30話
「いえ、私には婚約者はいませんよ。釣り書もいままで放置していたくらいですから(苦笑)」
そう言って、チラリとリリベルを見て、何も言わずに目線を戻して話を続ける。
「そうだったのか、いやエリくんのような素敵な青年が婚約者がいないなんて勿体ないな、なぁみんな?」
と家族のほうへ視線をやる。
家族であろうとも、ベルの気持ちを勝手に話すわけにはいかない。
だけど・・二人の仲を進展させてあげたい気持ちはある。
それでさっさとくっついてくれれば・・
ベルがエリくんに釘付けになっているのはわかっている。
そして・・エリくんだって、何か言いたそうではあるんだ。
ここは家長の私が・・・
「エリくん、もし良ければだが・・うちのベルはどうだい?」
と切り出す。
「はい??」
突然の展開についていけていないエリッシュ。
お茶会後に少し時間をもらって、その時に自分で切り出そうかと思っていた・・それが・・
「そうよ!ベルもまだいなくて・・」
「うちの子、ほんっっっっとうに良い子なんです。後悔はさせません!」
「え・・ちょっと、お姉さまたちっ、何言って・・」
「いいや、その通りだ!エリッシュ、うちのベルどうだ?」
「セド・・早まりすぎよっ」
「お兄さままでっ///」
リリベルは恥ずかしくてもう顔が上げられなくなっている。
お母様は楽しそうに傍観している。
うちの子たちはほんとうに思いやりがあるわねぇ~と感心しながら、片手にはスコーン。
場を見ながら、ふぅ・・と息を吐き。
「エリくん、うちのベルと婚約してくれないかしら?
もちろん、ベルの気持ちも大事だけどね。エリくんとしてはどうかしら?」
とド直球に言ってくれたので、家族みんなはそれに同調して頷いて・・頷きまくっている。
首とれるよ??と思うほど。
わたしは・・みんなの気持ちは嬉しいけど、一度エリさんとしっかり話して・・・
気持ちを通わせられたら・・・
そしてそのうえで婚約出来たらいいなぁ・・
って思うんだけどっ!!
「あの!ちょっと落ち着いてくださいっ」
エリッシュが待ったを入れる。
「皆さまのお気持ちはとても嬉しいです。
ですが、すぐに決めることは出来ず・・といいますか、
一度リリベル嬢と二人で話をさせていただけませんか?
私と・・僕と彼女も今日までに色々ありました。
ご家族にはもちろん、報告もされているだろうし、わかってらっしゃると思います。
ですが・・
僕たちは向き合って話さないといけない・・その時間をいまこれからいただくことは出来ませんか?」
と真摯に誠実にしっかりと伝えてくれる。
リリベルが言いたかったことも・・
やっぱりこの人が好き。
街中を歩きながら思考する。
俺はエリッシュ・リドール、リドール伯爵家次男 20歳 独身 婚約者ナシ
今日は、とあるお茶会へ招待されている。
朝から自分としてはバタバタしていた・・今日は男性版で行く・・いや、紛れもなく男だが。
到着した先は、プリム子爵家のタウンハウス。
サロンへと通されてびっくり、家族みんなで迎えてくれた。
美味しいお菓子とお茶も最高だった。
何より空間が可愛いしかなくて最高だった。
何も発さないが天使のようなリリベル嬢に目を瞠るが、家族の前だ・・大人しくしていないと。
いまはとにかく好印象を残すべき・・と。
話していると、子爵婦人がうちのリリベルと婚約してはもらえないか?と言ってきた。
ということは、俺のことは気に入ってもらえたようだ。
そういう流れに持ってきてくれたのか。
嬉しい・・本当に嬉しいが・・俺はリリベル嬢とちゃんと話さなければならない。
本当のことを話して、騙していたわけでもないこと、貴女を慕っていること、いままでのこと。
きちんと話して、話し合いをしたうえで婚約してくれるなら・・
そんなこんなで、ご家族から二人で話す許可をいただいた。
二人残されたサロン・・
シーンとしていて、窓の外から時折り風の吹く音が聞こえる。
どちらからともなく
「「あの」」
被った・・///
ここはやはり、俺から・・
「ごめんっ!!」
とにかく謝る・・謝ってからだ。
?? キョトンとなっているリリベルに向き合い、伝えたかったことを言葉にしていく。
「ごめん、本当に。 君を騙していたわけじゃないんだ。 手紙でも書いた通り、女装していただけの男で。
そう・・男なんだよ。君はお姉さんと思っていたみたいだけど・・
俺が騎士団員なのは知ってると思うけど、巡回とか人助けとかで割と国民と関わることが多くてね。
その・・身長が平均よりデカイだろ?結構怖がられちゃって・・凹んだんだよ・・
どうしたら普通に接することが出来るか考えて・・
