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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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町の設計図

俺とミィナは、町の設計を始めたナナを眺めていた。


「……」


「……」


「ふふふ」


ナナが笑っている。

そして――


「シュッ、シュッ、シュッ」


藁半紙の上を、ペンがものすごい勢いで走っていく。


「……すげぇな」


「何だか楽しそうだな」


ミィナも少し引き気味に眺めている。


「ふふふ……ここをこうして……」


ナナは止まらない。


「ナナ、大丈夫か?」


「はい。大丈夫です!」


即答だった。


「むしろ楽しくて仕方ありません!」


「そうですか……」


俺とミィナは顔を見合わせた。



どうやらナナは、測量も普通の方法ではなかった。


「ここから……」


ナナが目を閉じる。

すると、周囲を確認するように少しだけ顔を動かした。


「この辺りが少し低いですね」


「分かるのか?」


「はい」


「どうやって?」


「スキル……でしょうか」


「でしょうか?」


「私にも詳しい原理は分かりません」


『魔法かスキルの可能性が高いです』


「アイも分からないのか」


『これまで確認した能力と同様、この世界では魔法として認識されている可能性があります』


「なるほどな」


ナナは地面の高低差を把握しているらしい。

しかも、それを頭の中で立体的に捉えているようだ。


「ここは少し高い。ここは低い。ここに水を通せば自然に流れる」


そして、それを藁半紙へ一気に書き込んでいく。


「まずは道。次に上下水道。そして住宅地。ここは商業区。こちらは工房区。農地はこの辺りを残して……」


みるみるうちに、村全体の姿が変わっていく。


「すげぇ……」


俺は思わず呟いた。

今まで俺たちは、一つずつ必要な物を作ってきた。


だがナナは違う。

最初から町全体を見ている。



「ここまで完成しました」


ナナが一枚の藁半紙を建築士へ渡す。


「ありがとうございます」


建築士は受け取った設計図を見る。


「この区画なら……」


今度は建築士が別の紙に書き始める。


「住居は三階建てにするか……いや、四階でも……三階の方が建設しやすい。しかし人口を考えると……」


二人で悩み始めた。


「なあ、誠」


ミィナが小声で言う。


「あれ、必要なのか?」


「俺もそう思う」


俺はアイを見る。


「アイ。あんな建物、本当に必要なのか?」


『恐らく、人口増加を見込んでいるものと思われます』


「人口増加か……」


『現在の人口だけを基準にすると、将来的に建て替えが発生する可能性があります』


「なるほど」


今、平屋を作る。人が増える。狭くなる。

壊す。新しく二階建てを作る。また人が増える。また壊す。


「それなら最初から三階や四階にしておいた方がいいのか?」


『長期的には、その可能性があります』


「時間も資材も無駄にならない」


『はい』


「なるほどな」


俺には思いつかなかった。



ナナはさらに設計図へ書き込んでいく。


「ここに倉庫。こちらには宿。市場はこの位置。商人の荷馬車がここから入って……荷物は倉庫へ。人は市場へ。なるほど……」


俺は見ているだけだった。

だが、どんどん町の形が出来上がっていく。


「……」


『誠様』


「何だ?」


『言いづらいのですが』


「嫌な予感がする」


『レンガのさらなる増産を推奨します』


「……」


「まじか!?」


『はい』


俺は設計図を見る。

確かに、建物が多い。


家。宿。倉庫。工房。市場。


そして、おそらく公共施設。


「これ、かなり大規模じゃないか?」


『はい。当初の想定より、かなり大規模になる可能性があります』


「やっぱりか……」


『当初の想定よりも、かなり大規模に――』


「言い直さなくていい!」


『失礼しました』


俺は頭を抱える。


「レンガ……今でもかなり作ってるよな?」


『はい』


「それでも足りない?」


『現状の生産量では不足する可能性が高いです』


「……」


「焼き窯を、もう一つ作るってことか?」


『はい』


「分かった」


俺は諦めた。


「村の職人に伝えてくる」


『推奨します』


「なんか最近、俺の仕事が発注係になってないか?」


『適材適所です』


「便利な言葉だな……」



俺はレンガ職人のところへ向かう。


「おーい!」


「誠殿か。どうした?」


「窯をもう一つ作りたい」


「またか?」


「町の設計が始まった」


「おう」


「思った以上に大きくなりそうだ」


職人は少し考える。


「……なら、窯を増やすしかないな」


「そうだな」


「レンガも増やす」


「頼む」


「U字溝もか?」


「……」


俺は少し黙った。


「たぶん」


「はっはっは!」


職人が笑う。


「忙しくなるな!」


「だな」


俺も苦笑する。

町の設計図が一枚できるたびに、必要な物が増えていく。


でも――それは同時に、町が少しずつ形になっている証拠でもあった。


「ナナが設計して、建築士が建物を決めて、村人が材料を作る。俺は……」


『発注係です』


「言うな!」


村に笑い声が響いた。

町を作るための準備は、少しずつ――いや。かなりの勢いで進み始めていた。

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