39話
リリベルの葛藤。
それは急にきた・・あんなにエリのこと大好きで、会いたくて、会えないことに泣きそうで・・こんなに愛してるのかと思うほど。
それなのに会うのが怖い。
会いたくないわけじゃない。
会いたいよ
ずっと渦巻く気持ち・・
そのことが、怖くなった。
でも、また愛おしくなる。
何この矛盾・・
わたしはいままで、恋愛をしたことがないまま今日まできた。
だからこそ、恋愛は幸せな気持ちになるのだとばかり思っていた。
実際は違ったの・・
苦しい・・いつも不安で、
離れている間にわたしのことを忘れてしまうんじゃないか?
誰かほかに素敵な人が現れてしまうんじゃないか?
わたしのこと嫌いになってしまうんじゃないか?
わたしとの婚約で縛ってしまうんじゃないか?
嫌いにならないで・・貴方を愛してる。
他の人なんて見ないで・・
縛ってでも・・貴方を誰にも渡したくない。
わたしの中にこんな感情があるなんて。
気づいた時には呆然とした。こんな醜い感情・・知られたくない。
貴方が誰かに微笑みかけるなんて、許せない。
わたしだけを見つめていて欲しい。
貴方はわたしのなの。
ふふ・・浅く乾いた笑いが出る。
わたし・・こんなに独占欲があって嫉妬心もあったのね。
恋は盲目、愛は人を狂わせる。
恋愛小説でそんな一説があったことを思い出す。
本当だったみたい。
貴方もわたしのこと好きだって、愛してるって言ってくれる。
でも・・わたしは・・自分に自信が無さすぎる、わかっているの。
だって、エリはあんなに素敵なのにわたしには何もないの・・誇れることも何もない。
エリのことは愛してる、失うなんてあり得ない・・でもだからこそ、早すぎたのかも。
貴方の隣に堂々と並べるような誇れる自分になるまで・・待っていて欲しいって思っちゃったの。
寂しい・・
会いたい・・
愛してる・・
貴方への気持ちを糧にして、頑張るから。
だから待っていて・・
エリが会いに来てくれたのに、決心が揺らぎそうで何も答えられなかった・・
まさか、さよならを言われるなんて。
わたしはさよならなんて嫌
国を出るって・・もう会えなくなっちゃう
わたしは・・
とんでもないことを。
でも、わたしだって諦めるなんて出来ない。
エリに贈った物全部、返されちゃった。しかもお揃いのものばかり。
もう・・繋がりが無くなってしまう・・(涙)
と、ふと大事なものを閉まっているチェストへ近寄る。
上から3番目は特別な引き出し。
エリからの贈り物や花を押し花にしたもの・・全部閉まってある。
そこに、この前エリに贈ったものとお揃いのブレスレットも閉まっておいたのだ。
コレだけは・・
エリの置いていった物の中にもなかった。
置き忘れたのかしら?
そっと手首に嵌めて、胸の前でぎゅっと握りしめる。
繋がってる。
わたしがいまやらなければいけないこと・・
謝りたい、ちゃんと話したい。
お父様へ頼んで、婚約の約束をそのままにしていて欲しいこと。
1年でいいから、修行も兼ねてエリを追いかけたいからロティ国へ行かせて欲しいこと。
小さな家を借りて、自分の力で生活していくこと。
この3点をお願いすることにした。
ロティ国には親戚もいないため、本当に一人でやっていかなくてはいけないけど・・
今度はわたしがエリに振り向いてもらう番。
わたしが頑張る番なんだ。
エリを追いかけるわ。
思い立ったが吉日、すぐにお父様へ話をしに行った。
話を聞いたお父様は、とてもびっくりしていたけど、わたしの話をしっかり聞いて気持ちを理解してくれた。
いくつか条件をつけられけれど。
1つ、婚約の約束は継続して保留にしておく。リドール家にもお父様のほうから連絡をすること。
2つ、1年で戻ってくること。
3つ、1年でエリッシュとの関係修復が出来なかった場合、お父様が決めた相手と婚約すること。
4つ、ケイを護衛に連れていくこと。
5つ、家はこちらで用意しておくから、そちらに住むこと。
6つ、1か月に1度は手紙をよこすこと。困ったことがあったらいつでも頼ること。
結構多かったけど、
