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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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48/80

リヒト船長の自己嫌悪― 俺はバカだ ―

今回もリヒトを温かく見守ってやってください。

ホテルの廊下は静まり返っていた。


リヒトはカードキーを差し込み、ドアを開ける。


部屋に入った瞬間、アルコールの匂いが自分から漂っていることに気づいた。


「……くそ。」


小さく呟く。


ネクタイを緩めながら、よろめくように部屋の奥へ歩く。


バーで飲んだ酒は、思った以上に回っていた。


ルイの言葉が、まだ耳の奥に残っている。


——君は彼女のことを何も分かっていないね。


リヒトは舌打ちした。


「……分かってるさ。」


誰もいない部屋でそう言う。


だが、その声にはまるで説得力がなかった。


ジャケットを椅子に放り投げる。


シャツのボタンを外す。


鏡の前に立つと、自分の顔が映った。


ひどい顔だった。


ブリッジで見せる冷静な表情とは、まるで違う。


ただの——


惨めな男の顔だ。


「キャプテン、か……。」


苦く笑う。


クリスタニア。


新造船。


船長任命。


本来なら誇らしいはずの言葉。


なのに。


胸の奥は、妙に重かった。


リヒトは浴室へ向かい、シャワーの蛇口をひねる。


水音が広がる。


冷たい水が肩を叩く。


目を閉じた。


ルイの声が、また浮かぶ。


——彼女は商船たちにも等しく愛情を注いでいた。


——どうしてサフィールにだけ嫉妬するんだい?


リヒトは壁に手をついた。


水が肩から背中へ流れ落ちていく。


「……嫉妬だと?」


自嘲気味に呟く。


そんなつもりはなかった。


ただ——


マルセイユの夜。


サフィールのオフィサーと笑いながら話していたレイコ。


その姿が、妙に楽しそうで。


レジェンディアのことなど、目にも入っていないように見えた。


それが、どうしようもなく気に入らなかった。


……子供だ。


リヒトは目を閉じる。


「馬鹿だな。」


水の音だけが響く。


自分は何を言った。


恋した船と旅をするべきだった。


あんな言葉を。


レイコに。


リヒトは歯を食いしばった。


思い出す。


ニューヨークの夜。


降りろと言った自分。


それでも残った彼女。


——私はレジェンディアを愛しているわ。


——あなたも……船も。


胸の奥が痛んだ。


シャワーを止める。


浴室に静寂が戻る。


タオルで髪を拭きながら、部屋へ戻った。


ベッドが視界に入る。


ふと、手が胸元に触れた。


チェーン。


指先に金属の感触が伝わる。


ネックレスだった。


バルセロナの夜。


酔ったレイコ。


困った顔で笑っていた。


——町でね、これを見たらあなたを思い出したの。


——昨夜の……お詫びよ。


リヒトはネックレスを握る。


しばらく、じっと見つめた。


胸が妙に締めつけられる。


「……くそ。」


ベッドに腰を下ろす。


タオルを放り投げる。


部屋は静かだった。


東京の夜の音が、遠くに聞こえるだけ。


レイコは、今頃何をしているのだろう。


エディと話しているのか。


それとも——


サフィールのことを考えているのか。


そんなことを考えている自分に気づき、リヒトは顔を覆った。


「俺は……。」


言葉が続かない。


枕に顔を押しつける。


胸の奥に浮かぶのは、レイコの顔だった。


怒った顔。


笑った顔。


そして——


背中から抱きついてきた、あの夜。


リヒトは歯を食いしばる。


「……馬鹿だ。」


小さく呟く。


「本当に……。」


ネックレスを握ったまま、ベッドに突っ伏した。


レイコが恋しい。


そんな自分が、どうしようもなく情けなかった。


部屋の灯りだけが、静かに揺れていた。

不器用なんです。

でも腕はいいんです。


こんなんだと思ってませんでした。。

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