「誠殿だったな?」


「ああ」


「早急に登録してもらう!それと、村へ帰る前では間に合わん可能性がある。組織員を一人同行させる!もうすぐ到着するはずだ!」


「同行?」


誠が聞き返した、その時だった。


「はぁ……はぁ……」


小柄な人影が市場へ駆け込んできた。


肩まで届く茶色の髪。少し尖った耳。

ずんぐりした体格。


大きな革鞄を背負い、小さなハンマーを腰に提げている。


「間に……合いました!」


男は振り返る。


「おお!来たか!」


小柄な女性は背筋を伸ばえ、ぺこりと頭を下げた。


「初めまして!私はドワーフ族のタタと申します!本日より、誠様の登録業務および技術調査を担当いたします!」


誠は思わず目を丸くした。


「ドワーフ……本当にいたのか」


タタは胸を張る。


「はい!鍛冶と技術、それから新技術の記録は、私たちドワーフ族の得意分野です!」


アイが小さく振動する。


ブーン。


誠が画面を見る。


『誠様。ドワーフ族を確認。金属加工・建築・技術管理に優れる種族である可能性が高いです。同行による情報収集価値は非常に高いと判断します』


誠は画面を閉じ、小さく笑った。


「よろしく、タタ」


タタは元気よく敬礼した。


「はい!よろしくお願いいたします!」


市場で生まれた新しい味。

そして、その味が呼び寄せた新しい出会い。

誠たちの旅は、また一歩、大きく広がろうとしていた。


タタは、さっそく手引き荷台車の前にしゃがみ込んだ。


「なるほど……なるほど……」


車輪を外し、板ばねを指で押し、車軸を覗き込む。


「これが、さっき話に出ていた足回りですか」


誠とミィナは黙って見守る。


「確かに画期的な仕組みですね」


タタは感心したように何度も頷く。


「荷台の揺れを吸収する発想は素晴らしいです。ですが――」


そこで、鉄の金具を指先で軽く叩いた。


「鉄の鍛え方が甘いですね」


「え?」


「素人に毛が生えた程度です」


誠は苦笑いする。


「ぐっ……」


タタは悪気なく続けた。


「ですが、設計思想は面白いです。本職の鍛冶師が製作すれば、もっと軽く、もっと丈夫にできます。板ばねも改良できますし、車軸も長持ちするでしょう」


「なるほどな……」


誠は素直に頷いた。

確かに、自分は鍛冶を始めてまだ間もない。

アイの知識を頼りに作っただけで、職人の技術には遠く及ばない。


その時だった。


ブーン。


アイが小さく震え、誠が画面を見る。


『……ぷっ』


「おい」


『素人認定、おめでとうございます』


「笑うな!」


『事実ですので』


「慰めろよ!」


『ですが、作ったのは誠様です。技術は経験で向上します』


「……それなら、まあいいか」


誠は肩をすくめた。

タタは満足そうに荷台車を一周すると、ぱんっと手を叩いた。


「では!これから村までご一緒しますので、よろしくお願いいたします!もう夕暮れですので、本日は宿を用意しております!こちらへどうぞ!」



石畳の通りを歩き、案内された建物の前で誠は足を止めた。


「へぇ……」


二階建ての立派な建物。


入口には木製の看板が掛けられ、多くの旅人が出入りしている。


「この世界の宿って、初めてだな」


「私は昔、一度だけ泊まったことあるよ」


ミィナが懐かしそうに言った。

中へ入ると、受付の女性が笑顔で迎えてくれた。


「お待ちしておりました。こちらがお部屋の鍵になります」


女性は鍵を一つ差し出した。

誠は首をかしげる。


「あれ?鍵、一つだけですか?」


受付の女性とタタは、不思議そうな顔をする。


「はい?ご夫婦ですよね?」


「……え?」


誠とミィナの動きが同時に止まる。


「それでは、ごゆっくりお休みください。明日の朝八時に、お迎えに参りますので!」


にこやかに一礼すると、受付の女性は奥へ戻っていった。


しばしの沈黙。

誠は恐る恐るミィナを見る。

ミィナも、ゆっくりと誠を見る。


「……」


「……」


その空気を破ったのは、アイだった。


ブーン。


『誠様。周囲の認識では、お二人は夫婦として判断されているようです』


「余計な分析するな!」


誠が思わず小声で突っ込むと、ミィナは耳まで真っ赤にしながら顔をそむけた。


「……と、とりあえず部屋、行こう」


「そ、そうだな……」


二人はぎこちない足取りで、鍵を握りしめたまま階段を上がっていった。

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