老いぼれが語る?! 誘惑に弱いおっさんの正体は優良物件?
今回のお話は、昨日の“屋台試食(暴食)事件”の余韻からスタートします。
誘惑に弱いおっさん──ジプシ〜が、
屋台の人たちの“これも食べてみて〜”攻撃に完全敗北したあの場面。
その流れから、今日は 自称:老いぼれ(凄腕)がぽつりと語り始めます。
ジプシ〜の正体はほんとうに“優良物件”なのか?
それともただの食べすぎおっさんなのか?
読んでいくうちに、
コメディの裏側で“精霊の気まぐれ”が静かに顔を出します。
今回もゆるくて、ちょっと深くて、
そしていつものように、少しだけ未来につながるお話です。
ーーーーー 冒頭は 前回の終わり わたころ劇場からのスタートです ーーーーー
「いやいやいや……あれは試食って言われたら食べるしかないだろぉ〜?
あの屋台の人たち、“はいこれも食べてみて〜”“これもいっとく?”
“これサービスね〜”って、止める隙がなかったんだよぉ〜。」
「ジプシ〜。それを世間では “誘惑にものすご〜く弱いおっさん” って言うのよ?」
「ちょっ……言い方ぁ〜……(笑)」
「ころねも見てたよぉ〜。ジプシ〜、あの時ずっと “うまっ……うまっ……” って言いながら
食べてたよぉ〜。あれ試食じゃなくて、もう本気の食事だったよぉ〜。」
「わためも見てたぁ〜。あの揚げ物の屋台で、“これ、魚の方ね〜”“これイモの方ね〜”
って説明されるたびに、ジプシ〜の手が勝手に伸びてたよぉ〜。」
「いや、勝手には伸びてないだろぉ〜!?俺の意思だよぉ〜!?
……いや、意思が弱かっただけかもしれないけど……」
「ほらねぇ〜。自覚あるじゃないかぁ〜。」
「でもでもでもっ。あれは昨日の話だろ?今日はちゃんと歩くんだし、
丘まで行くんだし、その分で消費するから問題ないって!」
「ジプシ〜。昨日のあなたの食べた量は、“歩いて消費できるレベル” を超えてるのよ?」
「そんなにかぁ〜!?俺そんなに食べたかぁ〜!?」
「食べたよぉ〜。ころね、数えてたもん。」
「わためも数えてたぁ〜。」
「なんで数えてたんだよぉ〜!?怖いよぉ〜その監視体制っ!」
「だってジプシ〜、屋台の人に “これも食べてみて〜” って言われたら 断れないタイプでしょ〜?」
「ぐっ……否定できない……」
「だから今日の残念なお知らせは──ジプシ〜、あなたは今日のお昼ご飯、
“昨日の残りの屋台セット” からスタートですっ。」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
俺だけ!?俺だけ昨日の続きぃ〜!?みんなは新しいの食べるのに!?
俺だけ昨日の続きぃ〜!?(泣)」
「だってジプシ〜、昨日のあなたの食べた量は、“今日の分まで前借りしてる” レベルなんだもん。」
「ころねも言ってたよぉ〜。“ジプシ〜、これ絶対明日まで残るよぉ〜” って。」
「わためも言ってたぁ〜。“ジプシ〜、これ明日も食べるやつだよぉ〜” って。」
「なんでそんな未来予知みたいなこと言ってたんだよぉ〜!?
俺そんなに食べてたのかぁ〜!?そんなにかぁ〜!?そんなに食べてたのかぁ〜!?
(まだ現実を認められないのか二度もおなじ事を)」
「食べてたのよぉ〜(笑)」
「食べてたぁ〜(笑)」
「うぅぅぅぅぅぅぅ…… 俺の胃袋、昨日の俺に裏切られたぁ〜……」
「でもねぇ〜、ジプシ〜の食べ方は見ててうらやましぃんだよねぇ〜。
ほんと美味しそうになんでも食べるからねぇ〜。」
「だよねぇ〜。
あのおばぁちゃんが、ひさびさに張りきってご飯作るとこ見れたもんねぇ〜。
よほど、あんなに食べてもらえるのがうれしかったんだろ〜ねぇ〜。」
「しかたないだろぉ〜……そりゃ〜俺もおっさんさぁ〜、間違いないっ。
そこは認める、認めるけども──あの料理はなんだっ? あの味はっ?
