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『厨二病が痛すぎて異世界出向。 〜 おっさんの Monologue《独白》 × Causerie《囁やき》 〜 』  作者: 放浪の狼


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果樹園の奥で、よみがえる幼き日の香り


……ほっほっ。

果樹園の奥ってのはな、

ときどき昔の香りがふっと立ちのぼる場所なんじゃ。


あの日の空気は、

いまも静かに息をしておる。

主人公の歩幅を、そっと整えてくれるんじゃよ。


第8話は、そんな “朝の記憶” が

ゆっくりとよみがえる一話になるのじゃ。

今日はわたくしめが代わりにマッキントッシュをポチッとな。

三鷹のあの店の味には敵わないけど、気持ちは届くはず。



「うっわっ〜 これだけならんでると壮観ですねぇ〜

 ちなみにさっき言ってた青りんごってどれなんですか?」


「その奥に 太い木あるでしょ それがそうよ 立派な木でしょ〜(笑)

 むかしはみんなで誰が1番早く登れるかとかやってたねぇ〜」


「あぁ〜なつかしい うんうん やってたやってた いつもかなたとまりんが

 いい勝負だったわ」


「仕方ないでしょ ちょっとだけとはいえ こよりの方がちょっとだけ背が

 大きんだからわたし達はほぼ同じだし どうしても差がつきにくいのよ」


「でも今 同じ勝負したら 絶対かなたが勝つわね」


「そう でもそれは何で?」


「言っていいの? ぜったい怒らない? 怒らないって約束できるなら

 理由教えてあげてもいいけど」


「もう そんなもったいぶって 早く教えなさいよぉ〜 おかしなこよりねぇ〜」


「ん〜 船長は育ったけど かなたは育たなかったじゃない

 さすがにどことは言わないけど・・・手をあてて考えてみれば

 わかるんじゃないのかにゃ〜」


「手をあてて? はてっ? ジプシ〜く〜ん 君はどこかわかるぅ〜?

 わたしは思い当たるところないんだけど」


「いっやぁ〜 自分も想像つきませんねぇ〜。

 だって自分なんて昨日の今日ですよ。みなさんと知り合えたの。

 なので皆さんの過去の関係性も知りませんし、

 わかる訳ないじゃないですかぁ〜」

(うしっ……これで乗り切れたはず。こよりさんもひどいなぁ〜。

 あれ絶対わかってて言ってるよなぁ〜)


「えぇ〜? ジプシ〜君もわかんないのぉ〜?しょうがないにゃぁ〜。

 この頭脳明晰なこよりさんにかかれば、QEDなんてすぐですよぉ〜」


「へぇ〜……そうなんだぁ〜。

 せっかくだし一応聞いてあげようかなぁ〜(#ω)」


「それはねぇ〜、かなたはアスリートでねぇ〜。

 船長はモデルさんってことだよぉ〜。理解できたかにゃ〜?」


「こよりぃっ〜(ノ`Д´)ノ彡┻━┻」


「ジプシ〜く〜ん、助けてぇ〜!わたし何も言ってなぃ〜!」


かなたがまだ怒りの余韻を引きずったまま、

主人公のほうへ向き直る。


「かなたさ〜ん、ちょっと聞きたいんですけど……

 あの青いのがそうなんですかぁ〜?」


「そうよ。サマーペアメイン。通称青りんごよ。それがどうかしたの?」


「いやぁ〜、うちの地元で“祝い”ってりんごがあって、

 それにあまりにも似てるので気になってました。

 まぁ今は作ってる人ほぼいなくて、

 希少品種っていうんですか? になってるって聞きました」


「祝いねぇ〜。こっちじゃ聞かない名前ねぇ〜。

 でもほんとにこの実と一緒なの?」


「多分、間違いないかと。

 地元の果樹園に友達がいて、やっぱり自分も小さい時遊びに行って……

 木から直接とって食べて、友達と一緒によく怒られてましたから(笑)

 記憶の片隅にある香りと近いんですよ」


こよりが、別の木を指さしながらふわっと笑う。


「あとねぇ、まだ時期じゃないんだけど……

 アップルパイにちょうどいいりんごもあるのよ。

 そのままでも食べれるんだけど、好きな人じゃないと酸味が強いから……

 みんなはアップルパイにしたりコンポートにして食べてるのよ」


「アップルパイですかぁ〜。美味しそうですねぇ〜。

 話し聞いてたら、さっきご飯食べたとこなのに……

 もうお腹がすいてきましたよ(笑)」


「ほらほら、この木よ。

 この木も立派でしょ〜。

 このりんごが McIntosh(マッキントッシュ) っていって、アップルパイで食べると……

 そのまま食べてた時の酸味が嘘のように、

 逆に甘さを引き締めてくれて美味しくなるのよ」


(んっ? 今なんか聞きなれた名前が出てきたぞ〜。

 まさかなぁ〜、そんなことあるわけないよな。

 まずは聞き間違いということにしておこう(笑))


「あとねぇ〜 アップルパイといえばもう1つおすすめの種類があるのよ

 ほらこの木よ この実も秋にならないと食べられないんだけど

 さっきの Mac (マック)よりは酸味が穏やかで美味しいのよ 生でも

 果汁が多くて美味しいの」


「へぇ〜色んな種類があるんですねぇ〜

 ここまでいっぺんにみた事はありませんでした でもこれだけそろってると

 まだ取る前なのに いろんな香りがまざって華やかですねぇ〜

 ちなみにそのもう1つの種類の名前はなんていうんですか?」


「あぁ〜 こっちの木になってるりんごの名前? Jonathan(ジョナサン) っていうの

 時期になると今はまだ淡い色だけど

 もの凄い真っ赤なルビーみたいな実がなるのよ」


(えっ どこかで聞いた名前 また出てきたぞ

 でもあの三鷹駅北口から歩いて10分位のあそこは

 人の名前が由来だったから違うよな?)


「あっ確かに言ってること分かります

 いつも友達の家でやっぱり出荷前に一つ一つ丁寧に磨いてるんですけど

 そうすると宝石とは言わないですけど光が反射して意外と綺麗なんですよね」


「もうそろそろ 時間も時間だし戻りましょうかぁ〜

 遅れると出荷もできなくなっちゃうし 私とかなたは野菜とか集めてくるから

 ジプシ〜君は青りんご両手いっぱい集めておいてね 旅の時の

 オヤツがなかったらさみしいでしょ」


「わかりました それ位でよければ 泊めていただいたのもありますし

 これ位じゃ恩返しになるかわかりませんけど できるだけ集めておきますね」


           ───立秋/臯月/先負/一白水星/卯の刻/晴光───


次回 果樹園の余韻が漂う帰り道 へ続く。



果樹園の奥で立ち止まると、

昔の香りがそっと息をしておる。


おっさんと皆が思い出す “幼き日の空気” は、

いまも変わらずそこにあって、

歩幅を静かに整えてくれるんじゃ。


第8話は、そんな朝の記憶が

ゆっくりとよみがえる一話になったのう。


……ほっほっ。

今日のマッキントッシュは、

三鷹のあの店の味──ジョナサンには敵わんが、

気持ちだけはちゃんと届いておるはずじゃよ。


ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。

どんな誘いになるのか、次の Causerie (物語)をお待ちいただければ幸いです。


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