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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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山道、その先へ

翌朝。


村の広場には、朝早くから多くの村人が集まっていた。


改造を終えた荷台車には、干し肉、干し竹の子、陶器、革袋、味噌など、交易品がぎっしりと積み込まれている。


「誠!」


「気を付けてな!」


「良い取引をしてこいよ!」


あちこちから声が飛ぶ。


誠は照れくさそうに頭をかいた。


「みんな、行ってくる」


隣ではミィナが荷台車の縄を引き締めている。


「忘れ物なし!」


「よし、出発しよう!」


誠は一度だけ村を振り返った。


一年間暮らした村。


何も無かった場所が、今では大切な居場所になっている。


「……行くか」


「うん!」


二人は荷台車を引きながら、村を後にした。



山道は思っていた以上に歩きやすかった。


改造した荷台車は板ばねのおかげで揺れが少なく、車輪も滑らかに回る。


「思ったより軽いな」


「前の荷車とは大違いだよ」


ミィナが笑う。


「昔は石に乗り上げるたびに荷物が飛び跳ねてたからね」


『板ばねが衝撃を吸収しています。荷物への負荷は従来比で約四割減少しています』


「数字はともかく、成功ってことだな」


『はい』


誠は周囲を見渡した。

どこまでも続く森。


木漏れ日。


聞いたことのない鳥の鳴き声。


「……こんな景色だったのか」


村の外へ出たのは、これが初めてだった。


『左側の樹木は建材に適しています』


「へぇ」


『足元の草は止血作用を持つ薬草です』


「そんな物まであるのか」


誠は苦笑した。


「村の周りだけでも、まだ知らないものばかりだな」


『未知の情報が多数存在します』



昼頃。


小川のほとりで休憩することにした。


誠は鍋に水を張り、干し肉と干し竹の子を入れる。


少しして、味噌を溶き入れると、優しい香りが立ち上った。


「いただきます」


二人は木の椀を手に取る。


ミィナは一口飲むと、小さく笑った。


「……昔は、こんなご飯食べられなかったな」


「そうなのか?」


「うん」


ミィナは遠くを見つめながら話し始めた。


「私たち、もともとはもっと大きな村に住んでたんだ」


「そこから開拓民として山へ入ったの」


「開拓民?」


「そう。新しい土地を切り開いて暮らす人たち」


誠は黙って聞く。


「山へ来た人もいるし、海を目指した人たちもいるって聞いた」


「海か……」


『現在位置から海までの距離は不明です』


「まあ、いつか行くことになるかもな」


ミィナは頷いた。


「元の村は、人もそこそこ多かったよ。市場もあって、今の村よりずっと色んな物が並んでた」


「じゃあ楽しみだな」


「でも……」


ミィナは少し笑う。


「今なら、こっちの方が良い暮らしかもしれない」


誠は少し照れくさくなった。



午後。


再び山道を歩いていると、誠が地面を見て足を止めた。


「ミィナ」


「ん?」


「これ、足跡じゃないか?」


土には、大きな蹄の跡が残っている。


誠は思わず周囲を見回した。


「近くにいるのか?」


ミィナはしゃがみ込み、跡を見て笑った。


「ああ、大丈夫」


「この辺りは鹿だよ」


「鹿?」


「見て、この形」


誠もしゃがみ込む。


『分析します』


数秒後、アイが答えた。


『鹿の足跡と一致します。危険性は低いと判断します』


誠は胸をなで下ろした。


「びっくりさせるなぁ」


「誠はまだ山に慣れてないね」


ミィナは楽しそうに笑った。


「そのうち足跡だけで分かるようになるよ」



日が傾き始めた頃。


二人は開けた場所で野営の準備を始めた。

荷車を風除けにし、焚き火を起こす。


ぱちぱちと薪が爆ぜる音が、静かな山に響いていた。


「今日はここまでだね」


「ああ」


ミィナは火を見つめながら言う。


「もう明日には街道へ出るよ」


「街道か……」


誠は少し楽しみになっていた。


その時だった。

ミィナがじっと誠を見つめる。


「ねぇ」


「ん?」


「いい加減、その四角いのは何?」


「え?」


「前から思ってたんだけど」


ミィナは苦笑した。


「いつも小声で話してるでしょ?独り言かと思ってたけど……誰かと会話してるみたいだったし」


誠の顔が固まる。


「……バレてた?」


「当たり前だよ」


ミィナは肩をすくめた。


「ぶつぶつ喋ってるから、正直ちょっと気持ち悪かった」


「あはは……」


誠は苦笑いするしかなかった。


「紹介するよ。俺の相棒、アイ」


『はじめまして』


『私はアイと申します』


突然聞こえた声に、ミィナは目を丸くした。


「しゃ、喋った!?」


『よろしくお願いいたします』


「へぇ……」


ミィナは不思議そうに誠の手元を眺める。


「不思議な魔道具なんだね」


誠は少し迷ったが、笑って頷いた。


「まあ……そんなところかな」


『説明としては概ね問題ありません』


「おい」


思わず笑いがこぼれる。

ミィナもつられて笑った。


「なんか面白い相棒だね」


「だろ?」


焚き火の火が、静かに揺れる。

誠は寝転び、満天の星空を見上げた。


「……村の外にも、こんな世界があったんだな」


山の夜風が、静かに二人の間を吹き抜けていった。

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