今までいろんな物、食べてきたさぁ〜。この年まで生きてると、そりゃ〜それなりに経験はあるよ。
でもなぁ……違ったんだよ。何もかもがなっ。
あんなに夢中になったの、子供の時でもなかったかもしれないくらいに……
ほんとっ、あれは美味かったぁ〜……。また絶対というか……
“死ぬ前に何食べたい?”って聞かれたら、俺はあの味を絶対に食べたいな。
それくらい美味かったっ。」
「なにをそんなに熱く語っちゃってるのよぉ〜。
そりゃ〜家族としては気に入ってもらえたのはうれしいけど……
そんなに〜?そこまでの味だったの?」
「うん、間違いないっ。この旅がどれくらい続くかわからんが──
終わり次第、おばぁちゃんの養子になってもいいくらいの衝撃を受けたっ。
ほんとにな……もっと若い時におばぁちゃんと出会ってたら、
“おじぃちゃんも大変だったのよ〜” って聞いてたけど、絶対にあれは逃げられない。
というか、逃げるなんて考えられない。あれは……ほんとに美味かったなぁ……。」
「そこまでなのねぇ〜、ころねぇ〜。“お料理で男の人を逃がさないように出来る” って
みんな言うじゃない?今まで信じてなかったけど……ほんとみたいだねぇ〜。」
「だねぇ〜。ここまで熱く語られると、信じるしかないみたいねぇ〜。
なら──わたし達も未来の旦那様つかまえるためにもっとお料理がんばりますかぁ〜(笑)」
「あんたらはもうそんなに気張んなくても だいじょぶだよぉ〜
もう優良物件つかまえてるんだから あとは おたがいをよく知ることだけだよ」
「えぇ〜 それほんとですかぁ〜?
なんか信じられないんですけどぉ〜(笑)
まだ何日間しか一緒にいないですけど その間の姿見てると
とても優良物件とは(笑)」
「まぁ この老いぼれにだまされたと思って様子見てなっ(笑)
あとからいろいろ得するからさ
まだあいつは隠してるよ それを見せてないだけだよ
どんな風に化けるか楽しみにしておくんだね(笑)」
「いろいろに 隠し事ですかぁ〜?
そこまで人生の先輩がいうんであれば もうちょっと待ってみます」
「それに化けると……
ちなみにそれは 大きくですか? それともちょっとだけ?」
「それを今いっちゃったら つまらないじゃないかぁ〜
答え合わせは ずっとあとの方が たのしみに変わるだろ!?」
「えぇ〜 でもなんか不安じゃないですかぁ〜
あんまりわからなさすぎるのも……
少し位は匂わせとか ないんですかねぇ〜?」
「匂わせねぇ〜……
ん〜 ならあたるかどうかわかんないよ
それでもよければ この老いぼれが感じた
ちょっとした片鱗は聞かせてやるけど どうだいっ?」
「「はいっ それでお願いします」」
「まず あんた達がどこまで足を伸ばすかわからんが……
あいつは何かしら“先のことまで知ってる”気がするんだよ」
「「先のことまでですか?」」
「あとあいつと一緒にいれば
何かしらいろいろ巻き込まれる事もあるだろうけど……
巻き込まれるだけで終わり
今までちょっとしかいなかったっていってたけど
なんかそんな事はなかったかい?」
「「あっ そういわれれば 思いあたることが」」
「それはなんだい?
聞いてあげるから 話してごらんよ」
「あのですね……
この街についた直後に お祭りの最中で仮装の行列が出てたんですけど
そこでスリのさわぎがあって
ジプシ〜がお金を取り戻してたんですよ
本人は何もやってないっていってたんですけど
知らないあいだにお金が落ちてただけだって
それがきっかけで宿のご家族と知り合えたんですけどね」
「多分 間違いないね……
今の話しだと 運命なのかわかんないけど
いろいろと好かれてるようだねぇ〜
確かに本人は意識してないだろうねぇ〜(笑)」
「それはどういう事ですか?
好かれているっていうのは?」
「あんた達も聞いたことはあるだろ?
龍や精霊の伝承は……
今回はその精霊が なぜかはわからないけど
あの あんた達といる奴を気に入って
どうやらおせっかいを焼いたようだねぇ〜(笑)」
───立秋/望月/仏滅/一白水星/辰の刻/晴光───
次回 小さな予感と 再びの旅立ち へ続く
今回の 自称:老いぼれ(凄腕)の言葉は、
ただの冗談みたいでいて、じつは少しだけ本気です。
ジプシ〜が“優良物件”かどうかは、
まだ誰にもわかりません。
でも、あの街で起きたスリ騒ぎや、
宿の家族との縁のつながり方を見ると──
どうやら精霊がちょっとだけおせっかいを焼いているようです。
誘惑に弱いおっさんが、
どんなふうに化けるのか。
それはまだ先のお楽しみ。
33話は、32話の続きとして自然に広がった回でした。
次回もゆるく、そして少しだけ深く、
物語は続いていきます。
ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。
どんな誘いになるのか、次の Causerie(物語)をお待ちいただければ幸いです。




