問い
叫べばよかったのに
声を出すことができたら
雷を纏った矢はじわりじわりとこちらの喉元に向かってくる
微笑む姿が恐ろしいと感じたのは二人目だ。
「優しい私が、もう一度聞いて差し上げましょう」
微笑む姿が恐ろしいと感じたのは二人目だ。
手に力が入りづらい。
拘束に使用された細い糸がジワリジワリと
体を縛る
腕から血がたらたら垂れて床に結婚
彼の銀髪に陽光があたりキラキラと煌めいているが
憎悪を翡翠の瞳の中に全て隠しているのだろう
青年はにこやかにこちらに微笑んできた。
彼の名はサリソン・キューラ
「私、色々魔法は使えないのですが、こう見えても」
魔術師なのですよ、
パチっとサリソンの左手から右手に雷でできた糸が移動した
彼の声は明るく聞こえるが 眼は笑っていない
鋭い眼光はこちらを逃がすつもりはないらしく棘のように鋭く視線が刺さる
この場からサナラと共に逃げてしまいたい
そんな望みは叶いっこない、体が彼が作った何かで縛られているからだ
動かせない
動かない
動けない
膝を動かそうと思っても恐怖で笑っていて動かせない
隣から浅くて荒い呼吸が聞こえる
誰だ、
あ、サナラの呼吸だ
サナラの方に顔を向けたいけど動かしたら雷の矢が頬に少し当たってしまう
青年 いや、サリソンは苛立ったように
僕らを鋭く睨み続ける
雷を纏った矢がじわりじわりと首元に近づく
「いい加減喋ってくれませんかね?」
はぁ と呆れが混じったため息が聞こえる
気持ち悪い
気持ち悪い
逃げたい
逃げたい
ダメ サナラを
守らなきゃ
守らなきゃ
視界がぐにゃぐにゃ揺れる
「ぼ、くら、は」
喋り始めた途端、雷を纏った矢が全て僕の方に牙を剥く
その矢一つ一つ全てに、彼の負の感情が乗っている
「なんですか?」
有無を言わせないその声に彼ではない
別人の影がちらつく
ああダメ
ダメだ
そんな 瞳でこっちを見ないで、お願いやだ、
誰か助けて
ファランドーレ村そういえば 言えばいい
そう言えばいいんだ
それで全て大丈夫になるのに
なのに言葉が出てこない
言ってしまったら 今まで本当だと思いたくなかったのが
僕の中で 本当になってしまうから
「ファ、ランド、レ」
「は?」
青年が固まった
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絞り出したようにそのガキは
あの村の名前を出した
「ファランドーレ…」
重い鉛が胃の中にゴトリと落ちた
気分が悪いなる
あそこでは先月魔獣による大規模な惨殺が起きた
死者は多数 生存者はたった2名
そのうち一名は 罪人
私は青年の方を見る
よく見ればわかったのだが私は己の力を過信していたのだろう
青年の耳をよくよく見たら罪人に刻まれる特有の傷があった
ああ、こいつらとは関わっちゃいけない
「出ていけ」
低く唸るように私は告げる
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ああやっぱり わかっていたことなのに
その言葉が胃に重くのしかかる
「ま、待ってお願いだから!!」
隣にいたサナラが青年に叫んだ
「なんですか?罪人の家族に、用はございません。」
そういって青年は僕らを睨む
情を切り捨てたのだろう
もうこれ以上は無駄だと僕はわかった だがサナラは続ける
「私たちこれから魔王ファラッセンを倒しに行くんです!」
サナラがそう叫んだと同時に
指を鳴らす音と家中が暗くなった
ボッと何かが燃える音がして
目の前に炎に包まれた蝋燭がみえた
だがその炎は蝋燭を飲み込むが如く音を立てながら燃えている
その蝋燭を持っているのは青年だ
「正気ですか」
青年の声がさらに低くなった。
ぶつぶつと青年が何かを呟いている
嫌な汗が背中を伝う
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鳥肌が立つ
正気じゃないそう言え切り捨てろ
こいつらはおかしい
さっさと追い出さなければ
いけなのに
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サリソンが固まった。
僕が恐る恐る彼の名前を呼ぶ
「サ、サリソン?」
彼は顔を上げたその顔には恐怖に満ちていた
「お前らは、いったい何を背負わされているのですか」
「あんたらは何者ですか」
僕はその問いには 答えられない
ただ笑って誤魔化す
「僕はただの平民だよ」




