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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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それぞれのジャムと懐かしの味

数日後。

町を歩いていると、あちこちから甘い香りが漂ってくる。


「お?」


『ジャム作りが広がっているようです』


「だな」


どうやら各家庭で、それぞれ工夫しているらしい。


「誠ー! ちょっと食べてみて!」


「俺が?」


「そう!」


渡されたパンには、赤いジャム。


「これは野苺か?」


「そうよ!」


「じゃあ、いただきます」


ぱくっ。


「うん。美味い」


「本当?」


「うん。俺が作ったのと少し違うな」


『当然です』


「え?」


『材料の違いだけでなく、砂糖の量や煮詰める時間によっても味は変化します』


「なるほどな」


別の家では――


「こっちは木苺で作ったんだ!」


「へぇ」


「こっちは砂糖を少なくしてみたの」


「こっちは逆に、甘くしたのよ」


「同じ作り方なのに、こんなに違うのか」


『各家庭で独自の味が生まれています』


「面白いな」


俺が感心していると――


「これ……売れるんじゃない?」


「え?」


町人の一人が、瓶に入ったジャムを見る。


「パンと一緒に売ったら、買う人がいるんじゃないか?」


「確かに……果物によって味も違うし。何種類か並べたら楽しそう」


「……」


俺はアイを見る。


『誠様』


「分かってる」


嫌な予感がする。


そして――


「誠殿!」


「来た……」


タタが飛んでくる。


「今の話、聞きました!」


「聞いたのか」


「商品化しましょう!」


「またかよ……」


「はい!」


タタは瓶を手に取る。


「町の特産品が、また一つ増えます!」


「まあ……」


俺は苦笑する。


「任せるけど……」


「お任せください!」


タタは嬉しそうに走り去っていった。


『商売になると判断したようです』


「本当に好きだな……」



その日の午後。


『誠様』


「ん?」


『更に簡単な飲み物を作りましょう』


「飲み物?」


『はい』


「シロップみたいな物か?」


『いえ』


「じゃあ何だ?」


『誠様にとっても、懐かしいかもしれません』


「懐かしい?」


『はい』


「何だろうな?」


『材料を取りに行きましょう』


「山へ?」


『はい』


「分かった」



山へ到着。


「来たけど……」


俺は辺りを見回す。


「何の木の実を採るんだ?」


『木の実ではありません』


「じゃあ何だ?」


『そこにある、松のような葉を採ってください』


「葉?」


『はい』


俺は近くの木を見る。


「これか?」


『はい』


「これでジャムを作るのか?」


『飲み物です』


「葉っぱで?」


『はい。多めに採ってください』


「分かった」


俺は葉を集める。


「これくらいでいいか?」


『十分です』



町へ戻る。


「まずは洗うか」


『はい』


俺は葉を水で綺麗に洗う。


「洗ったけど……」


『その容器に、縦にみっちり入れてください』


「こうか?」


葉を詰め込んでいく。


「……」


「結構入るな」


『そのくらいで問題ありません』


「入れたぞ」


『そうしましたら、水に砂糖を十パーセントほど溶かしてください』


「砂糖水か」


『はい』


俺は砂糖を溶かした水を作る。


「出来たぞ」


『容器へ入れてください』


「うむ」


葉が浸かるように砂糖水を注ぐ。


『キッチリと蓋をしてください』


「はいよ!」


蓋を閉める。


「これで?」


『はい』


「次は?」


『日が当たる場所に三日ほど置いてください』


「日が当たるところ?」


『はい』


「日陰じゃなくて?」


『日向です』


「……」


「本当にこれでいいのか?」


『はい』


「分かった」


俺は容器を日当たりの良い場所へ置いた。



三日後。


「……」


「三日経ったな」


『はい』


「結局、何が出来たんだ?」


『まず、容器ごと水で冷やしてください』


「冷やすのか」


『はい』


俺は容器を水に浸ける。


「うーむ……何が出来るんだ?」


『冷えてからのお楽しみです』


「アイがそんな言い方するの珍しいな」


『期待していただいて構いません』


「……」


ますます気になる。



「そろそろ良いかと」


『はい』


俺は容器を取り出す。


「よし」


蓋に手を掛ける。


「開けるぞ」


「……」


ぱきっ。


「ん?今、何か音がした?」


『はい』


「もう一度――」


プシューッ!


「ん?」


俺は目を丸くする。


「プシュー?」


容器から小さな泡が上がっている。


「まさか……」


俺は恐る恐る中身をコップに注ぐ。


シュワシュワ。


細かな泡が立っている。


「……」


「これ……」


『はい』


俺は一口飲む。ごくごく。


「――!?これは!?」


『どうでしょう?』


「サイダーか!?」


俺は思わず声を上げた。


「サイダーだ!」


『そのようです』


「懐かしい……!」


シュワシュワとした泡。ほんのり甘い。

そして、独特の爽快感。


「これ……町の人たちに飲ませたら、絶対喜ぶぞ!」


『はい』


俺はもう一口飲む。


「美味い!」


砂糖が村に広がったことで、ジャムが生まれた。そして今度は――甘いだけではない。

泡のある飲み物まで生まれた。


「……」


「砂糖って、すごいな」


『砂糖だけではありません』


「ん?」


『町の人々が、砂糖を使い始めたからこそ、新しい物が次々と生まれています』


「……なるほど」


今までは、誠が新しい物を作っていた。

町人たち自身が、手に入った物から新しい物を作り始めている。


「これから、もっと色々出てきそうだな」


『はい』


「楽しみだな」


『私も楽しみです』


シュワシュワと泡立つ飲み物を手に――誠は、これから始まる新しい食文化を想像するのだった。

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