やっぱり貴族令嬢だから、いきなり一人暮らしは難しいのだ・・女性の一人暮らしは危険だからケイを連れていけるのは心強い。
お母様と兄、義姉、姉達 への説明はしておいておくから、しっかりやってくるようにと。
「ベル、お前ももう大人だ。まぁ1か月ほど早いけど、人生はまだまだ長いんだ・・やりたいようにやってきなさい。ただね、これだけは言っておくよ。もし、エリ君とダメだったとしても、早まるな。他にも道はあるし、彼だけが男じゃないからね。わかったね??」
お父様は、わたしの肩へ手を置いてしっかりと話かける。
真剣な眼差しに、わたしもしっかりと頷く。
「お父様、ありがとうございます。いつも甘えてばかりで申し訳ありませんでした。条件についても、承知しました。不出来な娘だけど、どうか見守っていて下さい。」
そう言って、淑女の礼をとる。
1年は絶対に家に帰らないことを胸に留めて、早々に荷物を纏めに部屋へ戻った。
もう何も考えまい・・
進しかない。
わたしは成長したわたしとエリとの再会を望むから。
時々は振り返ることを許して・・
1時間後、こじんまりとした荷物を持って屋敷を出る。
街中から各地への定期馬車へ乗り込むことにした。
ケイもしっかりと荷物を纏めてきていた。
「ケイ・・ごめんなさいね? わたしの我儘に付き合わせてしまって。」
決心して出てきたものの、やっぱり申し訳ない。
「お嬢様、俺のことはいいんですよ。俺はお嬢様の護衛です、どこに行くにもついていきます。大丈夫ですよ。
エリッシュ様のこと諦めないでください・・」
ケイにもバレてたか。
少し照れながら、ケイの顔を見ると、晴れた空のような笑顔を向けてくれた。
「えぇ。ケイには悪いけど、付き合ってね! 定期馬車は今日の夕方で終わりだったはずよ、いきましょ」
いつまでもクヨクヨしていられない・・
貯めるだけ貯めて使っていなかったお小遣いは全額持ち出してきた。
でも、いつまでも貯金で生活は出来ないし、わたしだって仕事をしなきゃいけないわ。
裁縫も料理も得意だし・・
お針子? うーん・・
「ねぇ、ケイ? ロティに着いたらわたしも仕事をしようと思うのだけど、どんな仕事が合うと思う?」
隣を見て聞いてみた。
「そうですね、お嬢様は人見知りもしませんし、お話も聞き上手、雇われよりはご自分で趣味の雑貨を置いたカフェとか小さなお店ならいいんじゃないですか?」
カフェ??
わたしが??
ふーむ・・でも楽しそうね。
人との繋がりは大事だし、お菓子と飲みもの、軽食を出して、刺繍した小物を小さく展示販売するスペースを設けて~・・朝はモーニングを出してもいいかも。
考えているとなんだか楽しくなってきた。
「そうね、楽しそうだわ! ケイはどうするの?」
「ん?俺ですか?もちろん、お嬢様のお手伝いに決まっていますよ、女性一人で店番は危ないですし、力仕事も必要なときは役に立ちます。何より・・お忘れですか?確かに俺は護衛ですが、あなたの専属執事でもあります。」
「あ!!!
そういえば・・ケイ、ご家族はプリム領よね??よかったの??」
そうそう、若く見えるけれどケイは20歳だし妻子ある家庭持ち。
時々家に帰宅していたみたいだけど・・
「あぁ、大丈夫ですよ。旦那様に移動ポータルを押し付けられたので、時々自宅へ帰ってやれと・・///」
なるほど。
お父様ってば粋なことなさるのね。
でも、良かった。
わたしの我儘に巻き込んでしまったから、ご家族との仲がこじれるの勘弁願いたい。
今度、奥様とお子さんたちに手作りのお菓子とかを持っていってもらおう。(謝罪の手紙も忘れずに)
よし、泣き言はこれでお終い。
目標があるんだから、立って歩かなきゃ。
ガタンと揺れる馬車の中で、夕暮れから夜に変わりつつある空を眺める。
一筋の流れ星が消えていった。
ネイビーブルーに移り変わる空に向かって祈る。
”愛する人と巡り合えますように”
心が痛い・・
作者、泣きながら執筆しております。
リリベルの頑張りを応援しましょう。
彼らの新しい門出に幸あれ。