まぁ女装しておネェ口調にしたら雰囲気も柔らかくなるんじゃないかと(苦笑)
仕事の時以外は普通に男性として過ごしているし、誰かに隠してるとかそういうこともないよ。
ただ、女装時は女性の友達が寄ってくることが多くて・・それが嫌だったらどうしようと。
もちろん、彼女たちに特別な思いを持ったりとか相手側からも持たれたことはないんだ・・・」
聞いてる間に、エリさんの誠実さが滲み出ていてほっこりする。
「話してくれてありがとうございます。もちろん、お手紙も読みましたし、理解もしています・・
でも、貴方の口からちゃんと話してもらえて本当に嬉しい。
それでも、どちらも本当の貴方だと思っているし・・わたしは綺麗なお姉さんのエリさんを好きになりました。
貴方が手紙で打ち明けてくれる前に、領地に帰ったらもう会えないんだって思ったら泣いてしまいました。
だって、わたしは貴方に会いたくて、貴方ともっと色んな事をして色んな所へ行って・・・(グスッ」
やだ・・泣いちゃダメなのに・・ちゃんと話したいのに。
声も震えてうまく言葉に出来くなる。
そんなリリベルをずっと見つめていたエリッシュは・・
そっと席を立ち、彼女の手を取った。
「聞いて欲しいんだ。
俺はね、リリベル、貴女のことが大好きです。」
エリッシュの告白に固まった・・
花言葉を思い出す。
”あたなに会いたくてたまならい 愛の告白 片思い”
そのまま小さく口に出してみる。
それを聞いてエリッシュが顔を綻ばせる。
「花言葉、調べてくれたんだね。君への想いをどうやったら少しでも伝えられるかって考えて選んだんだ。」
顔が自然と熱を持つのがわかる・・
「思い出したくないと思うけど、王宮でのあの事件があった後にね、君のお父上と話す機会があって。
俺の気持ちも聞いてくれて、だから今日のお茶会も呼んでくれたんだよ。
お父上には了承を得ているんだけど・・
リリベル・プリム嬢・・私と婚約してくれませんか? もちろん、婚姻を前提に。」
ツーっと頬を涙が伝う。
わたしが?エリさんの隣に・・居られるの??
「わたし?? いいの?わたしで?」
夢かもと思ってしまう。
「いいよ。 リリベルがいい。 俺の可愛い人、俺のお嫁さんになってくれない?」
いつものエリさんじゃなくて、男性らしい低く優しい声で囁かれる。
ひぁっってなりながら頷く。
「わたしも、エリさんのお嫁さんになりたい」
返事をした瞬間にぎゅっっと抱きしめられる。
初めての距離にドキドキが止まらない。
でも・・わたしでいいんだと反芻するとじんわりと心に沁みて・・嬉し泣き(笑)
ちょっと冷静になってきて、大切なことを忘れていると思った。
「あの・・エリさんのご家族はわたしで許してくれますか?うちは子爵家だから・・爵位的に釣り合わないんじゃないかと心配で。」
あぁ と頷き、
「心配しないで、こちへ来る前に実家へ行ってちゃんと許可はもらってきてるから。
文書でもらってきたから、あとでお父上に渡すよ。」
ほっとした。
これで反対されたんじゃ、何のために想いを通わせたのかわからない。
「リリベル、あのね、俺もベルって呼んでいい?それとも、リリ? どっちがいいかな?」
ふふっと笑って、ちょっと悩んで。
「リリがいいかな! 家族みんなベルって呼ぶから、エリさんだけの特別~」
「いいね! リリも、俺のことエリって呼んでね」
「うん! あ、その懐中時計のネックレス、してくれてるんだ~嬉しいっ」
「もちろんだよ~毎日身に着けてるよ。お守りみたいな・・リリが側にいるみたいだから(笑)」
「わたしも! ピアスと髪飾り! こんな素敵なものありがとうっずっと大事に使うね」
「それ・・そのピアス俺も・・お揃いなんだよ。ほら」
そう言って見せてくれた彼の耳には、中核にリーフグリーン色の宝石が埋まってる。
「わたしの瞳の色・・・」
「そうだよ、リリのは俺の髪の色の宝石を選んだんだ。いつも一緒だよ・・て想いを込めて」
その言葉を聞いてまた泣けてきた。
好きな人と想いが通じるってこんなに幸せなんだ。
「エリ・・大好きです」
リリベルからの言葉に、ちょっとはにかんで照れているエリッシュが可愛い。
「俺も、大好きだよ、好きなってくれてありがとう、リリ・・大事にするよ」
噛みしめながら言ってくれた言葉に悶絶してしまったリリを眺めながら、
そろそろご家族も呼び戻して報告しないとな・・
そう思って、リリが落ち着くまで少しお茶を飲んで過ごした。
このお菓子美味しいな~リリの味がする♪
扉の外で待つ侍女へ声をかけて家族を呼んでもらうことにする。
あまりにも長いんですが、、エンディングまで頑張ります。
次回も楽しみにしてくださると嬉しいです。




