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『厨二病が痛すぎて異世界出向。 〜 おっさんの Monologue《独白》 × Causerie《囁やき》 〜 』  作者: 放浪の狼


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朝の光、果樹園へ続く道 の巻


朝の空気がまだ冷たく、霧が薄く漂い、

朝露が草の先で光る中、影が細く伸びる時間です。

朝の食卓には、まだ眠気の残る声と、湯気の立つコーヒー。

主人公は、その柔らかい空気に背中を押されるように歩き出し、

こういう朝は、旅よりも生活の音が主役になります。

ゆったりとした生活の回。

みなさんもコーヒー片手に、おつき合いいただければ──。



「おはよう〜 ゆっくり休めたかい? 暑い中歩いてきたんだろ

何もなくて悪いけど朝ごはん出来てるから 顔洗って降りておいで」


「おはようございます えっそんな泊めていただいたのに

 朝ごはんまで甘えてしまっていいんでしょうか?」


「ジプシー君おはよう ゆっくり休めた? もぅお母さん

 姿見えないから探してたのよ」


「ご飯出来てるからかなたもみんなと食べてきなさいトマトにオクラ

 茄子に胡瓜 とうもろこし 今年も自慢の野菜が勢ぞろいよ

 朝どれの産みたて卵も召し上がれ」


「ご飯は足りたかい?おかわりいるなら遠慮なく言うんだよ

 見たところ食べ盛りみたいだしね そういや これからどうするんだい?」


「ジプシー君と一緒に周り見てこようかと 何か用事でもあるの?」


「特に用事はないんだけどね 朝の涼しいうちに野菜を取ってきてもらえたら

 ありがたいんだけどそうすれば市場に新鮮なの持ってけるからね」


「あぁ~ それならうちの果樹園も見せようと思ってたから行ってくるよ」


「果樹園ですか?いやぁ~楽しみですねぇ どんな果物があるんですか?」


「そこまで多くはないんだけどね 専門で作ってる訳じゃないから

 林檎 李 桃 柿 栗 とかかね〜

 あとは果物じゃないんだけど 梅をちょっとかね」


「今の時期なら青リンゴがちょうど時期かな?ちょっと酸味があるけど

 さっぱりして美味しいよ歯ごたえもいいしね」


「ふゎぁ〜……おそよぅ〜(笑)。みんな早いねぇ……何かあったの?」


「遅ようございます。マリンがお寝坊さんなだけよ。」


マリンがまだ半分寝てる声のまま、髪を指で整えながら、

テーブルの端にちょこんと座る。


かなたは、コーヒーを片手に横目で見てくる。


「マリンも、目覚まし代わりに飲むでしょ?……」


マリンはむにゃっと笑って肩をすくめる。


「だってぇ……朝の空気って気持ちよくて……

 つい、もう一回寝ちゃったんだもん……」


かなたの母親が、台所から顔だけ出して柔らかく笑う。


「いいのよ、マリンちゃん。みんなもう準備できてるから、

 あなたはゆっくり食べて行きなさい。」


主人公は、マリンの寝ぼけた声に少しだけ救われた気がして、

胸の奥の緊張がふっとほどける。


──* * *──

▶「……さて。

 主人公は、どうやら今日の空気が少し“軽い”ことに気づいたようですねぇ。

 旅というのは不思議なものでして……

 歩き出した時より、ほんの数分後のほうがずっと身体が前に進むんですよ。

 まぁ、本人は気づいてないんですけどねぇ。」

──* * *──


「マリンは食べたらもうちょっと寝てるでしょ?

