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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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留守を守る村

誠たちを見送った翌朝。


村には、いつもより少しだけ静かな朝が訪れていた。

広場の片隅では、数人の男たちが誠の作った手引き荷台車を眺めている。


「あの荷台車……便利そうだったな」


一人がぽつりと呟く。


「ああ」


別の男も頷いた。


「荷物をあれだけ積んでも、ほとんど揺れてなかった」


「普通の荷車ならガタンガタンなのにな」


荷台車の足回りを思い出しながら、一人が腕を組む。


「誠殿が改造してるところ、少し見てたよな?」


「見てた見てた」


「……俺たちでも作れそうじゃないか?」


「そうだな」


男たちは顔を見合わせ、笑った。


「帰ってくるまでに、一台作って驚かせてやるか!」


「おお、それ面白ぇ!」


誰かに命じられたわけでもない。

自然と、新しい挑戦が始まろうとしていた。



その頃。


村長は広場の予定板の前に立っていた。

木の板には今日の作業が書かれている。


・水路点検 二人

・畑の手入れ 四人

・窯 二人

・保存庫整理 一人


村長は板を見回し、静かに口を開いた。


「今日は水路点検二人、畑四人、窯二人だな」


「了解!」


返事をした村人たちは、それぞれ自然と持ち場へ向かっていく。


誰も慌てない。誰も指示を待たない。



畑では、鉄の鍬が軽快に土を返していた。


ザクッ、ザクッ。


「やっぱ鉄は楽だな」


「石には戻れん」


笑いながら畑を耕す男たち。


一方、水路では若者たちが流れを確認している。


「少し草が詰まってるぞ」


「こっちは流れ過ぎだな」


「午後になったら堰を一枚足そう」


誰かが教えたわけではない。

村人同士で相談し、判断し、動いていく。


窯では女性たちが器を焼いていた。


「焼き色、いいね」


「もう少し並べられるよ」


「次は保存壺を多めにしよう」


半地下窯から立ち上る煙が、穏やかに空へ昇っていく。



昼前。


村長は村をゆっくり歩きながら、小さく笑った。


「誠殿がおらんでも、普通に回るな」


隣を歩く年配の男も頷く。


「ああ。もう皆、覚えたからな。あの人が教えてくれたことが、今じゃ当たり前になっとる」



保存庫では、女性たちが干し竹の子を並べ替えていた。


「これ、あと一棚分くらい作れそうだね」


「来年はもっと多く干そう」


「味噌も、もう一樽仕込んでおこうか」


「そうだね」


保存食を増やすことも。

味噌を仕込むことも。

誰かの特別な提案ではなくなっていた。


それが、この村の日常になっていた。



夕方。


広場では、男たちが木材を削っている。


「この辺、もう少し削るか?」


「板ばねって、こう曲げてたよな」


「試しながらやってみよう」


誠が残した荷台車を思い出しながら、新しい一台を作ろうとしていた。


「帰ってきたら驚くぞ」


「『いつの間に覚えたんだ』ってな」


笑い声が広場に響く。



夕焼けが村を赤く染める頃。

村長は村の入口に立ち、遠くの山を見つめた。


「あの辺りまで、もう歩いた頃か」


静かに空を見上げる。


「無事に着くといいな」


その言葉は、風に乗って山の向こうへ流れていった。


その頃――。


誠たちは荷台車を引きながら、山道をゆっくりと歩き続けていた。

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