17話
時は少し戻り、お祭り真っ最中な王都。
『時祭り』といえばの恒例の求婚祭。
男女関係なく、赤と白のアネモネの花束を持ち求婚する姿が見受けられる。
もちろん、花束を束ねるリボンは自分色を添えて。
嬉し泣きしている姿
感極まってボーゼンとする姿
戸惑いながらも微笑む姿
陰ながらに泣き崩れる姿
射止められず俯く姿
結果はそれぞれだ。
とはいえ、基本的にはお付き合いしているカップルが、結婚へ踏み出すキッカケとしてこの場を利用しているため、
残念な結果は珍しいのだが。
これからの未来を思い描いて、残りの祭り期間を満喫するのだ。
祭りが終わり1~2か月後には結婚することが多い。
なんとも素敵だな、と思う。
人々はいつの世も憧れる・・幸せというものに。
ブルシアンブルーに染まった頃、目的地に着いた二人。
・・いや三人?
まぁ、どっちでもいい。
とにかく到着したのだ。
クリーム色の外壁、柱や窓枠がアイビーグリーン、屋根はコバルトブルーかな?(暗くて見えづらい)
玄関先にはステンドグラスの照明が可愛らしくお出迎えしてる。
とても可愛い家??それともカフェかしら?
リリベルもケイも、頭の中でハテナマークが飛び交っている。
「あの・・エリさんここはどういった?」
「ふふ・・ようこそ!我が家へ!」
っっっ!!??
エリさんのイメージぴったりすぎて素敵!
まさかのご自宅に招かれちゃうって・・
「どうぞ、入って~もちろん護衛くんもね」
パチンとウィンクをする。
ケイはその意味をしっかり理解した。
見た目は女性といえど、婚約者でもない。
れっきとした男性であるエリとリリベルが、二人きりになるなんてことはあってはならない。
そこもわかっているからこそ、ケイまで家に入れるということ。
この行動だけで、エリへの信頼度はぐんと上がる。
このことはあとで旦那様に報告するべき、と心に留め置く。
リリベルとケイを先に中へ入れてから自分も入る。
カランと優しいドアベルを鳴らして閉まる。
室内はとても素敵で落ち着く空間だった。
家というより、オシャレなカフェのようだ。
「素敵・・」
「ありがとうっ好きなところに座って寛いでちょうだい~護衛くんもね」
「いえ、わたしは・・」
「ケイも一緒に、ね」
う”・・お嬢様にそう言われると断れん。
「お邪魔します」
いそいそとダイニングのカウンター、玄関から一番近い場所へ腰をおろした。
そこからだと、リビングのソファもキッチンやその奥も見渡しやすく、
会話は聞こえないが見守れるし、護衛としては最適な場所なのだ。
・・そこを選ぶなんてほんと出来る護衛ね~とエリは感心した。
リリベルは暖炉前のソファの端っこに座って、キョロキョロと室内を見渡していた。
エリは三人分のコーヒーを淹れ、それぞれに渡してからリリベルの反対側へ座った。
(ケイとしては距離をしっかり取っているところもポイントが高い)
「このクッション可愛い~色合いも好き♪」
「そう?それねあたしも気に入ってるの♪だいぶ探し回ったのよ(笑)」
「そうなんだ・・わたし作れるから欲しいのあれば言ってくれたら・・」
「あら?いいの??じゃぁ今度お願いしちゃおうかな♪~」
「ぜひっオーダーしてね?(ふにゃり)」
「ここはね~あたしの好きが詰まった家なのよ。もう一生ここに住むわ!って思って」
「わぁ・・それはほんとに凄い」
「やりすぎちゃったかな~と思ったけど、もういいわ(苦笑)」
「わたしの家は田舎だけあって、貴族の豪華さとかけ離れてるし、
こういうほっこりお洒落なおうちのほうがホッとする~」
「なるほど、そういう人もいるわねぇ・・まぁあたしもだけど。
うちも王都の貴族にしては華美なのが苦手なのよね~だから家自体もザ・貴族 みたいな感じじゃなくてうーん素朴な大きな宿屋みたいな外観してるわよ(笑)」
「なるほど、それはそれで素敵なんじゃない?何より住んでる皆さんが快適ならそれが一番かと」
「そうよね。家主次第よねぇ」
「うんうんっ」
「あ、そうだわ。ちょっと渡したいものがあって。いいかしら?」
???
数秒席を立って、戻ってきた。
カタン、ふわっ と目の前に置かれたもの。
「これ・・ミニブーケ・・と箱??綺麗・・宝箱みたい」
「あのね、噴水のときのお礼と友人になった記念に、どうしても何か渡したくて。
ブーケは・・まぁ意味はあるけど・・帰ってから自分で調べてね(苦笑)
箱はね、トロワの魔法店で見つけたの。スカイブルーに銀の飾りが綺麗でしょ?開けてみてくれる?」
エリに言われて箱をそっと開ける・・
♪~~♪~♪~
「オルゴール!わぁ・・すごく綺麗な旋律、それにジュエリーボックスになってる、旅行に持っていけそう」
頬を緩ませて喜ぶリリベルにほっこりする。
こんなに思った通りの反応を見せてくれるなんて・・この子だけ・・
んん”・・なんでもないわ。
「そうなのよ!2~3泊とかならそんなにアクセサリー持っていかないじゃない?ちょうどいいかなって」
「もうずーーっと大事にするっ!お友達からこんなに素敵なプレゼント・・もらったことないから・・」
「そんなに喜んでくれると、あたしも嬉しいわ♪」
目をキラキラさせてオルゴールの人形に見入っている。可愛い子・・
「あ!!」
「?どうかした?」
「わたしも!エリさんに渡したいものがあって」
え・・あたしに渡したい??
