表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/124

市場で生まれた新しい味

「しかし……あんな組織があるとはな」


総合案内所を出ながら、誠は振り返った。

ミィナも苦笑する。


「うーん。滅多に寄らないし、私もあんな所があるなんて知らなかった」


「そうか……」


村で暮らしていた頃は、市場で物を売って帰るだけだったのだろう。


「よし」


誠は気持ちを切り替える。


「今度は市場だ!」


「そうだな! 売れるといいな!」



市場へ足を踏み入れると、誠は思わず立ち止まった。


「……すごいな」


通りの両側には、屋台がずらりと並んでいる。


焼きたてのパン。香ばしい串焼き。

鉄板の上で炒められる麺料理。干し肉や干し魚。色鮮やかな布や服。生活雑貨。

見たこともない香辛料。


人々の笑い声と呼び込みが絶えず響いていた。


「この辺りにしよう」


ミィナが空いている場所を見つけ、荷台から商品を降ろし始める。


陶器。革製品。干し肉。干し魚。

そして、味噌と醤油。


「さあ、開店だ!」



最初に売れたのは陶器だった。


「丈夫そうな器だな」


「この革袋もいい」


干し肉や干し魚も順調に売れていく。


だが――。


「……あれ?」


誠は首を傾げた。

味噌と醤油だけが、まったく売れない。

誰も近寄ろうともしない。

ミィナが腕を組んで唸る。


「なんでだよ……こんなに美味いのに!」


誠も考え込む。


その時だった。


ブーン。アイが振動する。誠は画面を見る。


『誠様。味噌・醤油は、この地域では未知の食品です。用途が分からず、警戒されている可能性が高いと推測します』


「……なるほど」


確かに。村でも最初は警戒された。

食べ方を知らなければ、誰も手を出さない。


「だったら――」


誠は立ち上がった。


「食べてもらえばいい」



近くで串焼きを売っている屋台へ向かう。


「親父さん」


「ん?」


「串焼きを何本か譲ってくれないか?それと少しだけ、この炭火を貸してほしい」


店主は怪訝そうな顔をした。


「串ならいいが……炭火?何する気だ?」


「売上が少し増えるかもしれない」


店主は笑った。


「はっ! 面白ぇ若造だ!いいだろう。好きにしな」


誠は串焼きを受け取り、小瓶を取り出した。


「おいおい!」


店主が目を丸くする。


「その真っ黒な液体は何だ?まさか肉にかけるのか?」


「そう。見ててくれ」


誠は串焼きに醤油を塗る。

そして再び炭火へ。


ジュゥゥゥ……


醤油が炭へ落ちた瞬間、香ばしい煙が立ち上った。


「……っ!」


店主の鼻がぴくりと動く。


「なんだ、この匂い……!」


周囲を歩いていた人たちも足を止めた。


「いい香り……何を焼いてる?」


誠は焼き上がった串を店主へ差し出す。


「食べてみて」


店主は恐る恐る一口。


そして――。


「……!!」


目を見開いた。


「美味ぇ!!なんだこれ!肉の味が全然違うぞ!」


誠は笑う。


「どうだ?少しの間、一緒に商売しないか?」


店主は即答した。


「乗った!!」


二人は力強く握手を交わした。



誠は今度は味噌を取り出す。

店主が顔をしかめた。


「今度は何だ?泥みたいなもん持ってきたな。腐ってねぇだろうな?」


「違う違う」


誠は苦笑しながら味噌を薄く塗る。

再び火へ。


ジュゥゥゥ……


今度は甘く香ばしい香りが立ち上る。


「……さっきと違う!またいい匂いだ!」


店主は串を受け取り、一口食べる。


「……うまい!!これも美味ぇ!さっきとは全然違う味じゃねぇか!」


「だろ?これも商品だ」


店主は笑いながら頷いた。


「よし!決めた!」


勢いよく屋台の前へ出る。


「おーい!新商品だー!香ばし焼き串だぞ!」


人々が集まってくる。


「新商品?」


「さっきからいい匂いしてたやつか?」


「一本くれ!」


最初の客が一口食べた。


「うまっ!!」


その声で人がさらに集まる。


「俺も!」


「こっちも一本!」


「あの黒い液体は何だ?」


「こっちの茶色いのも食わせてくれ!」


あっという間に屋台の前には行列ができていた。

店主は忙しく串を焼きながら、大声で笑う。


「今日は大当たりだ!若造!この調味料、とんでもねぇな!」


誠も笑って答えた。


「知らない物は、まず食べてもらうのが一番だからな」


少し離れた場所で見ていたミィナは、呆れたように肩をすくめた。


「……市場まで驚かせるとはね」


ブーン。


『誠様。味噌・醤油の認知度が急速に上昇しています。今後、継続的な需要が見込めます』


「やっぱり」


誠は行列を見つめながら笑った。


「売るだけじゃ駄目なんだな。美味いって知ってもらって、初めて商品になる」


市場には今日、新しい香りが生まれた。


そしてその香りは、人から人へと広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