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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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村の外へ

完結編をお読みいただき、本当にありがとうございます。


ここから始まるのは、その後の物語です。


冬を越え、春を迎え、村は「生き延びる」段階から、「豊かに暮らす」段階へと歩み始めました。


しかし、誠の挑戦はまだ終わりではありません。


村の外の世界との出会い。

新たな技術と制度。


一つの村づくりから始まった物語は、少しずつ世界へと広がっていきます。


これからも、誠とアイ、そして村の仲間たちの歩みを、ゆっくり見守っていただけたら嬉しいです。


それでは、新章をお楽しみください。

朝の村は、いつも通り穏やかだった。


水田では風に揺れる稲が青々と葉を伸ばし、畑では村人たちが黙々と手を動かしている。

水路には澄んだ水が流れ、窯では器を焼く煙が静かに空へ昇っていた。


誠は、その光景を眺めながら小さく笑う。


「……本当に落ち着いたな」


『はい。現在、村は安定した運営状態を維持しています』


「そうだな」


もう食料に追われることもない。

保存庫には干し肉や干し竹の子が並び、味噌や陶器、革製品も少しずつ増えてきた。


そんな穏やかな朝、村長がゆっくりと歩み寄ってきた。


「誠殿」


「村長、どうしました?」


村長は少し遠くを見つめながら言った。


「そろそろ……我々が元いた村へ行ってみぬか?」


「元いた村?」


「そうだ。あそこには知り合いもいる」


誠はその言葉に少し考え込む。


「そうか……」


今まで頭の中は、この村のことでいっぱいだった。


生き延びること。冬を越えること。

食料を確保すること。


だから気付かなかった。


「……今までは売る物なんて無かったんだ」


村長は静かに頷く。


「その通りだ。持って行く食料すら惜しかった」


誠は保存庫の方へ目を向けた。


干し肉。干し竹の子。陶器。革袋。骨針。味噌。


今なら、村の外へ持ち出せる物がある。


『誠様』


アイが静かに話しかける。


『外部との接触を推奨します』


「理由は?」


『人口、文化、技術、地理、資源、流通。新たな情報を得ることで、分析精度は大幅に向上します』


「なるほど」


『未知の情報は、今後の村の発展に大きく寄与します』


誠は苦笑した。


「情報が増えれば増えるほど、お前も賢くなるってことか」


『はい』


「なら……行くか」



その日の午後。


広場に村人たちが集まり、交易へ持って行く品を並べ始めた。


「干し肉は外せんな」


「干し竹の子も珍しいんじゃないか?」


「革袋は丈夫だから売れそうだ」


「陶器も持って行こう」


誠も頷く。


「全部は持って行けない。売る物と、自分たちが使う物を分けよう」


村長も続ける。


「向こうで手に入れたい物も考えねばならん」


「塩、布、それに種も欲しいですね」


「家畜が手に入ればもっと良い」


交易は、ただ物を売るだけではない。

村に足りない物を持ち帰る機会でもある。



だが、その時だった。


「誠、荷車を見てくれ」


ミィナに呼ばれ、村外れへ向かう。

そこにあったのは、古びた木製の荷車だった。

車輪は削れ、軸は軋み、荷台も少し傾いている。


「……これで三日も走るのか?」


「いつも途中で壊れそうになる」


ミィナが苦笑する。


誠も荷車を押してみた。


「重いな……」


『誠様』


アイの声が響く。


『荷台車の改良を推奨します』


「やっぱり言うと思った」


『鉄を用いた車軸補強、車輪の補強、荷台の強化を提案します』


誠は頷く。


「それだけか?」


『加えて、板ばねの導入を推奨します』


「板ばね?」


『荷台への衝撃を吸収します。荷物の破損防止と移動速度の向上が期待できます』


ミィナが目を丸くする。


「そんな物まで作れるの?」


「作れるかどうかは分からない。でも、やる価値はある」


村長も荷車を見つめながら頷いた。


「急ぐ旅ではない。準備は万全にしたい」


誠は荷車を軽く叩いた。


「よし。まずは、この荷車を生まれ変わらせよう」



夕暮れ。


鍛冶場では、さっそく鉄材が運び込まれ始めていた。


ミィナは必要な荷物を書き出し、村長は交易品の確認を進める。


誠は荷車を眺めながら、小さく笑った。


「一年間、この村だけを見てきた」


そして、村の外へ続く道を見る。


「次は……世界を見る番だな」


『はい、誠様』


『新たな情報収集を開始します』


静かな村に、新しい旅の準備が始まっていた。


数日間をかけて、手引き荷台車の改造が進められた。


鉄で車軸を補強し、荷台の骨組みも組み直す。

車輪の歪みを修正し、荷重が均等に掛かるよう何度も調整を繰り返した。


その中でも、一番苦労したのは板ばねだった。


「うーん……思ったより硬いな」


何度も熱しては叩き、曲げては戻しを繰り返す。


『もう少し反りを小さくしてください』


「これくらいか?」


『はい。その状態で固定します』


試作を何本も作り直し、ようやく納得のいく板ばねが完成した。


荷台へ組み込み、村の周囲を何度も走らせる。


「どうだ?」


「前より全然揺れねぇ!」


「荷物が跳ねなくなったぞ!」


村人たちの評価も上々だった。


坂道や悪路も試したが、車軸に軋みはなく、車輪も外れる気配はない。


『耐久性、走行性能ともに問題ありません。長距離移動に耐えられると判断します』


「よし、これなら安心して行けるな」



出発の日。


村人たちは朝早くから広場へ集まり、交易品を次々と荷台へ積み込んでいく。


干し肉。干し竹の子。陶器。革袋。骨針。味噌。


保存食や村で作られた品々が積み重なり、荷台は溢れんばかりの荷物でいっぱいになった。


「こんなに積めるとはな……改造して正解だったな」


ミィナは荷台を一周見回し、大きく頷く。


「準備はできた」


村長も静かに荷台へ手を添えた。


「では、出発しよう」


誠は村の外へ続く道を見つめる。


一年間守り続けた村を背に、新しい世界への第一歩が、今まさに踏み出されようとしていた。

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