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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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初めての市場

昼過ぎ。


街道を下り切ると、目の前に大きな村が広がった。


誠は思わず立ち止まる。


「……すげぇ」


思わず声が漏れた。


人が多い。今まで暮らしてきた開拓村とは比べ物にならない。


何百人もの人々が行き交い、荷台車が何台も街道を出入りしている。


二階建ての建物まで建っていた。


「家が二階建てなんだな……」


一階は大きく開かれ、布や木工品、食料などが並べられている。


どうやら一階は店。二階は住居になっているらしい。


家畜を引く農夫。荷車を押す商人。

剣を腰に下げた旅人。鎧姿の兵士。


あらゆる人々が同じ場所を行き交っていた。


鍛冶屋からは、


カンッ!カンッ!


と鉄を打つ音が響く。


香ばしいパンを焼く匂い。

肉を焼く香り。

甘い果物の匂いまで漂ってくる。


子どもたちは元気に走り回り、商人たちは大声で客を呼び込んでいた。


「……すげぇ。本当に町だ」


誠は圧倒されながら呟いた。


その時、ポケットの中で小さく震えが伝わる。


ブーン。


誠は慌てて周囲を確認し、小さく画面を覗いた。


『周囲に多数の人物を確認しました』


『音声会話は控えます』


『以後は振動で通知します』


誠は小さく頷く。


「ありがとな、アイ」



隣では、ミィナが懐かしそうに町を見つめていた。


「あそこの井戸……」


指を差した先には、大勢の人が集まる石造りの井戸がある。


「子どもの頃、よく遊んだんだ」


さらに少し歩きながら笑う。


「あっ、あの鍛冶屋のおじさん、まだ店やってる」


煙突から煙が立ち昇る工房を見つめるミィナの表情は、どこか嬉しそうだった。


「懐かしい?」


「うん」


少し照れくさそうに笑う。


「やっぱり故郷だからね」



市場へ近付くにつれ、人通りはさらに増えていく。


すると、不意に声が飛んだ。


「……おい!」


ミィナが振り向く。


「あれ?」


「ミィナじゃないか!」


店先から男が駆け寄ってきた。


「生きてたのか!開拓村へ行ったって聞いたぞ!」


「久しぶり!」


次々と知り合いらしい人たちが集まってくる。


「元気だったか?心配してたんだぞ!」


ミィナは笑顔で一人一人に応えていた。

その中の一人が誠を見る。


「そっちの兄ちゃんは?」


ミィナは誇らしげに紹介した。


「一緒に開拓村へ来た仲間だよ」


「誠っていうの」


「よろしくお願いします」


誠が頭を下げると、男たちも気さくに笑った。


「よろしくな!」


「ミィナの仲間なら歓迎だ!」



そのまま市場へ向かって歩いていると、周囲の視線が少しずつ集まり始めた。


「おい、あの荷車見ろ」


「なんだ?」


「揺れてねぇぞ」


「あんなに荷物積んでるのに?」


別の商人も近付いてくる。


「足回りが違う……」


「改造してあるのか?」


誠は苦笑した。


「少しだけ工夫しました」


商人は荷台車の車輪や足回りをしゃがみ込んで眺める。


「へぇ……」


「石畳でも荷崩れしそうにないな」


「面白いな」


市場へ入る頃には、何人もの商人が荷台車を見ていた。



その様子を見ていた一人の中年男性が、ゆっくりと近付いてくる。

身なりの良い服装に、腰には帳面を提げている。


「失礼」


落ち着いた声だった。


「私はこの市場を管理しております」


誠は軽く頭を下げる。


「初めまして」


男は荷台車へ視線を向けたまま言った。


「その荷車……」


「少し、見せていただいてもよろしいでしょうか?」


誠は荷台車を見つめ、小さく微笑んだ。


どうやら――


この村で最初に注目されたのは、売り物ではなく荷台車だったようだ。

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