 こっちはジプシー君に果樹園とか畑、案内しつつぐるっと一周回ってくるから。」


「起きてられるんだったら、案内した後に軽くちょっと休んで

 出発しようと思うから、その準備とかしててもらえたらありがたいんだけど。」


主人公はコーヒーの湯気を見ながら、マリンのほうへ視線を向ける。


「マリンさんは一緒に行かなくていいんですか?朝の果樹園とか

 気持ちいいと思うんですけど。」


マリンはスプーンを持ったまま、肩をゆるく揺らして笑う。


「わたしはいいわぁ〜。小さい頃からこよりやかなたと走り回ってたし、

 もう十分かな〜(笑)」


かなたの母親が、

台所から手を拭きながら声をかける。


「そしたら野菜とか収穫お願いね。その間に市場に持っていく

 準備はしておくから。」


かなたが主人公のほうへ向き直る。


「ジプシー君、準備はできた?できてるなら、まずは果樹園から見に行こうか。」


外の光はまだ低く、少し肌寒い。影は細く長いまま、霧は今にも消えそうに

淡く漂っている。朝露は重みに耐えている草の先で、落ちずに光っている。


かなたが肩に軽く手を置いてくる。


「じゃ〜ジプシー君、行こうか。マリンはゆっくり食べてて。

 もし食べ終わって時間あるなら、朝の内に出れるように準備だけ

 お願い出来る?」


マリンはパンをちぎりながら、まだ半分寝た声で返す。


「は〜い……準備くらいならできるよ〜……」


主人公は席を立ち、軽く頭を下げる。


「マリンさん、行ってきますね」


マリンは指先で髪を整えながら、ふわっと笑う。


「いってらっしゃ〜い。朝の果樹園、気持ちいいよ〜……

 ちょっとだけ肌寒いけどね〜……」


かなたの母親が台所から声をかける。


「三人とも、気をつけてね。朝露がまだ残ってるから、足元滑らないように。」


かなたが扉を開けると、冷たい空気がすっと流れ込んでくる。

霧は細く、影は長く、世界はまだ“朝の手前”に留まっている。


──* * *──

▶ 「……おや。

 主人公、外の空気の“変わり目”に気づいたようですねぇ。

 こういう場所は旅人にとって“ちょっとしたご褒美”なんですよ。

 土の匂い、朝の湿度、人の生活の音……

 えぇ、深呼吸したくなるんです。

 まぁ、本人は深呼吸したことに気づいてませんけどねぇ。」

──* * *──


主人公はその空気を胸いっぱいに吸い込む。


「じゃあ、まずは果樹園から見に行こうか」


かなたの声は、朝の静けさに溶けるように柔らかい。


「ちなみに今の時期だとどんな果物があるんですか?

 うちの地元でも、ちょっと早めのリンゴや桃、それにスモモだったかな?

 とかありましたけど」


こよりが歩きながら、軽く振り返る。


「この辺だと“青りんご”って呼ばれてる種類が、ちょうど今の時期に取れるよ〜」


かなたが「あっ」と指を立てる。


「こより、正式な名前なんだったっけ?今の時期の名前ついてたやつ。

 ほら、あれ。果樹園の娘なのにすぐ忘れちゃうんだぁ〜(笑)」


こよりは頬をふくらませて、少し考えてからぱっと表情を明るくする。


「名前? Summer Pearmain(サマー・ペアメイン) のこと?」


かなたが満足そうに頷く。


「そうそう、それそれ。ちょうど今の時期に取れるし、

 名前に“夏”って入ってるから覚えやすいんだよねぇ〜」


かなたは歩く速度を少しゆるめて、道の先を指さした。


「ほら、あそこの列。あれがサマー・ペアメインの木だよ。

 今ちょうど色づき始めてて、風に当たるとすごくいい匂いするんだよぉ〜」


──* * *──

▶「……さてさて。

 主人公は、果樹園へ向かう道の“空気の変わり目”に気づいたようですねぇ。

 こういう場所は、旅の途中でふっと肩の力が抜けるんですよ。

 えぇ、本人はただ歩いているだけなんですが……

 後ろから見ていると、その歩幅が少しだけ整うのが分かるんです。

 まぁ、気づいてないんですけどねぇ。」

──* * *──


こよりも視線を向けて、ふわっと笑う。


「ほんとだ〜。この時期のりんごって、見た目はまだ青いのに、

 近づくとちゃんと“りんごの匂い”するんだよねぇ〜」


主人公はその匂いに気づいて、思わず深く息を吸い込む。


「……あ、ほんとだ。なんか、爽やかで……ちょっと甘い匂いしますね」


かなたが嬉しそうに頷く。


「でしょ〜?もし食べ頃のがあれば、ちょっとだけ味見してみよ。

 酸味がキュッとしてて、最後にふわっと甘みが来るんだよぉ〜」


こよりが笑いながら肩をすくめる。


「かなたの家のりんご、毎年ちょっと味違うんだよね〜。

 今年はどんな感じかなぁ〜」


かなたは軽く胸を張る。


「今年はねぇ〜、雨のタイミングがちょうどよかったから、

 たぶん当たり年だと思うよぉ〜」


三人はそのまま、果樹園の入り口へと足を進めていった。


           ───立秋/臯月/先負/一白水星/卯の刻/晴光───


次回 果樹園の奥で、よみがえる幼き日の香り  へ続く。



朝の果樹園は、ただ歩くだけなのに

どうしてこんなに気持ちが整うんでしょうね。

主人公は気づいていませんが、

今日の一歩はいつもより少しだけ軽かったはずです。


生活の音に背中を押されて、

旅の気配がゆっくり混ざっていく──

第8話はそんな “朝の散歩” の一話でした。


次は、果樹園の奥で

どんな匂いが主人公を迎えるのか。

ゆっくりと続きますので、

またおつき合いいただければ。


ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。

どんな誘いになるのか、次の Causerie (物語)をお待ちいただければ幸いです。


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