丘へ向かう前の大騒ぎ おっさんに迫る中年太り
今回の物語は、旅に出る前の“生活コメディのピーク”が訪れる回です。
ころねとわための双丘トーク、おねぇ様方のハリケーン、
そしてジプシ〜に忍び寄る“試食という名の完食”の影──。
丘へ向かう前の、にぎやかで、ちょっとだけ危険な大騒ぎが描かれます。
旅の導線は静かに整いながら、
おっさんの胃袋だけが確実に追い詰められていく、そんな一幕です。
「おまたせしましたぁ〜。どうされました?
みなさん、そんな顔して……なにか自分の顔に付いてますか?」
「こんなんですよぉ〜。
なにか見間違えたとか思い違いじゃないんですかぁ〜?
どこにでもいる普通のおっさんだと思うですけど?」
「今はね。
でも、そのうち“いっしょに旅しててよかった”って思う日が必ず来るから。
その日を楽しみに待ってればいいさ。」
「そうなんですかねぇ〜?
なんかピンとこないというか……普段の姿しか知らないし、
知り合って時間もまだそこまで経ってないので……
そういわれても不思議な感じしかしないんですよねぇ〜。」
「まぁ最初はそんなもんだろ〜ねぇ〜。
でもね、そのあんたのおばぁちゃんが“最初っから話した”って言ってたねぇ〜?」
「えぇ〜、めずらしく。
普通なら人見知りというか、じっと観察してなかなかしゃべらないんですよ。
でもジプシ〜には飲み物すすめるわ、いろいろ話しかけるわ……
初めて見る光景にこっちが驚きすぎて、
目の前で何が起きてるのか理解するのに時間かかりましたよ(笑)」
「だろうねぇ〜。
いろいろ旅してるうちにね、嫌でも“勘”ていうもんは鋭くなって、
察するのが早くなるんだよ。
そのおばぁちゃんが信用してるんだから、
あんた達ももうちょっと信用しておやりよ。」
「そうはいわれましてもねぇ〜……
あの街なか歩いたり、何かある度に女の子にしか視線がいかないんですよ。
そういうの脇で見てると……」
「ひっどいなぁ〜(笑)
俺も旅なんてなれてないから、どうしても警戒心が先に立って、
何か周りを見ちゃうだけなんだけどなぁ〜。」
「へぇ〜、警戒しちゃうと?
わための双丘、わたしの双丘、こうごに見て、
おまけに好みの女の人が横を通ると、
その人が通り過ぎるまで双丘から視線を外さないのも警戒してるからなのねぇ〜?
へぇ〜。」
「そんな事ないぞぉ〜。それは誤解だってぇ〜。
2人くらい、かわいくて、きれいで、美人を連れている俺を見ている視線に気づいているかぁ〜?
あの、すぐにでも飛びかかってきそうな勢いの視線を見たら、
どんな事がいつ起きてもいいように警戒してるに決まってるだろぉ〜。」
「わためぇ〜聞いたぁ〜?
かわいくて、きれいで、美人だってぇ〜。
もぉ〜そんな事いわれたらねぇ〜 (*ノェノ)キャー」
(ふぅ〜……まずは第1弾のあらしは回避したようだな。
つぎは、その後ろに控えるあらしよりも恐ろしく、
回避できるのかわからないハリケ〜ンに挑むとしますかぁ〜)
「へぇ〜、いろいろ言ってる割に仲良くやってるじゃないかぁ〜(笑)
わたし達もそこにもちろんまぜてくれるわよねぇ〜? ( ̄ー ̄)ニヤリ」
「もちろんじゃないですかぁ〜。
そんなおねぇ様方を外すなんて、そんな事ある訳ないじゃないですか
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
「わため、あれ絶対おっさん日和ったよねぇ〜?
わかりやすいくらい日和ってるよねぇ〜?」
「うん、ころね。あれは間違いないわねっ。
でも、あんなにわかりやすくなるんだねぇ〜。
わたしは初めて見るかも。
勉強になるねぇ〜。人って、あぁ〜なるんだねぇ〜。」
(これは上司にいろいろ言われてる時よりきっついぞぉ〜……
なんとかこの状況、脱出・回避しなければ……)
「んっ?どうしたんだい?
