表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/120

初めての街道

朝。


焚き火の灰を土で覆い、野営の跡を丁寧に片付ける。


「忘れ物はないな?」


「うん、大丈夫!」


ミィナが荷台車の縄を握り直し、誠も荷物の固定を確認した。


改造した荷台車は、大量の革製品や陶器、保存食を積んでもしっかりと安定している。


「よし、行こう」


三人は朝日に照らされる山道を歩き始めた。



山道を進むこと数時間。


木々の間から差し込む光が次第に強くなり、視界が開けていく。


そして――。


「……広い」


誠は思わず足を止めた。


目の前には一本の大きな道が、遥か彼方まで真っ直ぐ続いていた。


踏み固められた土の道。


村の細い獣道とは比べ物にならない幅がある。


ミィナが少し誇らしげに笑う。


「ここが街道だよ」


「これが……街道」


誠はゆっくりと辺りを見回した。


道の上には多くの人々が行き交っている。


荷台車を引く商人。


大きな荷物を背負った旅人。


剣や槍を持った冒険者らしき集団。


鎧を着て街道を巡回している兵士のような者たち。


「思ったより……人が多いな」


『交易路を確認』


アイが淡々と報告する。


『交通量は想定以上です』


『周辺地域の物流中心地と推測します』


「物流の中心か……」


誠は少しだけ胸が高鳴った。


今まで自分が知っていた世界は、あの小さな村だけだった。


だが、この街道はその先にある無数の村や町へと繋がっている。


世界が一気に広がったような気がした。



しばらく歩きながら、誠は荷台車へ視線を向ける。


「……うん、問題ないな」


荷物はまったく揺れていない。


他の荷台車を見ると、


ガタン。


ゴトン。


車輪が石を越えるたび、大きく揺れ、積み荷が跳ねている。


「改造した甲斐があったな」


板ばねを組み込み、車軸を補強した効果は予想以上だった。


これなら荷崩れの心配もほとんどない。


その時、隣を歩いていた商人が不思議そうな顔で声を掛けてきた。


「兄ちゃん」


「はい?」


「その荷台車……改造してあるのか?」


誠は少し照れ笑いを浮かべた。


「ちょっとだけです」


商人は車輪や足回りをじっと見つめる。


「変だと思ったんだよ。石を踏んでも荷物が跳ねねぇ」


「うちなんか毎回荷崩れするのにな」


「足回りに細工でもしたのか?」


「まあ……そんな感じですね」


詳しく説明するのは少し面倒だったので、誠は曖昧に笑った。


商人は感心したように頷く。


「面白ぇこと考えるもんだ」


「長旅じゃ、その違いは大きいぞ」


誠は荷台車を軽く叩いた。


「作って良かったな」


『板ばねの効果は十分確認できました』


『長距離輸送への有効性も実証されています』


「これなら村との往復も楽になるな」



再び歩き始める。


街道には絶えず人が行き交い、荷車の軋む音や人々の話し声が風に乗って流れてくる。


ミィナが周囲を見回しながら言った。


「街道に出ると安心だけどね」


「その分、人も多い」


「変な人もいるから気を付けて」


「解った」


誠は周囲を見渡した。


荷物を狙う盗人もいるかもしれない。


人が多いということは、それだけ様々な人間が集まるということだ。


『警戒は継続します』


「頼むよ、アイ」



午後。


街道はゆるやかな丘へと続いていた。


三人は荷台車を引きながら坂を登る。


そして頂上へ辿り着いた瞬間――


「あっ……」


誠は思わず声を漏らした。


遠くに、一つの村が見える。


煙がゆっくりと空へ昇り、人々が行き交う姿も小さく見えた。


今までいた開拓村より、ひと回りもふた回りも大きい。


「あれが……」


誠は目を見開いた。


ミィナが静かに頷く。


「あれが、私たちの元いた村だよ」


誠はその景色をしばらく黙って見つめていた。


開拓村しか知らなかった自分が、初めて訪れる”外の世界”。


その先には、どんな人と出会い、どんな文化が待っているのだろうか。


期待と少しの緊張を胸に抱きながら、誠は荷台車の取っ手を握り直した。


「よし……行こう」


三人はゆっくりと坂を下り、村へ向かって歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