「ケイ~持ってきてもらえる?」
・・・
「お持ちしました、こちらです」
荷物を手渡して元いた場所へすぐさま戻っていく・・出来るわこの護衛くん。
「あの・・わたしこそお友達になってもらえて本当に嬉しくて。
エリさんみたいな素敵な人に憧れてて、これからも仲良くしてねっ」
精一杯の言葉と共に差し出される箱。
結構大きいわね?
その気持ちが一番嬉しいってわかってるのかしら(苦笑)
「ありがとう、開けてみてもいいかしら?」
「あ・・えっと・・はい・・(テレ)」
照れちゃって、可愛いが過ぎる・・
ゆっくり箱を開けてみる。
何かしら?これは・・クッキーね、美味しそうだわ。
こっちは~広げてみると・・え!何よこのすごい刺繍入りハンカチ・・まさか手縫いかしら・・高級なやつよコレ。
あとは~・・??箱ね?開けられ・・んん??懐中時計じゃない?
「ちょっと。こんなに!?いいのかしら・・」
「気に入らなかった?」
「そんなこと言ってないでしょ。
クッキーも大好きだし、あたし甘党なのよ!
このハンカチなんて、貴族のご婦人が買っていくような高級なやつじゃないのよ、
こんなの作れるの!?もう怖いっ・・
こっちは懐中時計って・・もしかしてトロワの魔法店?いつ買ったのよ~」
「えへ・・実はエリさんが何かに夢中になってたのでその隙に・・」
「しかもこの文字盤あたしの髪の色?!よくそこまで注文したわね・・
蓋は透かしでジャスミンが咲いて素敵すぎよ・・」
感動しかない。
「ふふっ 実は~それわたしとお揃いでーーす!じゃーーーんっ」
「へ?? お・・そろい??」
「そうですっ みてくださーい。わたしのは文字盤がリーフグリーンで蓋はマーガレットなの♪」
えええ・・もうどこまで驚かせるつもり・・
「嬉しいわ。本当に。 ありがとう・・大事にするわね、いつも身に着けるわ」
「わたしも! 作ってもらったらすごく気に入ってしまって♪いつも一緒ね!」
・・なんて問題発言してるのかしら・・
ここは・・聞かなかったことにするわよ・・
「さて、今日はそろそろ時間的にもお開きね~」
名残惜しいけど、帰宅時間はしっかり考えてあげないと。
「え・・もう?そっか・・」
「遅くなると、ご家族が心配されるから。
また会いましょう。プリム地へ行くわよ、その時は案内してね」
「絶対ね?わたしも王都に来るときは連絡する・・」
「えぇ!もちろんよ。また色んなお店に行きましょ」
「うん・・」
浮かない顔ね・・
まぁ、あたしも人のこと言えないだろうけど。
「明日は王宮の会場へ行くでしょ?あたしも警備でどこかにいるわよ、会えるかもしれないわ」
「そうなんだ・・会ったら声をかけてもいい?」
「当たり前でしょ~アナタは特別なお友達だから」
「そうなの?」
「そうよ!」
「そっか・・うれしい」(ふにゃり)
「ふふ・・じゃぁ気を付けて帰ってね、コレうちの住所よ、いつでも手紙待ってるし、もちろん返事も書くわよ」
そっと小さな手にメモを握らせてそのまま包み込む。
「うん・・またね」
「えぇ、また会えるわ」
・・・・・
沈黙が落ちて、ふとケイのほうを見る。
「ケイ、帰るわ」
「はい、お嬢様、もうよろしいので?」
「あんまり遅くなると、みんなが心配するから」
「そうですね、では帰りましょう」
ケイはちらりとエリのほうを見やると、コクンと頷かれた。
大丈夫だろう・・この人とはまたすぐに会えるだろうし。
いまはとりあえず、時間も時間だから帰宅するべきだ。
「リドール子息、今日はお邪魔しました。後日、旦那様からお手紙があるかと。」
この護衛くんには素性も知られているだろうし、取り繕う必要もないな。
「わかった・・君の配慮に感謝する」
「こちらこそ、またお嬢様へ連絡してあげてください」
「もちろんだ」
リリベルに聞こえないくらいの声で交わす。
外へ出るとミッドナイトブルーに染まった空と、ツンとした秋夜の空気。
沈んだ気持ちの理由をわからないまま、ただ家路へと歩く。
先ほどまでの幸せな空気。
離れがたくて、もっと一緒に居たかった。
言いようのない気持ち。
それでもきっとまた会えると・・
手渡されたメモ書きを見つめて、少し泣きそうになる。
今日はラベンダーのお風呂に浸かろう・・きっと泣いちゃうだろう。
なんでかなぁ・・
読んでくださっている皆様に多大なる感謝を。
今回もまたちょっと切ないで終わっちゃった。
リリベル成長中、葛藤ありますよね。
わかる!
次回は自宅で準備からの~・・
きっと素敵な夜が始まる!




