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経験値は   になる  作者: 杏原 千鶴


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30/30

一人目

笑って誤魔化して

また嘘つきになる

_________________

咄嗟に笑って誤魔化した

だけどサリソンはこちらに懐疑的な表情をしたままだ

彼の唇が言葉を紡ごうとしているのか

開いたり閉じたりを繰り返している

翡翠の瞳に映るのは憎悪ではない

怯えだ

僕らに対して彼は怯えて震えている

彼の唇から言葉が聞こえた

「正気ですか」

自身の震えを隠すように彼は虚勢を張ったのがわかった

「うん、」

短く返すと彼の瞳がさっきより大きく見開き 揺れた

「あの、魔王ファラッセンをお前たち二人で?」

独り言にように呟くその言葉にまた静かに頷くと


「ありえない!!そんなこと不可能だ!!」


彼は片手で自分自身の髪の毛を掴んだまま、混乱も混じる悲鳴が部屋の中に谺した

その悲鳴に共鳴するように僕らの前にあった雷の矢も粉となり消えた

その様子を見ていたサナラは 僕に不安そうな視線を向けた

「大丈夫だよ」


大丈夫なことなんて、ないのに


_________________

ありえないこいつらはどうかしてる

ありえない ありえない!ありえない!!


こいつらはどうかしている!!!

_________________


視線を感じた

我に返り視線を感じた方を見ると青年がこちらを見ていた


僕としたことが 取り乱してしまった。

はしたない


取り乱したことで

彼らの首に突きつけていた雷の矢が粉末となっていて跡形もなく消えている

だが僕の目の前にいる彼は、動かない


そのシャドーブルーの瞳は この世界の全てを諦めたようなそんな瞳だ


世界に対して《《希望がない》》その瞳が

気に食わない

苛立ちが湧き上がり嫌味が溢れる


「拘束が取れたのですから、さっさとどっか行ったらどうですか?」

それとも私のことをぶん殴ってから どこか行きますか?


机に置いてあった燭台を手に持つ

___________________

銀髪の青年はただこちらを睨んだまま


だけどその翡翠色の瞳には僕の姿は写っていない。


「ねぇ、」

僕は彼に話しかける、後ろにいるサナラは怯えた表情をして

彼を見ているが今はそれじゃない

「君もひとりぼっちなの?」



これは偽りではない

僕が 気になってしまったから


溢れた言葉

__________________

茶髪のガキが私に言った

「君もひとりぼっちなの?」

それは哀れみだろうか 


蔑んでいるのか?


だが、彼の瞳の中には私が写っていて、中の私は酷く酷く 憎悪に満ちた顔つきだ

頭の中で言葉を反芻して咀嚼を繰り返す


ああ、私は       誰もいない


わかっていたことだ、こんな捻くれ者に手を差し伸べる 馬鹿はどこにもないのだと


隙間風が吹き

手に持っていた 燭台の朱色の炎がこちらを恨めしそうに揺らめいて



消えた




「ええ、私もひとりぼっちですよ。」


________________


火が消えて 外から太陽の光がかすかに差し込む中

青年の声が聞こえた

「ええ、私もひとりぼっちですよ。」

その声は酷く落胆している声だったが

なんでかわからないけど 僕には


その言葉が 青年が一歩前に前進した言葉に聞こえた

「に、にいちゃん」

火が消えた薄暗い部屋の中、サナラが震えた手で僕の手を掴んで離さない


銀髪の青年がこちらに近づいてくる

咄嗟にサナラを僕の背後に隠してしまったが

青年は僕たちではなく窓の方に近づき

窓を開けた 

埃が太陽の光があたり煌めき舞う中 青年は

僕たちの方を見ずに告げる

「私は 落ちこぼれですよ。」

その背中には何かが重く乗っかっている

なんか嫌だな


「それじゃぁ 僕と一緒だね」


サリソンがこちらの方に勢いよく振り返り 

目を見開いた


_________________

「君が、落ちこぼれなら 同じく落ちこぼれの僕がそのサポートをするよ」

嗚呼、こいつは考えが変わってる

私とこいつは今日出会ったばかりなのに 

そんなことを言う馬鹿は初めて見た

だが その言葉は なぜだか心の中に収まった

まるで その言葉を求めていたかのように

彼の隣の少女までもが「私も!にいちゃんとお兄さんのこと支えるよ!」

満面の笑みの少女は、先ほどまであった私への、警戒心はどこへやら

僕と彼の手を取り握手を促してくる


この二人はあと数日すれば

ここを経つのだろう

この二人は魔王討伐に行く

その運命は変わることはない


落ちこぼれ


いや、もういいだろ

他者に思われるかは、私のことなんて、誰も見ていないのだから


もうどうだっていいだろ



青年は困ったように サナラ、勝手にダメだよ と少女を嗜める

その様子を見ているとふと疑問が膨らんだ

「あなたが私のサポートをするのですか?」

疑問が溢れると青年は頷きにこやかに微笑んだ

「うんそうだよ。それで補合えば、今はまだ一人だけだと、一人前じゃないけど 二人で力を合わせたら一人前にならない?」

イタズラを仕掛けようとする子供のように笑む青年

その言葉に少女が反応して答える

「にいちゃん!サナラも!!にいちゃんのお手伝いする!」 

青年はわかってるよ〜それじゃぁその時はよろしくね と軽く嗜める



この兄妹は 何を抱えているのだろう、か

明るい世界しか知らない ように見せているだけ

はは、酷く滑稽だな

だが、





「ラルシ」

ラルシの名を呼ぶと彼はこちらの方を見る

茶髪が隙間風で揺らめきシャドーブルーの瞳がこちらを見る

瞳の中には私が写っている



なぁ、「私もその冒険についていきましょうか?」

着飾った言葉しか私は言えないのか




彼は私の言葉に最初は固まったが、優しく微笑み返した

「僕たちの冒険は終わりが見えない それでもいいかな?」

_________________

私はその言葉に動きが止まる

だが、高揚感があり、自然と笑みが浮かぶ


「構いません、こんな所より貴方達のところの方が楽しそうですからね。」


私のことを魔術師の落ちこぼれと判断する奴らがいる所か

魔王を倒しに行く

落ちこぼれと判断するのは 他者だ 

私は私


私の敵は私 そうして魔術を何かを 全てを極めればいい



「それじゃあ、」


よろしくね サリソン。



「ええ、よろしくお願いします ラルシ」

私はラルシの手を取った



_________________

ラルシはその言葉に嬉しそうに

頬を緩ませて少女を抱きしめている中


繋がれたままだった、手を離そうとすると

引っ張られて、抱きしめている中に巻き込まれ


私も抱きしめられた


2人の輪の中に

確かに私は入れていただいた



その輪の中には

人の温もりと暖かさを感じられた


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