そんなに目を泳がせて。
そっかぁ〜、こんなにいっぱいおねぇさんがいると
誰とお話していいか迷ってるんだねっ。
かわいいじゃないかぁ〜。」
「そんな迷ってるだなんてぇ〜、
そんな失礼なこと思いませんよぉ〜。
迷うって事は、みなさんに順番をつけるっていうことですから、
そんな失礼なこと出来るわけないじゃないですかぁ〜。(`・ω・´)シャキーン」
(なんとかこれでスーパーセルも回避できるといいんだがっ……
みんな頼む……おらに力を分けてくれぇ〜……)
「そんな順番つけられないなんて、
ずいぶんといじらしい事いうじゃないかぁ〜。
ほんとかわいいねぇ〜。」
「でっ、そんな冗談はさておき──
もうそろそろ行くんだろ?
まずはどっち方向に向かう予定なんだい?」
「まずは北に向かおうと思ってます。
ここからちょっと行った先に、歌にも出てきた丘っていうのがあると聞いたので、
そこに行ってみようと思います。」
「おぉ〜、あそこかい。
あそこなら今の時期は天気がよければ最高だよ。
丘のいちばん上だからね、風の通りもいいし、
気持ちよくお昼ご飯を食べられると思うよ。
お昼ご飯とかはちゃんと持ってくんだよ?」
「ありがとうございます。
きのう屋台で買った、この町の名物の魚とイモの揚げ物を、
屋台ごとにちょっとずつ買ってみて、
食べくらべしようかって話してたんですよ。」
「おぉ〜、それはまた奮発したねぇ〜。
屋台いっぱいあったから、ずいぶん迷ったんじゃないかい?
それにそれだけ買ったら、食べきる前に傷んじゃわないかい?」
「それはだいじょぶだと思うんですよ。
3人ともマジックバッグ持ってるので、
みんなで屋台ごとに分かれて持ってるんです。
“今日は誰の番〜?”って感じで、
食べくらべしながら行こうか〜って話してて。
歩きながらちょっとお腹すいたら、つまんだり出来るかな〜って考えながら、
きのうは屋台周ってました(笑)」
「やっぱりそこは女の子だねぇ〜(笑)
色気より食い気がまだまだ勝つ年頃かい(笑)
まぁ何にせよ、食べたいものが食べたい時に食べられることに感謝するんだねぇ〜。」
「ですねぇ〜。
食べたいものが目の前にあっても、
買えなかったら食べられないですもんねぇ〜。」
「まだまだ若いねぇ〜。
そんなんだったらまだいいさ。
生きてりゃそのうち食べられるんだからねぇ〜。
それよりきついのは病気になったときだよ。
治るまで食べられないならまだ我慢できるだろ〜?
それが “ずっと食べられない” と考えてごらんよ。
我慢できるかいっ?」
「そんなん無理ですぅ〜(泣)
考えただけで涙が出てくる……
おばぁちゃんが作ってくれるあのお料理が食べられないなんて、
わため想像できるぅ〜?」
「ころねぇ〜無理だよぉ〜。
あの熱々にとかした魅惑のトロトロをつけて食べられなくなるんだよぉ〜。
むりっむりむりっ……考えたくもないよぉ〜。」
「でも──その前にころね。残念なお知らせがありますっ。
それもただの残念じゃありません。ものすごく残念なお知らせです。」
「わため、その残念なお知らせってなぁ〜に?
わためもいっしょ〜?それとも、わたしだけぇ〜?」
「ころねだけじゃないよぉ〜。わたしも。
そして──いちばんは ジプシ〜、あなたよっ。」
「いきなり何だよぉ〜。おどろくじゃないかぁ〜(笑)
そんな、いきなり劇がはじまったみたいに言われたら、
俺もそんな風に返したほうがいいのか?」
「そんな余裕は今のうちよ。昨日のことを思い出してごらんなさい。
あなたは──何件の屋台で “試食という名の完食” を繰り返したのかしら?
それでも、その余裕は続けられるのかしら?」
───立秋/望月/仏滅/一白水星/辰の刻/晴光───
次回 老いぼれが語る?! 誘惑に弱いおっさんの正体は優良物件? へ続く
丘へ向かう前の大騒ぎは、ただの騒動ではなく、
三人旅の“最初の思い出”としてしっかり積み上がりました。
その裏で、昨日の屋台の余韻──
つまり“忍び寄る中年太り”が静かに牙をむきはじめ、
ジプシ〜の未来に確かな影を落としています。
次回はいよいよ、歌にも出てきた丘へ向かう道中。
旅の空気が本格的に動き出します。
ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。
どんな誘いになるのか、次の Causerie (物語)をお待ちいただければ幸いです。




