37話
エリッシュを連れて屋敷へと戻ると、玄関ホールにはプリム家のみんなが勢揃いしていた。
ありがたいな。
つい微笑んでしまう。
リリは固まっているみたいだけど?
どうした??
「おほん、ベル、エリくんが来てくれたぞ??」
一斉に視線を受けて、やっと気がついたらしい。
「な・・なんで?来るなんて聞いてないっ」
あれ?ちょっと怒ってる?
リリベルは俯いてしまった。
先触れは出しておいたんだけどな・・
「リリ?・・・」
みんなも不思議そうにリリベルを見ていた。
あまりにも気まずくなったので、エリッシュは仕方ないと思い、
「えっと・・ダメだった?・・・ごめん、残念だけど今日は帰るよ。また来るね・・」
エリのその言葉を聞いても、リリは俯いたまま。
お義父様にほうへ行き、突然ですみませんでした。
と頭を下げ、お互いにまた手紙のやりとりもしようと話してそのままプリム家を去った。
騎士達との交流も楽しみにしていたのだけど・・彼らにもまた来るからその時にと告げて来た時と同じように、街の入口で馬を返却してから移動ポータルで王都へ戻った。
リリの様子は・・いったい何がいけなかったんだろうか。
でも、俺も納得はしていない。
俺に会いたくなかったのだろうか?
会いに行くのが遅かった??
先触れ無しのサプラズが良かったのか?
花束を持ってなかったから?
ダメだったことを考えるとキリがない・・
俺のこと嫌いになったりしてないよね??
領地に戻って、他に好きな人が出来たとか・・ないよね??
俺はリリじゃなきゃダメなのに。
リリは違うの??
せっかく待ちに待った再会になると思ったのに・・
心が折れそうだ。
でも、こんなことで諦めることは出来ない。
明日もう一度、ポータルで会いに行ってみよう・・
ちゃんと話して誤解を解きたい。
誤解??わからないけど・・とにかく会ってちゃんと話そう。
とりあえず・・速達届け便で、お義父様へ手紙を出す。
”親愛なるお義父様へ
昨日は、あのように空気を悪くしてしまい、申し訳ありませんでした。
いったい何が悪かったのか・・
一生懸命考えて、ずっと悩んだのですが皆目見当もつきません。
僕の何がリリを怒らせてしまったのでしょうか?
リリは泣いてはいませんでしたか?
僕はリリのためなら土下座だってやるつもりですし、リリに笑顔を向けてもらう為に・・
取り急ぎで申し訳ありませんが、明日、またそちらを訪ねたいのですがお許しいただけますか?
急すぎますし、ご家族お揃いでなくても構いません。
ただ、リリと直接会ってしっかり話をしたいのです。
そのためにはお義父様に、面会の許可を取ってからと思いまして、このように手紙を書きました。
お忙しいとは思います・・ですが、お返事いただけることと願っております。
あなたの義息子エリッシュより”
ふぅ・・
お義父様のことだから、すぐに返信はくれるだろう。
俺は明日行くつもりで、色々と準備を始める。
リリに食べてもらうためのお菓子も季節の果物を使ったタルトとマフィン、お茶にはかかせないチョコレートケーキ。
お気に入りの茶葉も。
すべて作り終えて明日持っていく用のバスケットに時間停止保管魔法のついたものを選んで、詰め込んでいく。
外はすっかり夕暮れ。
冬の気配がしてきた空はバイオレットに染まって、暗くなることを感じさせる。
リンリーン
と呼び鈴が鳴った。
「はいはーい、っと、お待たせ。」
「届け便速達です~エリッシュ・リドールさんでお間違えないでしょうか?お手紙です!」
「あぁ、俺だよ。はい、印ね。遅い時間までありがとう~」
「いえいえ、またのご利用お待ちしております」
受け取って扉を閉めて鍵をかけた。
夕食後の珈琲を入れたばかりだったから・・それも持ってソファへ移動する。
手紙の差出人は・・お義父様だ。
さっそく開封する。
”親愛なるエリッシュ
速達で連絡をありがとう。
昨日は悪かったね・・こちらも想定外だったのだ。
まぁ、あの後ベルは部屋へ籠ってしまったから、誰も理由はわからずじまいなんだが。
明日の訪問については、もちろん許可しよう。
クラリッサとエレノアはそれぞれの婚約者と会う予定が入っていて不在だが、セドリックとラナは居るから。
何かあったら相談も乗ってくれるだろう。
私とシルクは午前中は用があってね、昼食頃には戻るんだが・・昼食と夕食を一緒に食べようじゃないか。
妻も君に会いたがっているよ。
私も君とまた色んな話をしたいのだよ。
明日は、午前中に来るんだろう? 騎士と使用人たちには通達しておくから、気軽に来なさい。
会えるのを楽しみにしているよ。
ベルともちゃんと向き合ってくれるという君の言葉・・感謝するよ。
ベルのこと、よろしく頼む。
では、明日。
君の義父より”
お義父様・・ありがとうございます(泣)
心が広く、そしてとても温かい人だ。
何度会ってもそう思う。
俺は素晴らしい人たちと縁を繋げられて本当に幸せだ。
だからこそ、この幸せを手放すなんてあり得ない。
一番の幸せたるリリの存在を諦めるなんて絶対にしない。
そう心に留めて。
明日に備えて早めに寝ることにした。
窓の外では少しだけ強い風が通り抜けた。




