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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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50/80

温度差 ― 本社で一番恐いのは ―

かつてリヒトを厳しく鍛えたレジェンディアの元オフィサー。


あの人物が、再び登場します。


ただし今回は——訓練する場所が、少し違うかもしれません。

——海風が、埠頭を吹き抜けていた。


大洗港。


そこには一隻のクルーズ船が静かに停泊している。


白い船体。

整然としたデッキ。


オーシャンクレストクルーズの船——

サフィール。


レイコは埠頭に立ち、その船を見上げていた。


「……サフィール。」


懐かしい名前を口にした、その瞬間だった。


「レイコ!」


声が飛ぶ。


振り向くと、一人の男がこちらへ駆けてくる。


オーシャンクレストのオフィサー、ヘインズだった。


「無事で良かった!」


レイコは思わず笑顔になる。


「ミスター・ヘインズ!」


「ニューヨークで手紙を受け取って、とても嬉しかったわ!」


船体を見上げながら続ける。


「オーシャンクレストの船たちのことも、心配で仕方なかったの。」


ヘインズは肩をすくめた。


「レイコ、我々は大丈夫ですよ。」


そして少し笑う。


「それより——」


声を落として、こそっと言う。


「私たちは、君が恋人にヤキモチを妬かれてしまうんじゃないかと……」


少し肩をすくめる。


「いつも、そっちの方が心配なんです。」


少し離れた場所で見ていたエディが、そっと目を閉じる。


(……それなんだ。)


フォックス中尉も苦笑する。


(まさにそれです。)


だがレイコは、あっさり笑った。


「皆大好きなんだけどな。」


軽く肩をすくめる。


「でも、ご心配ありがとう!」


ヘインズは笑った。


「それを聞いたら、君の恋人は頭を抱えるでしょうね。」


「我々はとても嬉しいですが。」


レイコは何も言わなかった。


ただ、サフィールの白い船体を見上げていた。



その頃。


BMM本社では、別の緊張が広がっていた。


エリコ・白鳥・アズナブールは、デスクで電話をかけていた。


相手はマイアミ。


かつての盟友——

エレクトラ。


事情を簡潔に説明する。


ホルムズ危機。

クリスタニア就航。

ロイヤルネイビーからの招待。


そして——


リヒトの船長教育。


電話の向こうで、エレクトラが笑った。


「……面白いわね。」


エリコは腕を組む。


「笑い事じゃないのよ。」


短く言う。


「何とかしてちょうだい。」


エレクトラはさらに笑った。


「いいわよ!」


そして、あっさり言った。


「三日後にこちらを出発するわ。」


少し間。


「そっちでの段取りはお願いするわね。」


エリコは小さく息を吐いた。


「助かるわ。」


電話が切れる。


オフィスの空気は、一瞬で変わった。


社員たちが顔を見合わせる。


「……エレクトラさんが来るんですか。」


誰かが小さく言う。


別の社員が呟いた。


「本気ですね……。」


クルーズ部門の空気は、一気に緊張に包まれた。


レジェンディアの鬼教官が、日本に来る。


それが意味するものは、誰にでも分かっていた。



エリコはデスクに戻り、もう一度電話を手に取った。


今度は別の番号を押す。


数秒後、明るい声が返ってくる。


「Bonjour?」


ルイだった。


「ルイ。」


エリコが言う。


「どうしたんだい?」


「お願いがあるの。」


エリコは窓の外を見た。


社内では、社員たちが慌ただしく動き回っている。


「うちの社員たち、そろそろ限界なのよ。」


少し間を置く。


「差し入れをお願いできる?」


電話の向こうで、ルイが笑った。


「お安い御用さ!」


軽い声。


「午後のお菓子を持って行くよ。」


エリコは小さく笑った。


「助かるわ。ありがとう。」


電話を切る。


窓の外には、東京湾が広がっていた。



その頃。


大洗の埠頭では——


レイコがサフィールを見上げている。


そして本社では。


社員たちが、走り回っていた。


三日後。


鬼のエレクトラが、羽田に降り立った。

作中では、新造船クリスタニアの就航準備が進んでいます。


実際のクルーズ会社でも、新しい船が就航する前は本社も現場もとても忙しくなります。


船の最終調整、クルーの配置、訓練、運航スケジュールの確認、寄港地との調整、安全確認やイベント準備など。


さらに世界情勢や燃料価格なども運航計画に大きく影響します。


新しい船が華やかにデビューする裏側では、多くの人が慌ただしく動いています。


海の世界は、思っている以上にたくさんの人の努力で動いているのです。

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